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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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84/125

第84話 アルセラ誕生

 集落の門から出てしばらくは走っていたものの、今は速度を落とし、ゆっくりと歩いている。

 本当はもっと走っていたい。考える余裕があると、どうしてもおじい様の寂しそうな顔やアイラの泣き顔が頭をよぎってしまう。でも普段から運動らしい運動をしていないから、あれだけの距離を走っただけでもうくたくただった。


「どこか、休める場所を探さないと……」


 集落からは離れたけど、まだ森からは出ていない。周りを見回しても、木々が立ち並ぶばかりで洞窟のようなものはなかった。森なのだから当然よね。


「さすがにテントみたいなものはなかったのよね。困ったな……」


 ここは森の中だから魔素がある。小さいものならいくつか魔石もある。


「小さいダンジョン作ってそこで休もうかしら?」


 これで追い出されたっていうのに懲りないわよね、あたし……でも、休める場所が見当たらないのも困ってるのよ……仕方ないよね。

 こんな小さな魔石でも穴を開けるくらいならできると思うのよ。ただ、穴を開けた後に埋められるのかしら? 森の中にあちこちにぽこぽこと穴が開いてたらさすがに迷惑よね?


 試しにごく浅く穴を開けてみる。さすがにこれくらいだとほとんど魔素の消費もないわね。

 埋まるように命令してみるけど、全く反応しない。


「これは……穴を作って中で寝るのはなしね」


 うーん……木を育てて洞にしたらどうかしら?

 木なら周りにあるし、残していっても違和感はないわよね?


 開けた穴の中心部に木を生やして成長させる。

 魔素を消費しすぎないように、慎重に、慎重に……ここでまた魔素を揺らしたら大変だわ。


 うん、できあがった洞はちょっと小さいけど、一晩横になるだけだから問題ないわね。

 早速洞の中に入ってマジックバッグから取り出した毛布に包まる。

 魔素を使ったせいか、精霊がちらほらと集まって来た。そういえば、ルミシルヴァに作ったダンジョンにも精霊が集まっていたわね。


 ……ルミシルヴァ、か。アイラ、大丈夫かしら?

 お兄様にお願いってしてきたけど、あの二人、相性悪いのよね。きっとおじい様が間に入ってなんとかしてくれるでしょうけど。

 家族なんだから、みんなで仲良くしてくれるといいなぁ……


 木が育ったおかげで根に包まれてしまったコアに触れる。

 小さな魔石だから、このコアにはほとんど情報も魔力も入っていない。ただ、維持をするために魔素や地脈との橋渡しをしているだけだ。

 何となく繋がっている地脈の流れを辿ってみる。すぐに辿れなくなると思っていたら結構遠くまでいけてびっくりした。そのまま辿りやすいほうへ辿っていったら、なんとなく覚えのある魔力の流れが——あれ?


「もしかして、これってルミシルヴァのダンジョンコア?」


 え? 地脈がネットワークになってるってこと?

 ……地脈がネットワークとして使えるなら、ここからルミシルヴァのコアに触れる? そうであれば、上限の設定ができるかもしれない! なんとかならないかしら?


 自分だけで使うと思っていたから、セキュリティなんて何も設定していない。だから繋ぐことができれば何とかなるのではないかと思うのだけど。



 時間も忘れて試行錯誤した結果、なんとかコアの操作画面はここからでも見られるようになった。だけど……


「中は、触れないわね……」


 見られるようになってからいろいろと試してみたけど、どうやっても中の数値やシステムをいじることはできない。

 いや、感覚的にはできそうなんだけど、たぶん、ここのコアが限界っぽい。

 小さいものね……魔石。


 うーん……なら前世にあったコンピュータウイルスみたいなのを仕掛けておくのはどうかしら?

 数値を上げる操作をした時をトリガーにして画面を被せて警告を出す。おじいさまやお兄様は使わないと思うけど、他の誰かが使おうとするかもしれない。

 警告だけじゃなくて、何か抑止力になるもの……


「真名でも入力させる?」


 あれは一種の契約だ。そんなものを入力してまで出力を上げようとは……普通は考えないわよね。

 やめようって思ってくれたらそれでいいのだし、作っておこう。


 ……自分の作ったものにウイルスを仕込むなんて、なんか複雑だわ……

 いや、暴走させようってわけじゃないのだし……うん、深く考えてはダメね。これは攻撃するものじゃなくて防壁よ。よし、できた!


 なんか、空が白み始めている気がするけど、とりあえず寝よう。



「うーん、朝だ」


 というか、もう昼も過ぎてるわね。このまま今夜もこの洞で過ごそうかしら……いくら木に紛れるっていっても、洞の木をいっぱい作るのは問題な気がするわ。魔石もそんなに数を持っているわけではないのだし……


 狭い洞に体を押し込めていたから軽くストレッチをして体を伸ばす。

 運動も兼ねて周りを散策しつつ食べられる木の実を採取していく。森から出たら木の実なんて簡単に手に入らないわよね? ちょっと多めにマジックバッグの中にいただいていこう。

 すぐに町に辿り着けるかもわからないし……そこで気がつく。あたし、お金持ってないわ?


 うーん、マジックバッグにいろんな素材はあるのだけど、これは売りたくないのよね。やっぱりここはラノベ定番の薬草売りかしら?

 この辺りって薬草生えてる? 今日は移動しないなら時間があるし、ちょっと探してみよう……買ってくれるところ、あるといいなぁ……


 森から追放されて出るのだから名前も変えようかなぁ……アルシェイラの愛称でいいかしらね? アルだと男の子っぽい? アルシェでもいいけど……アルセラ……うん、アルセラがいいかも。これから名乗るときは『アルセラ』って名乗ろう。


 町か……ラノベだと冒険者になったり、どっかの組合に登録したりするんだけど、そういう仕組み全然わからないのよね。というか、そういうのに登録するとわずらわしそう……エルフっていうだけで目立ちそうだし。


 どっか、地脈がちょっと多そうな山にでも小さめのダンジョンを作って籠ろうかな? 今度はちゃんと消費エネルギーの上限も、セキュリティもしっかり設定しよう。

 ダンジョン作ったらその中で薬草とか売れるものを作って、お金が必要になったら売りに行ったらいいわね。


 うん、何とかなりそうだわ。そうと決まったら町で薬草が売れるかどうかと、ダンジョンを作る山探しね。

 少し遠そうだけど、見えている山に向かって歩いたらいいかしらね? 森を伝っていったら洞の木も作れるから寝る場所も確保できるし、そうしよう。

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