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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
ドラグナール帝国

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80/125

第80話 それぞれの現状

 地下畑ではレオンハルトの地下畑管理者教育が進んでいた。

 基本的な情報の見方を丁寧に教え込み、その情報からどのように現場に展開していくか、計画・立案の実践。さらに実際に担当者との打ち合わせにも参加させて、どのような会話があって、どういう情報を見ていて、どんな展開を提案していくのか。


「先生はどのようにしてその知識を覚えたのですか?」


 ……うっ、ほとんどが前世知識とは言えない。

 ネットは書物みたいなものよね? こっちの世界に学校はないし、一括りで書物みたいなものかな? あとは実践よね。システム関連なんかは仕事を始めてからの方が理解が進んだし……


「……そうですね……主に書物と実践ですが、植物に関してはエルフの知識もあります」


 畑の農作物に関するものは前世知識が大活躍だけど、薬草とかこちらの世界の植物はエルフの知識が強い。知識を途絶えさせず、森を守るために厳しく覚えさせられるのよね。


「農作物の知識に収穫量管理を始めとする領地経営知識、居住などの建築知識にシステム知識、防衛の構築……これ、全て先生お一人で管理されているのですよね?」


「あの……レオンハルト様? 一気に詰め込むと大変ですよ? あたしだって一気には無理です。生きている年数が違いますからね?」


 ……どれだけ違うか、詳しくは言わないけど……


 領地経営にも絡む収穫量の管理から覚えましょうか。それに付随するシステムも少しずつ覚えたら、地下畑の維持には問題ないレベルになるはずです。

 打ち合わせに必要な農作物の知識は、都度トーマスさんやフリードリヒさんに確認してください。あたしだって全部が全部知っているわけではないです。こまめな状況の確認って、管理する上では絶対必要なものなんです。


「わかりました」


 実際に見て、触って、考えていくと、いつの間にか知識ってつながるものだと思うのよね。焦らず、少しずつ、積み重ねていきましょうね。



 そんなレオンハルトに同行するようにアルノルトも地下畑に出入りするようになった。レオンハルトが三回来るうちの一回ではあるが、レオンハルトに何かあった時のために軽い領主教育が始まっていた。

 ただ、地下畑訪問に関してアルノルト本人には領主教育の一環とは伝えられておらず、興味の赴くままに地下畑内を歩かせているようだ。


 そんなアルノルトが気に入ってよく出入りしているのが鍛冶場。

 気難しいドワーフとスパイ容疑のかかっている二人がいることで、護衛についている騎士たちはいつも緊張していた。もちろんスパイ容疑のことなどアルノルトには知らされていない。


「レオン、今日もここで見ていていい?」


 レオンはちらりと視線を向けて炉との距離を確認すると、わずかに頷きを返して視線は火に戻る。アルノルトはそんなレオンの動きと火をずっと飽きもしないで見ている。そして、返事などほぼ返ってこないのに楽しそうに話しかける。

 騎士たちも他の鍛冶層の者にも、アルノルトがなぜそこまでレオンに懐いているのか理解ができなかった。レオン本人も含めて。


 二、三時間ほどそうして過ごした後は素材部屋に移動して、騎士たちやガーゴイルを交えて剣の訓練をする。

 アルノルトは大剣を扱いたいようだが、体に負担がかかるからといつも取り上げられていた。仕方なく一般兵が使う汎用剣で訓練をしている。


「早く大人になりたいな……」


「型ができて、それを支える体ができるまでは大剣は持たせられません」


 この騎士とのやり取りの後、アルノルトは周りが止めるまで型の反復練習をするようになった。始まったばかりの領主教育がおろそかになるほどに……


「アルノルト様? あらゆる知識がないと戦略の立てられない騎士になりますよ?」


 とある日に何気なく呟いたアルセラの一言で、再び勉学にも時間を割くようになったアルノルトであった。




 ドラグナール北方では、セラディアとヴァルカディアンのエルヴァリエル調査が継続していた。だが、いつまで経ってもエルフの反応がない。


「どうしてだと思う?」


「……それを私に聞かれても、情報不足だ」


 レイスは北方への護衛連絡時にこうして近況整理を兼ねた雑談をするようになっていた。

 こうして話を聞くだけでも、最近のエルフの森周辺は明らかにおかしかった。

 監視の目がなくなり、ほとんどいないはずの魔物が増え始めている。監視の目がないおかげで狩りに入る人が増え、魔物による被害が増えていた。

 最近ではヴァルカディアン軍がこの増えた魔物に対応するためと称して積極的に森に入っている。おかげで北方への荷が増え、護衛に出る間隔も短くなっていた。


「ああ、そういえば北方の交易品が変わったらしい」


「交易品が、変わった?」


 情報の幅が広すぎないか? ルドニア公国の情報も拾っているのか……


「ルドニア方面に入っている影からの共有情報でな。少し前から質のいい薬草や鉱石が入ってきていたらしいが、最近は工芸品が減ったそうだ」


「工芸品の方がエルフの特産だったはずだが?」


「質のいい鉱石が人気だから交易は続けるらしい」


 監視の目がない。

 魔物が増えている。

 魔物が増えているのは外への目が減ったことにもつながっているのだろう。外に目を向けていないから、入ってくる魔物も間引きされていないだけだ。


 だが、交易品から工芸品が減っている?

 たしか、エルヴァリエルは複数の部族が集合した国だったはずだ。そして工芸品は各部族がそれぞれ作ることで特色の違いがあって人気だと聞いたことがある。


「……部族間の連絡がとれていない?」


 なにかしらの理由があって部族間の連絡が取れなくなり、工芸品が減っている。その理由で外に向ける目に余裕がないのだとしたら……


「内部で分断されるほどの何かが起きている?」


 ここまでは辿りつくだろう。欲しい情報は何が起きているか。それが推測だけでわかれば苦労はしない。


「……情報不足だな」


 そもそも、元のエルヴァリエルの情報が皆無に等しい。そんな状態から異常が起きていると言われても、今とどう違うのかわからない。

 レイスも明確な答えなど求めてはいないのだろう。しばらく考えた後、気配が消えていった。



 こうして各所で思惑が入り交じりつつも、大局が動くことなく時間が過ぎていく。

 あまりにも状況が動かないことにそれぞれ焦れ始めていた頃、突如エルフの動きが見え始め、大局の流れは急激に変わり始めた。

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