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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
ドラグナール帝国

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45/126

第45話 砦戦1

 ヴァルカディアン当主、アルドレウスが執務室で書類を片付けていると一つの報告が入ってきた。


「ドラッケン、カルヴァス共に領地を出立しました」


「準備は?」


「整っております」


 頭の中で領周辺の地図を描き、何日かかるか計算する。行軍であればどちらも五日といったところか。


「三日後に出る」


「はっ! 三日後に出立」


 短く復唱して部屋を出ていくのを見送り、今回の作戦をもう一度頭に描く。


 予定通り皇帝容認の元で開戦となった。

 地理的にヴァルカディアンが動くことには全く違和感はない。たとえ反対していたとしてもだ。反対していたからこそ積極的には攻め入らず砦のみ占拠すると公言して違和感を抱かれることなく受け入れられている。

 砦を落としたらすぐに影を畑に突入させて、鍵となるエルフと可能であればドワーフも確保させる。他の奴らは箱である畑の占拠しか見ていない。鍵をこちらが確保してもそれが発覚するのはずいぶん後の話だろう。


 どのみち目標のベルグリム鉱山は狭い山道の先にある。行軍の利はなく、たとえ占拠に成功したところで逆に攻め落とされれば痛手になる。

 アルドレウスは軍を無駄死にさせるつもりは全くなかった。


 だが、影をドゥルガルドへ入れ、鍵の確保後に秘密裏に国内へ通すにはバルディウス関門の砦はヴァルカディアンだけで占拠している方が都合がいい。砦戦での損耗は目標確保のためと割り切る。


「ドゥルガルドは何日持ちこたえてくれるか」


 数で押せばたやすく落とせるだろう。だが早く落としすぎるとドラッケンとカルヴァスが間に合わない。

 じわじわと波状攻撃を仕掛け、こちらの損耗は少なくした上で相手の疲労を誘うのが良いだろう。


「三日、持ちこたえろよ」


 作戦の成功しか見えず獰猛な笑みを浮かべる。

 鍵を入手したらどこに作らせようか。戦争よりも先の構想の方が進むアルドレウスだった。



 バルディウス関門はドラグナール帝国との国境にある砦だ。普段は入出国のチェックをするくらいが仕事で、500人ほどの騎士がつめている。

 ドラグナール帝国で軍が集結しているとの報があり今は800人ほどとなっているが、軍に対応するには心もとない人数だ。だが、正式な戦争ではない以上は挑発と受け取られる人数を砦に集めるわけにはいかなかった。


「斥候からの連絡は」


「きていません……潰されていますね……」


「だがこれ以上の人数は割けない。いつでも出られるように準備はしておくように」


 ただでさえ少ない人数だ。一人でも多く砦に残さなければいけない。

 だが斥候が潰されているということは敵はすでに緩衝地帯に入っていることを意味している。


「規模が読めないのがつらいな」


 規模を知らされたところで絶望的な人数差であることは容易に想像はできる。国境を守るために強固に作られた砦と騎士たちを信じるしかない。



 斥候の確認をして数刻経った頃、ついに見張りから声が上がる。


「ドラグナール帝国の軍影見えました。旗印はヴァルカディアンのみ。兵は……およそ8000!」


 この時点で十倍。確実にここは落ちる。

 司令官はこの戦力差でどこまでもたせられるかを計算する。撤退させるタイミングを見逃してはいけない。


「……時間を稼ぐぞ。門を閉じろ! 規模を知らせる伝令を複数走らせろ」


 時間を稼いでいる間に騎士についてきていた家族など非戦闘民を逃がす。ドラグナールも執拗に追ってまでそちらには手を出さないはずだ。


「弓兵の配置は」


「終わっています!」


「工兵きます!」


「投石と弩で数を減らせ」


 まずは1000ほどの工兵で攻めてくるようだ。だがこの工兵の数でさえこちらにいる騎士より数が上だ。近づかれる前にどれだけ減らせるかが鍵となる。


「くそっ、壁に取り付かれた」


「落とせ、落とせ!」


 とりついた敵から優先して弓を放って落とす。弓が届かないところにかけられたものは上から岩を落として梯子を破壊する。

 すぐそばに山があるから岩ならいくらでも補充できる。滑車で岩を次から次へと上げてはそれを落とし、または投げる。できる範囲でとにかく数を減らしていく。

 数人に登られたが内部に入られるほどではなく撃退はできている。工兵が抑え込まれているのを見てか、追加の歩兵は出してこないようだ。まもなく日が暮れる。


 空が赤く染まり始めた頃、ドラグナールは引いていった。砦全体に安堵の空気が流れる。


「被害状況の報告を」


「20人ほど重軽傷を負いましたがポーションを使用して回復済みです。死者はありません」


「砦の損傷は軽微。守りに影響はありません」


「そうか。今のうちにできる限りの補給を」


 ほぼ被害なしでの撃退成功に騎士の士気は高い。これであれば時間は十分に稼げるだろう。ただ……


「……何日もつか……」


 この人数差で勝てるとは思っていない。先の攻撃もただの様子見だろう。だができる限り時間を稼ぎつつも一人でも多く生かして逃さなければいけない。

 難しい状況を表すように日が暮れていった。



「バルディウス関門にドラグナール軍が到達。ヴァルカディアンのみの構成で数は8000です」


「始まったか……」


 ヴァルカディアンだけで絶望的な数だ。砦は確実に落ちるだろう。


「王都に伝令を走らせろ。セドリック、打ち合わせ通りだ」


 短く返事をしてセドリックがベルグリム村へ向かう。

 地下農業迷宮で安定した収穫が始まってからベルグリム村には商人が買い付けにきている。まずはそれを逃がさなければいけない。それが終わったらベルグリム村の住民は地下農業迷宮へと退避させる。


「アルセラのおかげで村人はなんとかなりそうだな」


『国境戦になることがあると伺っていましたのでいざという時の避難所としても使える想定にしています』


 地下農業迷宮を展開したときのアルセラの言葉が浮かぶ。本当にアルセラの先見には助けられている。ここまで早く使うことになるとは思ってもいなかったが……

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