↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/126

第92話 付加価値を知る

 交易ではいつものように担当者の手が空いたら声をかけ、マジックバッグの支払いのために、今回もインゴットを五本分渡す。


「用意できた書物はこちらになります」


 どれを選んでも交換条件は同じらしい。インゴット一本であればこの中から三冊と言われ、それぞれの書物の説明を聞きながら選んでいく。

 周辺国を紹介する本や歴史書、礼儀作法の本、貿易について書かれた本、旅行記、伝記などが並んでいる。

 迷ったが、とりあえず周辺国を紹介する本と旅行記を二冊交換することにした。合わせて読むとどこにどんなものがあるのかわかりやすいだろう。


「旅行記はいくつか種類がありますので、また探しておきます」


 インゴット一本と交換で購入した書物をマジックバッグへしまい、代わりに部族の工芸品を取り出していく。

 今回からは工芸品を収める箱にも彫刻が施されている。工芸担当者と彫刻担当者が張り切っていた成果だ。さらに首飾り用の小さな彫刻も預かってきたため、それらも並べていく。


「ずいぶんと細やかな彫刻ですね。これは人気が出そうです。箱の彫刻は同じ柄がいくつかありますが……?」


「箱には作り手ごとに決めた意匠を施してある」


「作成者がわかると、人気となった作成者の工芸品には高値がつきそうですね」


 そういうものなのか?


「特定の作成者の作品だから、と購入を決める人もいるのです。取引している全ての工芸品に箱をつけることは、無理ですよね?」


「さすがに他の部族までは無理だ」


 他の部族に彫刻をする者がいるかもわからない。そこまで細かく部族間で情報交換をしているわけではないからな。仮にルミシルヴァの彫刻担当者へ頼んだとしても、自分たちの分だけで手一杯だろう。


 今まで工芸品は取引されていたが彫刻はなかったため、どれくらいの値段になるかはまた査定後に精算することとなった。とりあえずは工芸品の値段で買い取ってもらう。


「工芸品も彫刻の入った専用の箱がつくので、少し値を上げられると思います」


「そうか……工芸品を高値で引き取ってもらえるのは助かるな。改めて部族内で交易の要望を聞いたら、金属のものが多くてな……」


 そう言いながら作成した一覧表を差し出し、一つずつ価格を聞いて書き込んでいく。


「そちらの一覧を書き写してもよろしいですか?」


「ああ、構わない」


 一覧表はエルフ文字で書いてあるのだが……全て読めるようだな。人の文字に直しながら書き写されていく。器用なものだ。


「劣化するものはなさそうなので、準備できたものから交易に持ってまいります」


 やはり専門の技術が必要なことに使う道具は作ってもらわないといけないから時間がかかるらしい。やすりや彫刻刀はわかるが、布の針もなのか?


「刺繍針であれば貴婦人の趣味で求められることが多いため揃っているのですが、縫製用の針ですよね?」


 刺繍?

 よほど不思議そうな顔だったのだろう。一枚の布を出して見せてくる。


「別の取引の品なのですが、刺繍はこのように布に糸を重ねて模様を作ります」


 家紋や名前を入れることが多く、模様によってはお守りの意味もあるようだ。外には色んな技術があるものだ。


「この刺繍の布は余分があるのか?」


「色や模様の好みがあるので選んでいただけるように揃えてますから、二枚ほどでしたらお売りできます」


「一枚でいい。服飾担当に見せてみる」


 フリルやレースと同じく着るものには使えないかもしれないが、見せたらやってみたいと言うかもしれない。しかし、この小さな布は何に使うのだろうか?


「手を洗った後とか、汗をかいた時に拭くのに使うのですが、こういったものは使いませんか?」


「精霊に頼めばきれいにしてくれるから、使わないな」


 精霊に頼むと多少の魔力が必要だが、頼めばすぐにきれいにしてくれる。お礼に少し多めに魔力を渡すから喜んで集まってくる。

 そんな情報を呟くと感心したような声が返ってくる。


「精霊魔法をそんな生活の一部に使っているとは……さすがですね」


 そういえば、人は魔力がほとんどないのだったか?


「そうですね。中には魔法を顕現させる人もいますが、小さな火を出したり、掌に水を出したりできる程度ですね。しかもすぐに魔力切れになってしまいますから……人の間では魔法は使えないものという認識です」


 魔法が使えないということは、精霊の助けも得られないということか。そんな生活は全く想像がつかない。精霊はどこにでもいて、意識を向ければすぐに反応が返ってくる。それがエルフにとって当たり前のことだ。

 軽く交易担当者の服の汚れを落としてやるととても感動される。


「これほど簡単にきれいになるとは! 魔法は素晴らしいですね!」


 「これが人に使えるようになれば、ずいぶん生活も変わるでしょうね」といろいろ思案が巡っているようだ。

 魔力がなければ難しいと思うが、そう考えるような何かがあるのだろうか?



 話がそれたが、部族の交易に戻る。

 工芸品の対価は、急いで欲しい物がなければ貨幣で受け取り、貯めておくことにした。というのも、交換したいものの一覧に、いくつか一回の交易では足らない、少し高価なものもあったからだ。高価なものを交換するときは、足りない分を貯めておいた貨幣で補うことにする。


 今回は必要なかったが、手元に貨幣があれば急な取引にも対応しやすい。

 自分用のインゴットもマジックバッグの支払いが終わった後は貨幣にかえておくか。そんな高いものを買う予定もないが……情報が入ると何が欲しくなるか、わからないからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。