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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
ドラグナール帝国

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第71話 ガル4

 前回と同様、ヴァルカディアン領の郊外でグレイヴン商会と合流する。


 積む前の荷を見ると、前回より荷の量が増えているようだ。やはり前回の量では足らなかったのだろう。

 商会員たちは馬車の空いた場所へ、とにかく荷を積んでいる。その様子に思わず眉が寄る。

 そんなガルの表情に気がつき、ハルトは苦笑を浮かべながら提案してくる。


「ガル、護衛の依頼とは別に荷の積み込みを手伝っていただけませんか?」


「……ああ」


 手を出す許可が出たのならさっさと気になっていたところを直していく。新たに積もうとする荷はどのように置くか指示も出す。

 荷の積み込みが全て終わったところで、自分で一通り縄の張りを確認して満足気に頷く。

 これなら途中で荷崩れすることはないだろう。

 もはやレイスも呆れた顔をするだけで何も言わない。


「ガル、ありがとうございます。出発しましょう」


 ハルトはガルの特技の一つくらいに考えているのか、特に深くは突っ込んでこない。それはそれで助かるが。



 道中は前回と同じ道を辿っていく。

 特に問題もなく順調に進んでいたのだが、峠を越えた翌朝、どうにも気になることがあった。


「おい、荷を確認しろ」


「え?」


「三台目、箱か袋が損壊したか? 軽くなってる」


「……え? そんなこと、わかるんですか?」


 商会員たちも怪訝そうに荷馬車を見上げる。ハルトはガルの指摘をそのままにしておくわけにもいかず、商会員に荷の確認をさせる。


「特に異常はありません」


 商会員の報告につい重ねて聞いてしまう。


「中の重量もか?」


「外側に異常がなければ中は変わらないと思いますが……」


「……そうか」


 ハルトの困ったような返答に一応の納得を返す。

 普通の損耗にしては減り方が大きい気がするが、またこの量で減らなければ問題はないだろう。

 これ以上減るようであれば、何かしらの対策は必要になるが……それは俺の仕事ではないからな……

 ガルはため息を零して気を紛らわせ、護衛へと戻っていった。



 最初の村に着くと、すぐに村長が出てきて歓迎される。


「ああ、よかった。待っていたのです」


 村長の話によると、あれから兵が何回か来て荷を徴収していったらしい。三日ほど前に兵が来た時に預けた荷が全てなくなったそうで、次に兵が来た時にどうしようかと悩んでいたようだ。


「王命で動いているから協力してくれ、と来るのですが、ないものは出せませんから困っていたのですよ」


「それは間に合ってよかったです」


 ハルトが笑顔で村長と話す間に商会員たちが村の倉庫に荷を運び入れていく。


 村長は馬車に残っている荷を見てもう少し入れて欲しかったようだが、他の村にも届けなければいけない。

 また来ると約束して次の村へと向かった。



 他の村でも助かったと歓迎された。前回、一度は荷の預かりを拒否した村長ですら村の出入口まで出てきて迎え入れるほどだ。


「少々気の荒い兵が来てな」


 村長はそう言いつつ、ちらりとガルの方へと視線を向ける。


「あの男よりはマシだったが……」


 小声で聞こえた気がするが、あんなのは優しいほうだ。本当に気が荒い連中はまず暴れる。村人が無事な時点でそこまでおかしな奴ではなかったのだろう。



 前回と同じくこの村で荷を預けるのは最後となる。

 倉庫に積まれた荷を見て、ガルはぽつりと呟く。


「やはり減っている……」


 今まで村の倉庫に積んできた荷を頭の中で計算していくと、どうにも塩や干し肉、油など、軍が生きていくのに必要不可欠な物が足りなくなっている。前回の量でもぎりぎりだったことを考えると、次は早めに来ないと補給が完全に切れる。

 レイスをちらりと見る。

 この荷の依頼主とレイスの雇い主はおそらく同じだろう。報告として上げてもらうか?

 ……全く動かないよりは、よいだろうな。


 少し離れた場所でハルトが帳簿を閉じる。

 その手つきだけが、わずかに硬かった。



 ヴァルカディアン領郊外へ戻り、ハルトから報酬を受け取って解散となる。

 レイスとの別れ際に報告へ追加して欲しい内容を伝える。


「このままでは補給が切れる」


 レイスの表情がわずかに硬くなる。


「……俺を知る人物ならそれだけで伝わる。一週間は前倒しで次を出せ」


「……伝えよう」


 ガル――いや、サルクは深く息を吐き出す。

 気配がなくなったのを確認して、サルクとして退屈な時間へと戻っていった。


 ガルとサルク。

 どちらが虚構なのか、わからなくなりそうだ。




 ヴァルカディアン邸の執務室でレイスが護衛の報告をする。


「補給が足りない?」


「カルヴァスの言葉では『一週間は前倒しで次を出せ』とのことです」


「一週間……抜くにしては多いな」


「……殺しますか?」


「補給が潰れる。カルヴァスに調査と対応をさせろ」


 補給のことだけに絞れば、こちらの予想よりも使える動きをしている。

 あれなら殺さず、上手く使えるように動かすだろう。


 飼い殺しにしたはずの男が、まさか誰よりも早く補給の危機を察知してこちらに警告してくるとはな。皮肉なものだ。


「北に流した兵の様子は?」


「体調不良者が若干名出ています」


 やはり駐留地は必要か。

 だが、帝国内には作れない。

 ならば——


「エルフの森の外縁部に廃村や狩猟小屋は?」


「……いくつかあります」


「いつでも消せる商会に建材を運ばせろ」


 地図を広げて場所を示させる。示された中から補給物資を置かせている村に近い場所を選んでいく。


「この廃村とここにある狩猟小屋、その二つが終わったらこの空き地」


 駒を置いて、整備する場所を示す。


「野宿よりは休める程度でいい。小屋を作れる者も連れていけ」


 これで運用は安定するだろう。

 小屋で数日滞在する程度であれば条約にもかからない。そもそも帝国内ではない。

 北方へ流した兵、補給村、商会、その全てに目を配るには影の数が足りない。少し兵から回してどちらでも動けるような育成が必要だな。

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