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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
ドラグナール帝国

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第51話 ベルグリム戦1

 ヴァルカディアンから放たれた六つの影が山の木々の間を走り抜けていく。山道には誰の姿もなく、周りは鳥の声しかしない。


 妙だな。収穫が始まってからは商人の行き来があるとの話だった。商人は町へ避難させたとしても警戒の兵がいてもおかしくないはずだが……


 道中は誰もいないことを確認しつつ一時間ほど走るとベルグリム村が見えてきた。村と言っても中央以外は廃村かと見間違うほどボロボロの家が立ち並んでいる。

 そして今、誰もいないことでさらに寂しい風景と化していた。手分けして家の中の気配も確認していくが、全く生活感もない。家財もあらかた運び出されていた。


 山へと近づくと立派な門構えとなっており、その前は五人の騎士が見回りをしているようだ。人の気配はその騎士の分しかない。


 手信号で合図を送り、村の入口付近の家に集まる。


「誰もいないな?」


「見回りをしている騎士だけです」


「やるか?」


「いや、もうすぐドラッケンの斥候がくる。この状況を報告させる」


 斥候に騎士の死体を見せればすでになにか起きたと勘づかれてしまう。斥候が分かれて残るようであれば騎士と一緒に始末してしまえばいい。

 散開して各々で身を隠し、ドラッケンの斥候が帰ったのを確認したらまた集まることとする。


 二時間ほど待つと三人の斥候が到着した。


「なんだ? 村にも誰もいない」


「いや、奥に騎士の姿が見えるな」


「見つからないように注意しろよ」


 一般的な練度の斥候だな。普段から諜報を行うような動きではない。


「騎士は……五人か?」


「中にいなければ五人だな」


「戦争中に見回りが五人? 少なすぎない?」


「道中も村も誰もいないし、罠か?」


「それを判ずるのは大将だ。報告に戻るぞ」


 まとまって山をおりていく。状況のおかしさを感じているのに状況観察の人員を置いていかないところはなってないな。

 残ったところで殺して状況は伝えさせないが……



 ドラッケンの斥候は引き返してくることなくまっすぐに戻っていったようだ。


「もうやってもいいよな?」


「いいが、騒がれないように一斉にやれ」


「ちっ、了解だ」


 軍隊を組んでいる騎士を潜り抜ける必要がある時のために好戦的なものも連れてきたが、この状況では失敗だったな。確保の時に邪魔にならなければいいが……



 音を立てないように忍び寄り、手信号の合図で一斉に騎士を落とす。三か所ある入口にそれぞれ分かれて他に騎士がいないか確認をしていると、壁の花から棒が飛び出してきて通路を塞いだ。


「なんだ……これは……」


 ただの畑ではないのか……そういえば確保対象にドワーフもいたな。だとしたらこれはドワーフ製と考えられる。厄介だな。


 とりあえず手持ちの武器で棒を斬ろうと試みる。だが金属音を響かせるだけでまったく揺るぐ気配もない。何度か叩きつけるように斬りつけるもこちらの刃が欠けるばかりで傷もつかない。


「これは、アダマンタイトですね」


「壁の接合部分は?」


「ミスリル合金です」


 仕掛けとしては単純だが、ドワーフが関わるだけでこうも強固なものとなるものなのか……


「解除する仕組みがないか探せ」


「騎士の持ち物を確認しろ」


 転がしている騎士の死体を漁り、揃いで出てきたのは武器以外では緑の水晶だけだった。


「これを持って近づいてみろ」


「……だめです。反応しません」


「建物の中に一つだけ開かない箱があります」


「それなら壊せないか?」


 金属を叩く音が響くばかりで開いたという声は聞こえてこない。ハンマーがわりに岩も落としているが、まったく壊れる気配がない。


「もしかしてこれもアダマンタイトとか言わないだろうな?」


「色も黒いですし、ありそうですね」


 普段なら技術の無駄遣いと思うのだが、攻め入る側から見ると効果的だ。

 失敗したな。騎士は一人生かして残しておくべきだったか。このままでは任務が達成できない。どうしたものか……



 アルセラが部屋で、村人たちが普段と違う環境でも快適に過ごせるようにと遠隔操作からいろいろといじっていたら突然アラートが鳴った。


「あら? 壁のガーゴイルが全部作動している?」


 え? まさかここに攻めてきたの? こんなところに? 誰だろう?

 こういう時って防犯カメラみたいな、遠くから覗けるような仕組みが欲しくなるわね。んー……ないものは仕方がない。

 光の精霊に姿を消してもらうと出口の方へと向かう。


「……アルセラ様? どこに行くのですか?」


 森から出たところで、見張りをしていたトビアスに呼び止められる。

 あら? あたし、今姿を消しているわよね?


「壁のガーゴイルが作動しているから様子を見にいきたくて」


「そういうのはご自身で行かずに我々に命じてください。なんのための護衛だと思っているんですか?」


 それはごもっとも……でも気になるじゃない。


「せめて一緒に連れてください」


「前に出ないでくださいね」


 トビアスとカイルに前後を挟まれて歩くことになった。だから、なんで二人ともあたしの位置が正確にわかるの?


「ずっと姿を消しているのを見ていたせいか、なんとなく気配がわかるようになりました」


「それはそれですごいわね……」


 そうか。騎士様にかかると気配を感じるようになるのも早いのね?

 む……この二人を出し抜こうとしたら風の精霊にもお願いして気配も消さないといけないわね。今度やってみようかしら?


「どうやって置いていこうかとか考えなくていいですからね?」


「そろそろちゃんと護衛の仕事をさせてください」


 エスパー! エスパーがいるわ! 顔すら見てないのに!

 でもよく考えたら結構な時間を一緒に過ごしているのよね。常にべったり側にいるわけではないとはいえそれなりに近くにいるわけで、考えそうなこともわかるようにもなるか。

 っていうかこの二人、いつ休暇をとっているのかしらね? 夜も動いていることが多いし、騎士職って結構なブラック環境なのではないかしら?

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