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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
ドラグナール帝国

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第44話 回復ポーション

 辺境伯邸で慌ただしく騎士の調整が進められる中、地下畑ではいつも通りののどかな光景が続いていた。ただある一か所を除いて……


「剣と胸当てを、それぞれ1000……ですか」


「はい、納期は設けませんができる限り迅速な制作をお願いします」


 セドリック様が直接鍛冶場にきて、急ぎで大量の剣と鎧の発注をする。それはつまり戦争の準備なのではないだろうか?

 だがここでは実質作業員は一人だ。納期がないとはいえさすがに1000ずつは多い。


「おい、少しなら手伝うぞ」


 エドガーがどうしたものかと答えあぐねていたら、珍しくグランダルから声がかかる。


「汎用品製作も基礎の積み重ねには必要だからな」


 基準はそこのやつが作っていたのでいいんだろ? と聞かれたから頷いておく。


「ふん、一般的なものだな。ブラム、ドリック。精度を落とさずに手早く作る練習だ。やれるな?」


 一般的な剣や鎧はドワーフにかかると練習扱いらしい。それでも人が作るよりもいいものが出来上がるだろう。だが正直助かった。さすがに1000ずつ、合計2000も打てるとは、とてもではないが言えなかった。


「承知しました。できる限りで早く進めます」


 ドワーフとのやり取りも見ていたセドリック様は満足げな表情をして戻っていった。さて、こちらも作業を効率化して進めますか。



 辺境伯様から剣と鎧の大量の注文が入ったことで作業を分担することになった。

 エドガーさんが鋼を調合して鋳型に流し荒く形を整えた後、マルクスさんがそれをひたすら叩いて成型していく日々が始まった。

 同じ見習いのレオンさんはエドガーさんとマルクスさんの炉の管理を手伝っているため、ヨハンは材料や水を運んだり、精製の際に出たスラグを片付けたりしている。

 ただの手伝いでもこんなに忙しいのだ。剣や鎧を打っているマルクスさんの忙しさは半端ではない。


「ああ、くそっ。打点がズレた」


 マルクスさんは普段は完璧に次から次へと製品にしていくのだが、疲れが溜まってくるとミスが出るようだ。このようなぼやきが多くなる。


「休憩を入れませんか?」


「……いや、すぐに打ち直す。水を持ってきてくれ」


「はい!」


 大した手伝いもできないのは歯がゆいのだが、うまくいく時とそうでない時、その両方を見ていてもどう違うのかわかっていない。今の自分にできるとわかっていることだけを精一杯こなしていく。


「ヨハン、鉄の補充をお願いします」


「はい、ただいま」


 さっき持ってきたと思ったのだけど足りなかったのだろうか? こういうのも言われる前に気がつけるといいのだけどな。

 素材部屋に行き、ゴーレムに大量の鉄を持たせて運んでくる。

 炉に近づくとエドガーがレオンに温度管理の指導をしているところだった。


「レオン、この火で鉄を入れていいと思いますか?」


「……いえ、まだ早いと思います」


「では火の調整をお願いします」


 エドガーさんは満足げに頷くとレオンさんに火の調整を任せて先に作っていた鋳型の形を荒く整えていく。

 同じ見習いなのに作業を任されていてレオンさんはすごいな。

 ちょっと羨む気持ちにもやっとしながらも、材料運びだって立派な仕事と作業に集中するべく思考を切り替えた。



 アルセラは地下畑が順調に回り始めてからはかなり時間に余裕ができたため、当初のダンジョンを作った目的でもある錬金を楽しんでいた。


 まずは基本よね、と久しぶりに回復ポーションを作っていく。初級、中級と順調に作ったところで手が止まった。


「ああ、やっぱり上級ともなると魔物素材が必要なのね」


 マジックバッグに乱雑につっこまれていた書きつけを見ながら唸る。

 生体生成がうまくいっていない以上、ダンジョン内で魔物素材を生み出すのは難しい。どうしたものかと思案する。


「魔物素材を使わずに上級の回復ポーションと同じ効果のものを作れないかしら?」


 そもそもなぜ魔物素材が必要なのかがわかればなんだかいけそうな気もしてくる。

 次の特級の回復ポーションの材料を見ながら代用品を考えていく。霊峰などで採れる魔力純度の高い鉱物が使われているのを見て、魔力の高い鉱物が生み出せれば代用品になるのかしら? と研究を重ねることとした。



 後日、辺境伯様から依頼されていた時間遅延のない通常のマジックバッグを引き取りに来たセドリックさんに、練習で作った初級と中級の回復ポーションを渡すととても喜ばれた。


「ちょうど不足していたので助かります」


「練習で作ったものなので効果はあまり保証できませんけどいいですか?」


 アルセラにはドラグナールが侵攻の準備をしていることを伝えられていなかったため、なぜポーションが不足しているのかはわからなかった。だけどせっかく作ったのだし、役に立つのであれば使ってもらうのがいいだろうと、特に理由を気にすることはなかった。

 納品するマジックバッグに作った初級、中級ポーションそれぞれ100本を詰めて渡す。


「中級までなら材料はダンジョンで生成できますから、まだ必要なら教えてくださいね」


 この時のアルセラにはもう一つ知らないことがあった。

 ポーションを作る際にアルセラが参考にしていたのはエルフの古代遺跡から出たレシピである。現在の一般的なレシピとは異なり、魔力の高いエルフが作ることを前提としたレシピだ。そしてその効果は現代のポーションを基準にすると初級で中級、中級で上級と一つ上のランクと同じ効果があった。

 当然それを持ち帰った辺境伯邸では大騒ぎとなり、また辺境伯と王が扱いと報酬に頭を悩ませることになったのはいうまでもない。


 とりあえず今は戦争準備中ということもあり、アルセラの厚意に甘えて無理のない程度に量産してもらうことになった。正式な対価の話は後回しとして……

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