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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
ドラグナール帝国

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第75話 ルドニア公国2

 ドラグナール帝国セラディア領内にあるレヴァン商会では、ルドニア公国のフェルン商会との会合が開かれている。

 最近、北の交易品に質の良い鉱石が混ざるようになったとの噂を得てこの会合に参加しているのだが、他の交易品の話ばかりでなかなか欲しい情報の話に入らない。


 ラウルは商人たちが交わす他の交易品の情報を聞きながら、フェルン商会の観察をする。

 部屋に入ってきた時から気にはなっていた。どうにも一人だけ、商会の人間ではない雰囲気の者がいる。こちらの視線に気がついたのか、笑顔を向けてくる。

 ……どうやら交渉ごとがあるようだ。自分に判断できる範囲内であれば良いが……


「最近、北の交易品が変わりまして——」


 ああ、やっと聞きたい話題となったか……


「元々の数も多くなく、鍛冶師連中がすぐに買い占めてしまうので私もまだこの目で見たことはないのですが……」


 質が良いとは聞いていたが、それほどのものなのか?


「ただ、この噂が広がり始めた頃から、そちらの軍の動きが変わったとの噂が聞こえましてね」


「軍の動き、ですか?」


 レヴァン商会から目線がくる。

 軍の情報を不用意に国外へ流すわけにはいかない。迷うのはわかるが、そこはいつも通りの雑談としてもらえたら構わないのだが……


「軍の小隊がいくつかこちらに流れているとか……」


「いえ、ここまでは来ておりませんが……」


「その件で詳しくお話をお伺いしたい」


 そこまで聞き役に徹していた者が動く。

 ……交渉は軍関連か。これは自分でも手に余るかもしれん。

 小さく息を吐きながら受け答えを引き継ぐ。


「軍の話となりますと、セラディアでは軍を保有していないため、全て他領の話となります。こちらからお話しできる内容はかなり限られますが……」


「では、今動いている軍に関してはどのような目的かはこちらでは把握されていない、と?」


「……他領の話となりますので、推測はできます。あくまで推測ですので、それが正しいとはお約束できかねます」


「……推測で構いません。お聞かせ下さい」


 推測で話すとなると、そちらとそこまで差異があるとは思えないが……


「我が国とドゥルガルドで戦争があったことはご存じですね?」


「もちろんです」


「では、その際に交わされた条約については?」


「不可侵条約が結ばれたことは把握しております」


 頷きで少し間をとり、続ける。


「その条約の中で、大規模な兵力の展開が禁じられています。ですので、ヴァルカディアンの軍を分割し、その軍を軍侯貴族のない北方へ配置されたものと考えられています」


「それが今、西から東へ流れている軍だと?」


「はい。大規模の展開ができませんので、小隊規模での移動になっているものと推測されます」


 大規模にできないから補給も持たせられないのだろう。実際に通過する村で接収が行われている。その時に出ているのが『ヴァルカディアン』と『皇帝命令』だ。さすがに皇帝命令である情報は、ここでは出さないが。


「……その軍が集まってルドニア公国まで流れてくる可能性は?」


 ないとは思うが、軍をまとめているのはヴァルカディアンだ。

 ヴァルカディアンが何を考えているのかまでは……わからないな……


「可能性は低い、とだけは……」


「我々としては、その移動の目的を把握したい」


 さすがにそれは自分の手に余る。


「そして可能であれば、ルドニアへ向けた軍事行動ではないとの確認が欲しい」


 そこまでいくと国の外交問題だ。商会の会話として進める話ではない。


「……それは、私からではなんとも申し上げられません」


「ではその判断ができる方へ繋ぎをとっていただくことは?」


 国を通さず、わざわざこのような場で話に出すということは非公式にすませたい、ということだろうな。


「上に確認を取らせてください。返答は、レヴァン商会経由でフェルン商会へお伝えする形で構いませんか?」


「はい、本日のような会合が可能であればお願いしたい」


「承知いたしました。少しお時間をいただきます」


 こちらは情報を得るつもりだったのだが、ずいぶん話が大きくなったな……ここで不用意に約束し、それを外交問題にしてしまえばドゥルガルドとの開戦前と同じ失敗になる。慎重すぎるくらいの扱いをしなければいけない情報だ。


「ああ、ご挨拶が遅れました。私はルドニアで外交を担当しています、エドガル・ルーヴェンと申します」


「ご丁寧にありがとうございます。私はセラディアで対外窓口を務めております、ラウル・ディアスと申します」


 商会の人間ではないと思っていたが、外交担当本人か。ルドニアは想像以上にこの件を重く見ているらしい。

 しかもルーヴェンと言えば、ルドニア公国の子爵だったはずだ。これはセラディア内で対応するにしても主人に出てきてもらわないといけない案件だ。

 面倒なことになったと、心の中で盛大なため息をついた。



 急ぎセラディア邸へと戻り、執務室の扉を独特のリズムでノックする。返事を確認したら中に入り、扉に鍵をかけた。


「ルドニア公国から流れていた質の良い鉱石についての情報を得るために、商会の会合へ行ってきました」


 コンッと机が叩かれる。


「その件に関してはエルヴァリエルから流れている品だという程度の話だけでしたが、その席で最近北に流れている軍の話となりました」


「軍? ヴァルカディアンか?」


「はい。ルドニア公国は今、北に流れている軍がルドニアへ向けた軍事行動ではないと確認が欲しいそうです」


 そのまま深く思案に入ったようなので邪魔しないで待つ。

 再び机がコンッと叩かれる。


「相手は?」


「外交官のエドガル・ルーヴェン様です」


「正式な外交官であればなおさら、ルミディア伯に任せる案件だ」


「では、ルミディア家へ引き継ぎます」


「同席して情報だけは取れ」


「承知いたしました」


 一礼して扉を開け部屋から出る。

 相手が非公式を望んでいる以上、まずは情報部同士で連絡を取り合い、ルミディア伯にお越しいただくのが良いだろうな。

 同席するのであれば、こちらで席の設定ができるように操作しなくてはいけない。であれば、直接会って話すよりは書状でのやりとりが良いだろうな。

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