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第19話「住み込みギャル」

橘さんは、俺のボディガードらしい。

流石に予想できなかった。


「そんな大袈裟な」

「確かに、九条院グループがあなたの能力に気付いても、

危害は加えないでしょう。重要なサンプルだからね。

だけど、懐柔したり実験体にしたりする可能性は十分あるわ」

「あー…」


今思えば、屋敷に招待されたのも

懐柔の一環だった可能性があるし、

睡眠時の脳波データも計測されてしまった(削除したけど)。

橘さんがいれば、もう少しうまくできたのかも。


「だから、ね。常に一緒にいなくてもいいわ、

危険を感じたら同行してもらいなさい」

「...話はわかった。けど、なんでこんな

可愛らしい女の子が担当なんだ?」

「なによ、ガチムチのおっさんの方が良かったの?」

「それはない」


今日からガチムチのおっさんが同棲しますと言われていたら、

流石に発狂していた。女の子なら女の子で、緊張はするけど。


「人を見た目で判断しないことね、蒼。

イヴの強さは相当なものよ」

「そうなのか...?」


こんな可愛らしいお人形さんが、強いっていうのか…?

どれだけじっくり見ても、イマイチピンと来ない。


「その、アオイ…流石にそんなに見つめられると照れます」


感情が無いかに思われた橘さんだが、やや赤面していた。


「ごめん橘さん…!ジロジロ見ちゃって」

「イヴと呼んでください。私もアオイと呼びますから。

橘という名も、とても気に入っているのですが」


アメリカンスタイル。ではそうしよう。


「じゃあイヴ。ボディガードを

お願いしようとは思うけど...いいのか?

アメリカでの生活とか色々あるだろうに」

「母のいない私にとって、コハルは母にも等しい存在です。

そのコハルの頼みなのですから、断ることはあり得ません。

それに元々、ドクターやコハルの育った

日本で暮らしてみたかったので」


栞が、少し複雑そうな表情をしていた。


「ならいいんだけど。せめて観光案内くらいはするよ」

「ありがとうございます、アオイ」

「さて、それじゃあ本題に戻るけど」


母さんが仕切り直した。


「いい?まず、アウトソムニアを無闇に使わないこと。

バレるリスクが増えるから」

「ああ」

「あと...日本で生きている限り、九条院グループとの

関わりを断つことは難しいと思うけど、

九条院の人間からの接触には十分警戒しなさい」


警戒、か。九条院のヤツ、俺を捕まえて

研究所に放り込むことが目的なんだろうか?

そうは思えなかった。それに、どうにも放っておけないんだよな。

全てを手にしているようで、その実何も手にしていないような。

そんな印象を受けたから。


「どうしたの?蒼」

「いや、なんでもないよ。気を付ける」

「ならいいわ」


「あの...小春さん」


麗奈が、遠慮がちに口を挟んだ。


「私、聞いちゃって良かったんですか?こんな大事な話」

「ええ。だって蒼の能力を知っているんでしょう?

それに、知っている以上、あなたも九条院グループに

狙われる可能性はあるから。ごめんね、巻き込んでしまって」


鋭いな母さん。案の定、麗奈も疑われてるよ。


「あなたにもボディガードを付けてあげたいくらいだけど...

ご両親と暮らしているの?」

「いえ、一人暮らしです」

「一人暮らしなの!?なおさら心配じゃない……

そうだ!あなたもここに住んだら?」



「「「ええーーーー!?」」」



俺、栞、麗奈の絶叫がこだました。

イヴはすまし顔で俺たちを見つめていた。



////



「麗奈をウチに住まわせるのか!?」

「そうすれば、まとめてイヴに守ってもらえるでしょ」

「コハルがそう望むなら」


イヴは、まったく問題なしといった態度だ。


「いやいや!麗奈だってそんなの急に言われても困るよな!?」

「えっと…」

「何言ってんのよ。アンタ、麗奈なんて下の名前で呼んじゃって〜。

ウチに遊びに来たのだって一度や二度じゃないんでしょ?

能力を知ってるってことは、同じ部屋で寝てたりするんでしょうし〜?」

「う…」


麗奈の顔は真っ赤だ。


「で、どうする?麗奈ちゃん」

「住んでいいんだったら…すごい助かるんですけど…」

「じゃあ住んじゃいなさい!ご家族には連絡しておくから」

「ありがとうございます。家族には、私から連絡しておきます。

お金は、月においくら支払えば良いでしょうか」

「そんなのいらないわよ!家事も蒼に全部やらせておけばいいわ」


なんでだよ。

でも、これで麗奈は家賃の支払いから解放される。

女子高生らしい生活を送れるのなら、その方がいい。


「麗奈さんウチに住むんですか!

正直ずっとそうなったらいいなって思ってました」

「改めてよろしくね、栞ちゃん」

「はい〜!」


相変わらず仲良しだね、君たち。


「たくさん話して疲れたし、そろそろ晩御飯にしましょうか。

長旅で疲れたし、今夜はお寿司でも取ろっか」



そういえば今日、昼食も食べていなかったこともあり、

俺も栞も麗奈も、お寿司をたらふく食べたのだった。


イヴはイヴで、はじめて日本で食べるお寿司に

エキサイトしているようだった。表情の変化がわかりにくいだけで、

やっぱり感情はちゃんとあるみたいだ。

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