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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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第96話 ルミシルヴァの疑惑3

 エルヴァリエルの族長の話はやはり魔素の関連だったらしい。

 どうやらルミシルヴァを除くすべての部族の森で魔素が減少しているようだ。


「アルセリオン、交易に出たときに、魔素が薄いと感じたことはないか?」


「小径のないところを歩いているときも、そこまで魔素が減っているというようには感じませんでした」


 族長が聞いた話では魔素の量に波があるらしい。今は減っている。だが、ルミシルヴァでは減っているようには感じない。


 ……これは、まだ確証はもてないが……アレは周囲から魔素を引き寄せているのか?

 もしそうなら、魔素がルミシルヴァへ流れ込み、他部族では減少していることも説明できる。アレを動かしている間は周囲から魔素が集まり、ルミシルヴァには魔素が満ちる。だから他部族だけが薄く感じるのではないか。

 交易に出る頃にはアレを止めてから時間が経っている。集めていた魔素も徐々に戻っていて、減少していることに気がつかなかったのではないだろうか?


「魔素の減少と聞いて、すぐにアルシェイラの残していったアレが暴走したのかと思ったのだが、確認する限りでは止まっているようだった」


 ……すぐに止めておいてよかった……これはしばらく、稼働させるのは無理だな。


 しかし、ここまで魔素に影響が出ているとは思いもしなかった。

 あいつが使っているときも魔素に変化があったのは一回だけだ……いや、ルミシルヴァの中だけを見ていたから、減っていると判断できなかったのか。


「ルミシルヴァでは現象を確認していないが、原因が中にないとは言い切れない。交易に行ったら他の場所の魔素も気にしてみてくれ」


「はい」


 それは当然だな。

 アレを動かしていない時の魔素量と動かしている時の魔素量を一度比べてみなければ……その結果によっては……インゴットの取引は終わりだ。

 取引にこだわりすぎて結界を壊しては意味がないからな。




 ルミシルヴァでの集会の後、四人の族長はエルヴァリエル部族の一室に集まっていた。


「これだけの部族で起きている現象が、ルミシルヴァだけ影響がないのはおかしい」


「ルミシルヴァが何かしているのではないか?」


 ルミシルヴァに対して様々な憶測が飛び交うが、どれも確証がない。最近、ルミシルヴァで変わったことの話となり、ふと思い至る。


「そういえば……最近になってルミシルヴァの若長が交易に興味を持って、人となにやら交換しているようだ」


「交易ですか?」


「交易はエルヴァリエルでまとめていたはずでは?」


「ああ、そうなのだが、ルミシルヴァの若長だけは直接話をしているようだ」


 基本的にエルフは人間と関わりたがらない。だから交易もエルヴァリエルでまとめることで接触する人数を少なくしていたのだが……中には自ら外に出て、人間と関わろうとする者もいる。ルミシルヴァの若長もそういう一人だと思っていたのだが……


「何を、売っているのでしょうね?」


「エルヴァリエルを通さないということは、工芸品だけではなさそうだ」


「聞いても当たり障りのないものしか答えないだろうな」


「次の交易の時に、精霊に調べてもらうか?」


「物の名前が必ずしも一致するわけではないので、わかるかどうか……」


 やらないよりはやったほうが情報は得られるだろう。次回の交易はエルヴァリエルの担当者は行かせないようにする。そうしないと、普段の交易品と情報が混ざってしまう。

 どうしてもすぐに交易が必要なものがあるのであれば、ルミシルヴァの若長とは時間をずらすなど対応が必要だが……交易を止めてもいいか一度確認をとる。


「部族の交易も止まるが、協力を頼む」


「普段から少しずつ交換をお願いしていますから、急ぎのものはないはずです」


「目に見える変化がそこにしかない以上、少しでも情報は集めるべきだ」


「うちも構いません。交易なんかより魔素の減少の方が問題だ」


「売っているものと魔素の減少が関係しているかはわからないが、まずは何かを調べなければ話にならない」


 交易までまだ時間がある。それまでは各部族で原因がないか、詳しく調べることにして解散となった。




 アルセリオンは一度ルミシルヴァの外を歩いて、どれくらい減っているのかを確認してみることにした。


 ルミシルヴァの森から出て、いつもならすぐに入る小径は使わずに歩く。しばらく歩くとルミシルヴァから離れれば離れるほど、確かに魔素は薄くなっていくのがわかる。

 こんなすぐにわかるほど魔素が薄くなっているとは……他の族長たちが騒ぐのもわかる。これはアレの影響なのか? それともまた別の要因が?


「止まれ!」


 強い制止の声がして足を止める。声が聞こえた方を見ると、弓を持ったエルフが左手側に五人いた。


「ルミシルヴァの若長ではありませんか。ここは狩り区域です。不用意に歩くと流れ矢に当たりますよ」


 慌てて周りを見回すと、狩場を示す目印があちこちにある。しかもあの模様はフェルシルヴァのものだ。


「すまない。考え事をしながら歩いていたら印を見逃した。邪魔をしたな」


「いえ、お気をつけて」


 すぐに反転して引き返す。

 印の内側に踏み込めば、制裁を受けても文句は言えない。今回は注意だけで見逃してもらえたが、族長には報告しておくべきだな。


 しかし、まだアレの影響と確定していないとはいえ……魔素の減少でアレの監視は強まったとみるべきだ。それに、また稼働させれば魔素がこれよりも薄くなるかもしれない。

 この状態で交易のためにインゴットを作るのは、難しいだろう。


 次の交易の時に『もう作れない』と言うべきか……それとも……半分だけ渡してその次まで様子を見るか……?




「ルミシルヴァの若長がこちらの領域に?」


「考え事をしていて印を見逃したようです。確かに声をかけた時は、心あらずといった様子でした」


 ルミシルヴァに、それも若長に疑いを向けている今、どうしても邪推してしまう。


 『何か仕込みにきたのではないか』と。


 何をと聞かれると困るのだが……

 おそらく他の部族では魔素が減少していると聞いて、確認をしていただけだろう。


「まだ魔素が減少している原因が掴めていない。また変わったことがあったら些細なことでも報告してくれ」


 確実にルミシルヴァが原因となったわけではない。固定観念に囚われずに情報を集めなければ。

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