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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
地下農業迷宮

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第36話 鍛冶場1

 辺境伯と王がアルセラからもたらされたマジックバッグに翻弄されている頃、地下畑では追加の人員が入り、耕すスピードがかなり加速していた。

 トーマスとハンスが耕し方を教える一方で初期から作業に入っている作業員たちは種まきを進めていく。

 畑が広がってから五日経つ頃には広がった部分も含めてすべての畑が種まきまで終えることができた。ただ収穫したばかりの葉物と麦の半分は収穫時期をずらすために十日ほど種まきを待つことになった。



 一方でアルセラはミツバチのテスト運用が済んだと判断して各階に配置していく。

 ミツバチは階層をまたぐと帰る場所を見失うらしく、活動場所は階層をまたがないように設定を直した。各階層にメンテナンス用の魔法陣を設置し、最初のクローンはミアにそれぞれセットしてきてもらう。

 エネルギーを流した後もしばらくは定期的に目視観察を挟んでもらい、うまくいっているかデータをとっていたが、とりあえず順調なようだ。


 果物も全ての種類で急速生育が止まり、一週間ずつずれるように設定を変えていった。それぞれ種類別に壁も設置して、一年の周期に合わせて気温が少し変動するようにも設定してみる。

 見晴らしはかなり悪くはなるが、外の環境に近くなることで植物へのストレスはかなり軽減されるだろう。

 通気口の名目で壁には小さな穴があいており、ミツバチたちは通れるようになっている。


 そこまでのエネルギーデータを揃えて、この先の運用試算をはじき出す。


「うん、問題なく鍛冶場も採掘場も作れるわね」


 鉱山として外に搬出するほどの採掘量は見込めないが、中で鍛冶をして有事の備蓄を増やす程度なら運用は可能であろう。

 大まかに試算データを書き起こして辺境伯様宛に鍛冶場が運用可能であることをまとめた報告書を作成する。カイルに届けに走ってもらったらそのままセドリックさんがきて打ち合わせすることになった。


「無事に鍛冶場ができそうで助かりました。王都からドワーフが手配されたのですが、どうやらドワーフが鍛冶場完成の報を待たずにすでに出発しているようなのです」


 ……人の話を聞かないドワーフらしい行動ね。


「セドリックさんはドワーフの性質に関してどれくらいの知識がありますか?」


「鍛冶に関する知識は最高峰ですが、気に入った場所、人にしか寄り付かず、気が向かないものには一切関心を示さない、といったところでしょうか」


 うん、とても簡潔かつ正確に把握しているわね。


「そんなやつらだから、依頼を確実に受けてくれる人間も鍛冶場に入れたほうがいいですよ」


 一緒に作業する人はとても苦労するでしょうけどね。


「鍛冶場の人たちは住み込み前提で来ていただきますよね?」


 じゃないと情報だだ洩れになりそうよね。国防を考えると鍛冶場の情報は一番厳しくしたいところだろう。


「そうですね。その予定です」


 なら住居も作業する場所も人とドワーフで分けられるように設計しないといけないわね。うーん、人は休憩所まで食べに行くだろうけど、あいつらは休憩所使うかしら? というか使ったら使ったで酒盛りで盛り上がってうるさそうよね。


 鍛冶場の住居は長屋タイプで作る。家族で来ることになったら少しいじればいいだろう。ドワーフ側には飲食スペースを作って、酒樽を置いておけるスペースも作る。調理スペースは……必要だと言ったら作ればいいか。料理してるところなんて想像できないし。


「とりあえず人側は五人住み込みできるように住居を作ります。一人暮らし設計なので家族で入られる場合はお知らせください」


「わかりました」


 さて、人とドワーフが同じ空間で暮らすのってうまくいくのかしらね?

 あまりに雰囲気悪かったら壁で仕切って出入口を分けるくらいの対処は必要かもしれないわね。




 アルセラと鍛冶場の打ち合わせを終えたセドリックは村の鍛冶場に向かう。

 以前農具を届けてもらったエドガーを呼びだし、地下農業迷宮に鍛冶場ができることを話して中で作業するのによい人物がいないか聞く。


「ドワーフと共同での作業、ですか……」


 話を出すと難しい顔をして思案している。


「みんなドワーフの技術そのものには興味はあるとは思いますが、技術を持っている者ほど自分の矜持がありますし、つい踏み込んで質問してしまったりしてうまくいくかどうか……」


 ドワーフはあまり人に接触しようとはしないが、その技術と気難しい性格はとても有名だ。こんな田舎でもよく物語として語られて知られている。

 同じ場所で過ごす以上、技術よりもうまく付き合えそうな人柄で選ぶしかないだろう。


「見習いが多くなりそうですが、よろしいですか?」


「そうですね。おそらくこちらから依頼する、兵士が使う一般的な剣や鎧を中心に打っていただくことになります。それが一通りこなせる構成であれば見習いでも問題はありません」


「候補に考えている一人のマルクスは、ドワーフともうまくやれそうですし、いつも辺境伯様から依頼をいただいていた剣も鎧も打ったことのある人物です」


 すでに実績があるのであれば依頼は大丈夫そうですね。


「見習いの一人はとても目がよくて、最近火の扱いを教えている子がいるので一緒に連れていきたいのです。レオンは寡黙なので交流を図るのは難しいのですが、ドワーフ相手にはほどよい距離を保てるでしょう」


 あと一人は……と視線を巡らせ、一人を指し示す。


「彼、ヨハンですね。最近鍛冶場に出入りするようになった子なのですが、よく気がつく子なのですよ。レオンとは対照的なのですが、ドワーフには近づかないように言い含めておいたらちゃんと聞いてくれるはずです」


 地下畑にも興味津々なので話をしたら来たがると思いますと紹介してくれる。そしてあと一人はエドガー本人がくるらしい。


「すみません。ドワーフの技術に触れられると思うと譲れなくて……」


「その代わり責任者として苦労すると思いますがよろしいですか?」


「その点はできる限りで頑張らせていただきます」


 難航しそうだと思っていた人選はわりとすんなりと終わった。候補になった人にも地下に鍛冶場ができることは周りに話さないように口止めした上で勧誘を依頼してこの日の打ち合わせは終了した。

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