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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
地下農業迷宮

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第8話 宝石商2

「ルミナリアの方々に聞くのは失礼なのだけど、インクルージョンの宝石はお持ちかしら? もしお持ちでしたら見せていただきたいのですが……」


 あたしの言葉にピクリとわずかに表情が変わる。ああ、ごめんなさい。やっぱり失礼よね。一般的には二級品を見せろと言っているようなものだもの。

 あたしはインクルージョンの方がいろいろな顔があって好きなのだけどね。


「……いくつかお見せできるものはございます」


 ちゃんと用意があるってことは、通常の宝石だと高くて買えない下級貴族用に別途用意しているのかもしれない。

 小ぶりなケースをいくつか出してきて空いたスペースに開いた状態で並べてくれる。色別にケースに入れられているのね。


「こちらの品々はインクルージョンではありますが、光の当たり方により模様が煌めく一品となっております」


「まぁ、本当ね。これなんて複雑なカットをしたかのような煌めきだわ」


 あら、まさかのクラリッサ様がインクルージョンの宝石がお気に召したようだ。ただクラリッサ様が気に入った宝石はエリオットさんもおすすめしたい一品だったようでいろいろ売り込みという名の説明をしている。

 さすがは産出量の多いルミナリア王国産の宝石ね。インクルージョンの宝石の中でも複雑で変わった模様のものが多いわ。これなら魔力伝導率の良いものを選ぶ方がよさそうね。


「失礼ながら、お嬢様はなぜインクルージョンの宝石をお求めなのでしょうか?」


「偽造防止ができる一点ものを求めているのです」


 ダンジョンコアのセキュリティキーを作るのに必要なのよね。インクルージョンだと模様によって魔力伝導が変わってくるから個別キーとして使えるはずなのよ。


「そのご希望でしたらご覧いただきたい宝石がございます」


 エリオットさんがまた別の箱を取り出してきて中を見せてくれる。


「石の大きさは他では見ないような大きさなのですが、複雑に二つの結晶が混ざり合っているため単色に切り出せず、市場ではやむなくインクルージョン扱いとなった一品です」


 すごい。ルビーとサファイアがマーブル状になっている。こんな混ざり方をすることもあるのね。うわぁ……確かにこんな模様は他にはないわね。

 整形もしやすそうだし、切り出し面で模様が全く違うようになるからこれがいいけど……大きすぎて……インクルージョンなのにものすごく高そう……


「こちらをいただきますわ」


 えええ、ちょ……ちょっとクラリッサ様! これのお値段聞いてませんよ? あとで陛下に怒られません?

 そんな叫びを声に出すわけにもいかず、動揺している間にクラリッサ様付きの侍女が宝石を受け取っていく。あああ、お代は国からとはいえ本当にいいのかなぁ?


 売れたのはインクルージョンの宝石ばかりだったのだけど、エリオットさん的にはいい商売だったようでにこやかに帰っていった。やっぱりあのルビーとサファイアの、ものすごく高かったのでは? こ、怖くてお値段聞けない……



 気にしても購入してしまったものは仕方ない。開き直って購入した宝石をコアやガーゴイルの命令を書き換える時のキーにするために形を整えて彫金してもらう。

 せっかくなのでセドリックさんにバルディウス家の家紋を聞いてその形に添うようにデザインを考える。

 バルディウス家の家紋は深緑の盾に銀の塔…銀の台座を盾の形に作って、宝石をぷっくりと丸みをつけて同じ盾の形に切り出してもらって台座にのせる。その上に銀を塔の形に彫金したものを爪の役割のように被せて台座に固定してもらうのはどうかしら? これをネックレスにしたらいい感じなのでは?

 家紋と宝石の色が違うのは表に出さないからダンジョン用に特別ってことで。


 そのデザインで二つ作ってもらったらクラリッサ様が気に入ったようで、家紋と同じ深緑の宝石を用意して辺境伯様のカフスボタンとクラリッサ様のネックレスを別途作っていた。そこから家紋をアクセサリーにするのが貴族間で流行ったのはまた別のお話。



 そうこうしているうちにきたわ! コアにする魔石が!

 陛下がすごく頑張ってくれたようでおそらくキング種の魔石ね。魔力の保持力も高くて大きさも申し分ない。これなら管理システムもしっかり刻み込めそうね。きっと採掘階層も広く作れるわ。


 基本の管理システムはもう組み終わっているから錬金で魔導金属を作って魔石に刻み込んで……メインキーとサブキーにも認識のワードを刻み込んでいく。コアにもメインとサブキーの魔力伝導パターンを覚えさせて、と……

 よし! これで簡単な変更ならあたしがいなくても変更が可能になるわ。

 まぁ、通行証を変更したいとか、運用を停止する程度の変更しかできないけど。さすがに設計を変えるのは管理システムを理解していないと難しいのよね。教えられる自信はないし。


 そういうのを補助するAIの開発はまだできてないのよ。基礎プログラムがないと難しいわ。あと魔石の記憶領域が足らなさそうだから、AIを組み込むなら竜クラスの魔石が必要かもしれない。そのうちにダンジョンの管理プログラムの圧縮化もできたらいいわよね。

 今は設計図だけでも結構容量をとっている自覚はあるのよ。そこは今後の改善点ね。


 辺境伯様ー! ダンジョンコアが完成しましたー!


「ベルノルト子爵が言っていたのはこれか……」


 辺境伯様が笑いを堪えきれずに肩を震わせていらっしゃる……はっ!


「申し訳ございません……先ぶれも出さず……」


 か……顔が熱い……

 やってしまった……あまりにも嬉しくて、つい……セドリックさん、礼儀知らずなのはわかってるからそんな睨まないで。ごめんなさいぃぃぃ!

 というか、マティアス様。辺境伯様に一体何を吹き込んだの!?

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