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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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第88話 人の交易

 真名を入れた翌日には薬草が生い茂り、採取できる状態となっていた。


「生育が早いな……」


 だが、これでまた新たに生み出す状態となったことは確認できた。あとは商人の反応が良かった金属の成長具合だが……


 金属が生えている壁を見る。

 そこには以前から生えたままとなっている二本と、抜き取った跡の穴が一つあった。中を覗き込むとあの金属の色が見える。


「おそらく育っている、と思うが……」


 試しに以前から生えたままになっていた一本を抜いてみる。

 するりと抜けた後はただの穴となり、そこへ魔素と魔力が集まるのを感じる。


「……この流れが金属を作り出しているのか……」


 出来上がるまでずっとこの流れが維持されているとしたら……なるほど。これは魔素に影響も出るだろうな。


「そうなると……やはり数多くは出せんか……」


 マジックバッグ分は生み出さなければならないが……いや、一度多く出したら次もその量を求められるだろう。

 少なく出せばその分だけ多い回数の取引が必要となるが、上限は決めておいた方がいい。


「最初は五本。徐々に増やして最大十本といったところか……」


 魔素の流れが一気に多くなれば、ここが稼働していることがすぐにバレてしまう。そうなったら数値をゼロにするだけでなく、物理的に触れないように対策するだろう。


「今回、何日で採取できるようになるか把握したら一度止めるか……」


 そうなると毎回真名を入力することになるが……一度も二度も同じだろう。次は、すぐに入力できるはずだ……あの魂にかかる重さを思い出すだけで息苦しいが……それくらいの気持ちでなければ入力できそうもない。



 少しずつ薬草を採取し、処理をしながら金属の育成具合を観察する。

 どうやら金属の塊が出来上がるまで四、五日は必要になるようだ。次は一本ずつ育てたら次の交易までには五本貯まるだろう。


 そろそろ交易に向かわなければいけない。

 交易に出ている間に族長が様子を見に来るかもしれないから、数値をゼロにして動作を止めておく。

 真名の入力を求められないことに安堵する。数値をゼロにするときは警告文が出ないことはわかってはいるのだが、どうにも操作することそのものに緊張が伴う。


 できた金属を一本抜き、薬草は全て採取、処理をして持っていく袋へ入れる。これで稼働させる前と同じ状態になったはずだ。


 ふと、ルミシルヴァはまだ人との交易に参加していないことに思い至る。今後もこうして出かけるのであれば、何か交易に出すことを提案するのもいいだろう。いくつか候補を考えなければいけないな……




 交易当日。

 前回と同様、人の交易担当者の手が空くのを待って話しかける。


「今、話をしてもいいか?」


「はい、マジックバッグの件ですね?」


 人が荷物の中から小さなカバンを取り出す。


「中古の手頃な美品を探していたのですが、タイミングが悪く出回らず……新品なので少し値が上がりますが、よろしいでしょうか?」


「どれくらいだ?」


「前回のインゴットと同品質であれば二十八本となります」


 コレはインゴットというのか……覚えておこう。

 しかし、二十八本か。今日の手持ちは二本。予定していた五本だと五回は確実に交易に来なければならないな。

 だが、こうして準備された以上は作り出すのを止められるわけにはいかない。


「……おそらく五回に分けて持ってくる」


「……そうでした。エルフの方々は値段交渉はしないのでしたね……新たな取引は初めてで、引継ぎをすっかり失念していました」


 値段交渉?

 交易担当が苦笑を浮かべながら説明してくれる。


「本来ならこんなことは言わないのですが……人の商売では最初は少し高めに値段をつけてあることがほとんどです。特に今回のように最初から買うものが決まっている場合はそうですね」


 依頼をすると手数料というものが値段に入っているのだとか……なぜそのような面倒なことを……


「今後もこの品質を保って取引を続けていただけるのであれば、マジックバッグ本体の価格で二十五本、賃料で一本。合計二十六本でいかがでしょうか?」


「ああ、それでかまわない」


 相場を調べようがないからな。それに残り二十四本なら持ってくる回数は変わらない。

 今回持ってきたインゴット二本を渡し、マジックバッグの代金としてもらう。薬草も渡したところで貨幣を渡そうとしてきたから止める。


「薬草分は情報が欲しい」


「どのような情報をお望みでしょうか?」


「そうだな……このマジックバッグを作るという錬金術について……他にどういうものが作られて売られている?」


「そうですね……よく出回っているものであれば、回復ポーションでしょうか?」


 回復ポーション?


「この薬草を使って錬金するもので、傷を回復してくれます」


「傷の回復……薬草とどう違う?」


「飲んだり、傷口にかけたりするのですが、使用してすぐに傷口がふさがります」


 すぐに傷が治る?


「初級、中級、上級、特級とありますが、一般的に出回るのは中級までです。中級ですと骨や内臓に届くような傷は完全には塞がりませんが、応急処置には使えます」


 ただ、ポーションは体力を使って本人の治癒能力を高めるものらしく、体力がない状態で使うと逆に具合が悪くなるようだ。

 万能ではないが、ずいぶんと便利なものがあるのだな……


「その回復ポーションを見てみたい。一番安いものでいいから次回、持ってきてくれないか?」


「承知しました。お代は薬草と交換でよろしいでしょうか?」


「ああ、それでかまわない」


 さすがにこの情報だけで全ての薬草を持っていくのは、と思っていたらしく、次回も同じくらいの量を持ってくることを約束してその日の交易は終えた。

 薬草は一晩で生えるからな。できる限り持ってきて、次の情報を買うか。

 薬草でも一度に大量に生やし続ければ魔素にどれくらい影響が出るかわからないから、魔素の様子を確認しながら少しずつ処理することになるが……


 他に知っておくべき外の情報は……何があるだろうか?

 一般的な常識を聞いてそれに関する書物でも取り寄せてみるか?

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