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第18話「ブロンド美少女と風神雷神」

神城 小春。俺と栞の母だ。

三者面談のため、アメリカから帰ってきてくれた模様。

でも予定日より早い。完全に予想外だった。

とんでもないタイミングだが、むしろ助かったかも。



でもなんか、後(・)ろ(・)に(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)外(・)国(・)人(・)の(・)女(・)の(・)子(・)を(・)連(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。誰??



「おかえり母さん。その子は誰…?」

「ただいま蒼。そのギャルは誰…?」


拮抗した。拮抗マン(は?)。

先手を取って主導権を握ろう。


「こちらは桐谷麗奈。俺のクラスメイト。

栞とも仲良くて、ちょくちょくウチに遊びに来るんだ」

「…どうも。桐谷です。お邪魔してます」

「あらそうなの!私は蒼と栞の母の小春。よろしくね。

ウチの子たちと仲良くしてくれてありがとう」


順調だ。問題ない。


「でママ、うしろの子はどちら様…?」


俺が聞くより前に、栞が聞いた。


プラチナブロンドの美しい髪。透き通った碧眼。

身長は小柄で、栞と同じくらいだろうか。

慣れない環境にも関わらず、顔色ひとつ変えていない。

まるでお人形さんみたいだ。


「この子は橘(たちばな)イヴ。私が研究所で

お世話になってるドクターの娘さんなの」

「橘イヴです。よろしくお願いします」

「日本語ペラペラなんだな…よろしく」


落ち着いているというか、淡々としているというか。

クールが服着て歩いてるみたいな感じだ。

今歩いてないけど。


「で、なんで橘さんを連れてきたんだ…?」

「その説明は、少し長くなるわね。アンタの能力が関係してるから」

「なっ…」


母さん、俺の能力のこと知ってたのか。

母さんは家を空けがちだったし、母さんの夢に侵入したからといって、

特別なことは何もしなかったから、知られていないものだと思っていた。


「そちらの麗奈さん?に話聞かれちゃっても平気?」

「別にいいよ。麗奈は俺の能力のこと、知ってるから」


麗奈はどう反応していいかわからないといった様子で、軽く会釈した。

母さんは麗奈に笑いかけたあと、俺の方に向き直った。



「アンタもしかして、女の子の夢に

ポンポンと入ってるんじゃないでしょうね?」


汗。


「夢の中で女の子にちょっかい出して、

次々と困らせてるんじゃないでしょうね?」


滝汗。


「発動条件を口実にして、女の子と一緒に

寝たりしてるんじゃないでしょうね?」


太平洋。



状況、悪化してるじゃないか。


「い、いや!俺はただ人助けをしていただけで——」

「蒼、正座」

「はい」


栞と麗奈が、うんうんと深く頷いていた。

橘さんは顔色ひとつ変えていなかったが…

このままでは第一印象が最悪すぎる。



////



母さんの説教、ようやく終了。

耐えた俺の精神は屈強(反省の色が見られないラップ)。


「まったく…私が家に居ないからって

好き放題して…血は争えないのね」

「え?」

「こっちの話。本題に入るわ」


母さんの表情が、真剣なものに変わる。


「蒼、あなたの”他人の夢に侵入できる能力”は、ア(・)ウ(・)ト(・)ソ(・)ム(・)ニ(・)ア(・)

と呼ばれるものなの」


この能力、名前とかあったのか。

確かインソムニアが不眠症という意味だったと思うが、

俺は自分の外で不眠症ということだろうか。


「近くで寝ている人間の夢に入り込んで、

記憶・経験を現実に持ち帰ることができる。

夢の中で夢の主(あるじ)に干渉した場合には、

その人間にも持ち帰らせることができるわ」


俺の認識の通りだ。

これによって栞にバドミントンを教えたり、

麗奈に勉強を教えたり、九条院にゲームを

教えてたりできたのだ。


「アウトソムニアを持つ人間は、世界中でもごくわずかしかいない。

ただ、今後の研究次第では悪用される危険もあるから、

私はアメリカの研究所で極秘に

アウトソムニアの研究をし続けているわ」


そうだったのか。全く知らなかった。

母さんが家を空けがちだったのも、渡米したのも、

アウトソムニアのせいだったっていうのか…?


「だけど、極秘の研究内容の一部を、こっそり持ち出したヤツがいる。

そしてその情報は、九条院グループに高額で売り渡された可能性が高い」

「なっ…」

「アナタ、前に電話でアニムスの入浴剤の話をしていたでしょう?

あの入浴剤には、アウトソムニアの体感時間を

引き延ばすための成分が配合されているのよ」


そういうことだったのか。

どうりで夢が全然終わらなかったワケだ。


「その成分はすでに私の研究所で発見済のものだし、危険性はない。

だけど…これをビジネスにしようとしているんだったら、

黙って見過ごせないのよね」

「アウトソムニア持ちのための入浴剤を作ったって、

それ自体では儲からないよな?」


世界中にごくわずかしか居ないんだったら、ビジネスとして成立しない。


「その通りよ。きっとあの入浴剤は布石に過ぎない。

アウトソムニア持ちを炙り出すためのものなんだと思うわ。

あなた、九条院グループの人間に接触されなかった?」


やっべ。昨日九条院グループのご令嬢の家に泊まり、

お嬢様の夢に侵入してしまいました。

ギリギリ証拠は残さなかったものの、めっちゃ疑われてます。


「…その顔、もう接触された後なのね」

「なんでわかるんだよ」

「蒼、わかりやすいのよ」


また栞と麗奈がうんうん頷いている。お前ら覚えてろよ。


「…だけど、まだ能力はバレてないと思う」

「まあ、ギリギリ間に合ったと考えることにしましょう。

私がイヴを連れてきたのはそのため」

「どういうことだ?」



「いざという時の、ボディガードってところかしら」



橘イヴは、母さんの横で目を瞑って頷いた。

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