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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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第97話 ルミシルヴァの疑惑4

 交易の日となりいつもの場所へ来てみたが、エルヴァリエルの交易担当者の姿がなかった。しばらく待ってみるが来る気配がない。日を間違えただろうか。


 ただ、森の外側から光がちらちらと見えている。そのまま光の方へ歩くと、結界越しにいつもの交易担当者が見えた。しかしこちらの姿は見えていないらしい。不安そうに周りを見回している。


「……結界か」


 そのまま歩いて結界の外に出る。人から見たら急に現れたように見えたのだろう。とても驚いていた。


「よかった。反応がないので今回は交易がないのかと思いました」


「すまない。エルヴァリエル側で少し手違いがあったようでな……」


 結界を消す仕組みがどこかにあるはずなのだが、勝手に触って違う場所まで消すわけにはいかないからな。

 だが、エルヴァリエルの担当者が来ないのであればインゴットの数を減らす口実にもなるか。


「いつもの方はいらっしゃらないのですか?」


「そのようだな。急ぎのものがあったか?」


「いえ、いつも通りの交換の予定でしたから、こちらは問題ないです。取引量が減ってしまうのは残念ですが……」


 残念そうに笑いながら、以前要望した部族の交換品を並べていく。こちらも交易に出す工芸品や彫刻を出していく。

 作ったリストを見ながらどれと交換するか考えながら選ぶ。


「はい。確認しました。選んでいただいた品も工芸品と同等なので、こちらで取引成立とさせていただいてよろしいでしょうか?」


「ああ」


 交換した品をマジックバッグにしまいながら、どこまで話すべきか思案する。


「……少々、森で大きな問題が起きていてな。その関係で交易担当も来ていなかったのだと思うが……」


 インゴットを二本手元に残し、四本だけ差し出す。


「こちらも少なく、これだけしか用意できなかった」


 人の担当者は残念そうにしながらも検品していく。


「こちらの品は次も手に入るかわからないものとして扱っていますから大丈夫です」


 ……もう作れないかもしれない。その一言がどうしても言えない。


「……人が……森の外に人が多く来ていると聞いている。何か情報はないか?」


「森の外、ですか?」


「聞いた話で詳しくはわからないのだが……狩人ではないらしい」


 しばらく思案した後、情報を話し始める。


「私も聞いた話で確実なものではありませんが、先日、ドラグナールとドゥルガルドで戦争がありました。その影響で軍がエルヴァリエルの周辺にいるようです」


 買った地図を思い出す。

 確かドラグナールがエルフの森の南にあって、ドゥルガルドがその西にあったはずだ。だから、いま外にいる軍はドラグナールのものか?


「はい。軍ではなくてもドラグナールの人間でしょう」


 ドラグナールといえば戦争ばかりしている国だったな。


「なぜ、関係ない方向へ軍が来る?」


「戦争後に交わされる条約……国同士の取り決めがありまして、大きな戦力を持たないよう、一つの場所に軍を集めないようになったそうです。なので、大きな軍を分けて今まで軍がなかった場所に配置しているのかと……推測も混ざっているので正しいかはわかりませんが」


 この魔素が薄くなっている時に戦いを専門としている人が側にいる。しかも、戦争を繰り返すような国の人が……推測ではある。だが、この時期に軍が森の近くへ移ってきたという事実だけでも十分警戒すべきだ。

 これはアレが関係しているかどうかを確かめている場合ではない。インゴットの交易は今持っている分を出したら終わりにする。


「……この状況ではおそらく、インゴットと薬草は取引ができなくなる」


「わかりました。また交易に出せるときはぜひ取引させてください」


「ああ」


 今後アレを動かしてインゴットを作ることはないだろう。今回は目立つ異変がなかったとしても、今後も大丈夫だとは言い切れない。

 インゴットの交易を止めても部族の交易は続けられる。部族の交易さえ続けば、部族に必要なものは入手できる。何も問題はないはずだ。


 もうアレを動かさなければ、魔素が減ることはない。徐々に元の魔素量に戻っていくはずだ。


 この時はそう思っていた。




 エルヴァリエルの集落ではルミシルヴァを除く族長が集まっていた。


「交易が終わったようだ」


 エルヴァリエルの族長が見回しながら話す。


「風の精霊。魔力を使っていいからこの部屋の者にも聞かせてくれ。ルミシルヴァの若長は人間と何を交換していた?」


 部屋の中の空気がわずかにそよぐ。


『森で育った木を形にしたもの』


『木をいろんな形にしたもの』


『魔素と魔力で育った草』


『地の力が集まったもの』


『石をいろんな形に変えたもの』


 さまざまな言葉が風にのって聞こえる中で交易品を指す言葉はこのくらいだろうか。気になることを問い返してみる。


「『魔素と魔力で育った草』はどんな草だ?」


 『わかる?』『他の精霊に聞く?』『地の精霊?』『なんて呼んでた?』

 相談が始まると一気に騒がしくなる。


『あれはみんなが薬草って言っている草だと思う』


 ずいぶんと魔素を濃くためている薬草らしい。それを育てるために魔素を集めているのだろうか?


「『地の力が集まったもの』は?」


 これについては『地の力が集まった』以外はよくわからないようだ。

 エルフの森で地の力が集まる?


『エルフの子が『インゴット』って言ってたよ』


「インゴット……たしか、ドワーフや人が鍛冶で使うものではなかったか?」


 インゴットをエルフが人間に渡していたのか確認すると肯定の返事があちこちから聞こえる。若長が人に渡したもので間違いないようだ。


 他の言葉は工芸品や人が商品として持ち込んだもののようだ。お礼に魔力を多めに渡して風の精霊を帰してやる。


「どのようにしているかはわからないが……薬草やインゴットを作るために魔素を消費しているのではないか?」


「薬草はともかく、インゴットは森の中で作り出すのは難しいですよね?」


「ルミシルヴァにはドワーフがやるような火を集めている気配はなかったはずだ」


 ますますルミシルヴァが怪しいという空気になったところで、急ぎの報せが飛び込んできた。


「お話し中に失礼します! 族長に急ぎお知らせしたい件があります!」


 入室の許可を出すとすぐに血相を変えた伝令が入ってきて一礼する。


「世界樹が……世界樹の葉が降り始めました!」

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