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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
エルヴァリエル

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第82話 アルシェイラ2

 アルシェイラが深く眠りについている頃、ダンジョン前に一人の男が近づいていた。


「若長! こんなところへどうなさったので?」


「少し中を見てみたい。通してくれ」


「族長命令で誰も通すな、と……」


「少し見るだけだ。すぐに出る」


「あ……若長! 困ります!」


 制止する見張りのエルフを押し退け、強引に中へと押し入る。


 中はさほど広くない。首を左右に振ればすぐに壁に当たる。

 そんな狭い空間でも様々な薬草やキノコ、見たことのない木の実が所狭しと生えていた。そして、一角の異様な光景に視線が止まる。そこには精製されてインゴット状になった鉱石が壁から突き出ていた。

 鉱石を軽く引っ張ってみるとするりと抜けてくる。表面はつるっとしていて光を跳ね返して煌めいている。


「ふぅん? あいつはこんなのが欲しいのか?」


 普通に暮らしているエルフはインゴットになった鉱石など見たことがない。金属などほとんど使われることがなく、矢についている矢じりやナイフくらいなものだろう。

 それらを整備する鍛冶師もいるにはいるが、自分たちで打ち、成形することはない。ほとんどが工芸品との交換で外から入手しているものだった。


 外に出たエルフの話では、鍛冶師はこのようなものから武具を作るのだったか?


「……これ、外に売ったら売れそうだな……」


 それをやるにはまずここを手に入れなければいけないが……いや、まずはこれが売れるものなのか確認したいな。一つなら隠して持ち出せるか?

 少々重いが、何とか服のたるみに隠れるように調整して金属を固定する。見張りのそばを通る時だけ、落ちないように支えられていればいい。


「若長! もうそろそろ出てきてください!」


「今行く」


 たとえアルシェイラに甘いとはいえ、族長という立場上、魔素に影響を出すものを作ったアルシェイラを罰さずにはいられないだろう。

 その後、ここは族長預かりになるはずだ。

 あんな簡単に回収できるのだから、若長という立場を利用して管理に関わることさえできれば、何度でも持ち出しは可能だろう。


「危険なものを残すとは考えにくい。どうにか処分を回避できないか?」


 そのためにも自分がここに興味があると知られてはいけない。


 出口に向かい、ぽつりと呟く。


「ここはずいぶんと危険なものだ」


 いろいろとな。




 おじい様に滾々と魔素と結界の重要性を諭され、ようやく解放されたと部屋から出たところでお兄様とばったり出会う。


「アルシェイラ……あんなものを作ってエルフを滅ぼすつもりか?」


 もうっ、それは散々おじい様から聞いたから! ごめんなさい!


「アルセリオン、いいところに。こっちに来なさい」


 お兄様がおじい様に招かれて部屋に入っていく。

 きっと、あたしの処分について話し合うのでしょうね。


 やっと作れたのに……

 遺跡の情報から迷宮を見つけた時、すごく嬉しかったのよね。こんなラノベで見たようなものが作られていたなんてって感動したものだわ。

 だけどそうよね。今残っていないってことは、何かしら問題点があるのよね。


 ……さっきのおじい様の話では、遺跡のある位置はほぼ荒野だという……もしかして、遺跡ってダンジョンの跡地で周り全てのエネルギーを吸い尽くした?


 ……ありそう……

 うわー……それだと作ったダンジョンに制限をかけておきたいな。

 でもきっと近寄らせてもらえないよね。

 ……どうしよう……


 危険なものだってあたしに諭すくらいなんだし……使わない、よね?

 なら、このままでも問題ないはずよね?




「若長の意見として、アルシェイラをどのように罰するか聞かせてくれるか?」


 アレを入手するにはアルシェイラがいない方がいい。

 魔素に干渉して結界が揺らいだ事実がある以上、森から追放という処分も、厳しすぎるとは言えないだろう。


「魔素はこのルミシルヴァだけの問題ではありません。森全体に影響すると考えるのであれば、森から追放するべきかと」


「う……む……」


 族長の返事は鈍い。さすがに追放までは考えてはいなかったのだろう。


「……そうか……追放は重いが……今回は魔素全体に影響を出したわけではないが、そうなる可能性はあった。そう考えると危険性は看過できぬな」


 ……アレをアルシェイラに持たせたままにしておくとこちらで管理できない。族長としても引き離す必要はあるはずだ。


「アレを止める方法はすでに聞いている。追放も視野に入れるべきだな」


 アレを止める、だと?

 それは困る。どうにかあのまま残させないと……


「結局、アレはなんなのですか?」


「古代遺跡にあった情報を元にして作ったもの、らしい」


「つまり、古代の技術の再現ですか?」


 それはすごい。消えた技術を甦らせたのか!

 ……悔しいが、そういうところは認めざるを得ない。


「ああ、だがな。古代遺跡のある時代はもっと森が広かった。そしてアルシェイラが甦らせた技術は魔素を消費する」


 あの中には様々な植物もあった。

 あの技術を外に転用したら、森も再現できるのではないのか?


「あれほどの技術が消え、今に継承されていない。その意味は考えなければならない」


 それを説いたから止める方法を聞いたのか。


「アルセリオン、アレは止める」


 ……アレを残したがっていることは、察している、か。


「……しかし、消えた技術が目の前にある。それを消すのは、惜しい」


「手の届くところにあれば、利用したくなるものだ」


「……そういえば、あの中にあるものは一体何なのですか?」


「錬金術に使うものだそうだ」


 ……錬金術?


「人間の世界にも錬金術は残っているが、アルシェイラの錬金術は古代遺跡のものだ」


「……エルフが継承していないものを人が継承している?」


「アルシェイラが言うには、錬金術は道具を生み出す技術らしい。生活を便利にするために残ったのだろう、とな」


 その感覚は、よくわからないな。


「アルシェイラはその技術をもっと知りたいらしい」


「森を守るには不要なものです」


「ああ、あの子は単なる趣味だと言い切った」


 趣味でやる規模じゃないだろう。あいつの頭の中はどうなっているんだ?


「追放でも良いのだが、それだとアルシェイラの知識が外に流れる可能性がある。だから幽閉を考えていたのだが……」


 なるほど。

 だがアレは、魔素があるからできたのではないのか? 魔素のない人の環境で再現できるものなのだろうか?


「なんであれ、危険なことには変わりはない。追放か幽閉。本人に選ばせよう」


 その二択ならどちらを選んでも、アルシェイラはアレに関わる事はなくなるな。

 しかし、アレを利用するには止められては困る。どうするべきか……

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