第22話「ショーツとスーツ」
いよいよ荷造り開始。
いざ麗奈のマンションに入ろうか、という時。
イヴが口を開いた。
「すみませんアオイ、レイナ。少し外します。
荷物を運び出すまでには戻りますので、
先に荷造りをしておいてください」
そう言い残すと、イヴはどこかへ消えていった。
いったいどうしたんだろう。何か真剣な表情だったが。
「まあ、荷造りは別に2人でも困んないよな。やっとくか」
「うん。そもそも1人でやるつもりだったし、ウチ狭いし」
俺は麗奈と共に麗奈の部屋に入り、
家から持ってきたダンボールを組み立てていく。
「じゃあ、部屋にある荷物を片っ端から詰めていけばいいんだな?」
「うん。食器類だけワレモノだから注意って感じ?
そっちは私がやるね」
「わかった」
麗奈がキッチン周りをやるというので、
俺はクローゼットの中身をダンボールに詰めていくことにした。
上着は割とかさばるが、上着さえクリアしてしまえば
後はなんとかなりそうだ。なるべく綺麗に敷き詰めて、
ダンボールの空きスペースを無駄にしないようにする。
着々と詰め込んでいき、クローゼットの中で
残っているのはタンスの中身だけ。
家具は売り払うって話だったから、
タンスの中身も全部出せってことだよな。
とりあえず、一番上の段を引き出してみようか。
ガラッ。
フリフリがついて、所々スケスケな、
オトナな下着がいくつも顔を出した。
しまった。こういう可能性を全然考慮していなかった。
正直なところ、女物の下着は普段の洗濯で見慣れているのだが、
このデザインは流石に不意打ちすぎる。
麗奈、普段こんなの付けてるのか…
学園一のギャルは伊達ではないということなんだろう(てきとう)。
こんな所を麗奈に見られたら終わる。
この事実は俺の心の中に閉まっておこう。
そして引き出しも閉まっておこう…と引き出しを閉めた瞬間。
後ろから肩を叩かれる。
麗奈が笑顔で立っていた。
終わった。
「いやいやいや悪気は無かったんだ!
タンスの中身もダンボールに詰めた方が良いと思ってだな」
「女の子のタンス開けるとき、
ちょっとは確認とか取らないワケ…?」
「それは本当にゴメン!栞で慣れちゃってて…」
「アンタ、栞ちゃんのタンスは勝手に開けてるんだ?」
自爆。
このままではデリカシーなさすぎおじさんノミネート待ったなしだ。
「というか麗奈、お前トップオブギャルだからってこんな」
「違っ、これはアンタの家に泊まるようになったからで…もうバカ!」
「いつもウチにこんなの着て来てたのか…?」
「デリカシーなさすぎ!いいから他のとこやって!!」
デリカシーなさすぎおじさんにノミネートされてしまったようだ。
怒られたので、おとなしくタンス以外を片付けることにする。
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一方その頃。
イヴはマンションの駐車場側に回り込んでいた。
駐車場に停まっていた1台の黒い高級車にスタスタ歩み寄り、
運転席の真横を位置取ると、窓ガラスをノック。
窓ガラスが開き、スーツを着た男が顔を出した。
「お嬢さん、何か御用で?」
「あなた、九条院家のものですね」
「九条院?なんのことでしょう」
「とぼけても無駄ですよ。車とスーツが九条院グループのものですし、
あなたが九条院家のSPの1人であることは過去の映像を見て覚えています。
今すぐここから立ち去るなら見逃しますが、どうしますか?」
「なっ…お前は何者だ」
イヴの予想外の言動に、思わず動揺するスーツの男。
「大した武器は身につけていないようですね…
そしてあと2人、近くにお仲間がいるご様子。
まとめてお相手しましょうか?
ちょうど日本で腕試しをしたいと思っていたので」
笑顔のイヴには、形容しがたい迫力があった。
これはハッタリではない。この女、間違いなく「強い」。
「争う意思はない。今日のところは退散させていただこう」
「あら?そうですか。残念です。あなた達の雇い主にも、
近々ご挨拶させていただかなければなりませんね」
運転席に居た男は、無線で他の2人を呼び寄せ、車に乗り込ませた。
そして車は、あっけなく退散していった。
「九条院に警戒しろというコハルの警告は正しかった…
彼ら、私たちが神城家を出た時点から尾行していましたね」
(日本に来る前に、九条院家のリサーチは
徹底的に済ませてありました。
ですが、こんなすぐに役立つことになるとは...
私を神城家に住まわせるというコハルの判断は、
やはり正しかったと言わざるを得ません)
「アオイとレイナの日常を奪わせはしません。
そのために私がいるのですから」
イヴは決意を新たに、麗奈の部屋へと向かうのだった。




