第30話 新たなゴーレム
階段型のゴーレムをサクッと設計して実際に組み立ててみる。
最低限必要な歩く動作に段差は引っかからないわね。はしごモードになった時に段差へ足をかけてもちゃんと地面と平行になっているし、左右どちらからでも上りやすい。
いいんじゃないかしら? 早速見せに行ってみよう。
フリードリヒさん、カール! はしごゴーレムできましたよ~!
「早いですね」
ゴーレムそのものは作り慣れているからね。外側を変えるだけだからすぐにできるわよ。まだ試作段階だから気になるところは遠慮なく教えてね。
左右の足の外側には高さ十八センチのやや低めの階段が作ってある。こちらは足をやや広げて立った時に地面に平行になるようにしてあるため、まっすぐに立っている時は階段は少し下を向いている。
足の階段が終わると背中部分に足がかけられて背中全体に階段を作っているため、その幅なら横移動もできる。頭の上は平らにして、背負い籠を置いたり座ったりできるスペースにしてみた。
どうでしょうか?
「手と足の四点で支えるので安定感があります」
「頭の上に持ち手があると体がふらついたときに掴まれるから欲しい」
普段もはしごの上に飛び出てる部分につかまっていたらしい。それは安全のためにもつけた方がいいわね。他にはないかしら?
「ヘレナ、エリーゼ。二人も一度登ってみてくれ」
フリードリヒさんの声にこちらへ寄ってきて二人で階段ゴーレムに登ってみる。
「二人で使っても全然ぐらつかないのね」
「乗ったまま位置を微調整することはできないのね」
人が乗ってる時は動かないようにしています。ぐらつかないように腕をつけて安定させているのに、動いたら危ないよね。
段差があるようなところでも少しなら肘や膝を曲げて調整は可能だ。今の果物畑に段差なんてないから問題はなさそうだけど、念のためにね。
「贅沢を言えば肩幅まで平らな場所があると物を置く場所が広くて便利そう」
ふむふむ。見た目よりも実用性重視だからありじゃないかな。では頭の平らな部分を広げて、持ち手をつけてきますね。少しお待ちくださいね。
数分後、階段ゴーレム試作二号を連れて戻ってきたら、すごく驚かれた。
「アルセラ様、ゴーレムがそんな早くできるなんて普通は考えつきません」
なぜそんなに驚くのか不思議に思っていたらすかさずトビアスからツッコミが入る。
え、そうかな? まぁ、いいや。
「見た目はともかく、使い勝手はどうでしょう?」
みんなで代わる代わる乗ってみて「便利そう!」と太鼓判をもらう。よっし!
「じゃあ収穫の頃には十体ほど揃えておきますね」
この試作二体も置いておくので使えたら使っていいですからね。
「アルセラ様、受粉作業の時にも使いたいので桃の花が咲く頃にはあると嬉しいです」
それもそうね。今の感じだと二日後には必要ね。もともとそれくらいには作り上げておこうと思っていたから問題なし。作ったらこの辺りの空き地に並べておきますね。
その頃、トーマスたちはトマトやナスに支柱を添えるために支柱用に育てられた植物を刈りにきていた。そこには見慣れない植物が所狭しと生えている。
「初めて見る植物だな」
「トーマスさんでも見たことがないのか?」
ないなぁ……でもこれなら太さもちょうどいいから加工は長さを調節するくらいで済む。
「こんな便利な植物があったとは……」
とりあえず一本切ってみようとノコギリを当ててみるが見た目の印象よりも硬く、繊維が刃に引っかかってなかなか切れない。試しにゴーレムに切らせてみるとすんなりと切れた。
どうやら刃の当て方にコツがあるようだ。どちらにしてもこの硬さだとゴーレムに任せる方が良さそうだな。
一体のゴーレムにはひたすら切ってもらい、もう一体のゴーレムには切った植物をゴミ捨て場の前に運んでもらう。
ゴミ捨て場の前では葉っぱ部分を切り取り、棒だけの状態になったものを集めておいて、さらに別のゴーレムに運んでもらう。
およそ百本くらいになったところでゴーレムたちを止め、みんなに支柱を当てていってもらう。植物に合わせて長さを調整してもいいのだが、長い分には困らないからそのまま使うことにする。
支柱の役割を軽く説明して、横に伸びた枝のどういうところに当てるのが効果的かもいくつか教える。あとは実際にやって覚えてくれ。
初心者にやりがちな、紐を力一杯に結んで枝を傷つけてしまうのだけは避けてくれればあとはどうにでもなる。
結ぶ時は細くても成長すると枝は太くなる。植物に当たる側はゆるい輪っかにしておくのが正解だ。ゆるい輪っかを作って両結びをして支柱にはきつく動かないように結んでいく。
あと注意したいのは支柱の差し方だな。浅いとすぐに倒れてしまう。だいたい三十センチくらいは差し込んでおかないといけない。
「そんなに深く刺すのか?」
「種を蒔く前に耕して畝を作ることで土が柔らかくなってるからな。浅いと実がなった時に実の重さで引っ張られて支柱が倒れる」
説明したらすぐに体重をかけて深く差してくれる。そんな感じでお願いします。
夜になり、アルセラ様に会えたから支柱の植物について聞いてみた。
「あれは笹竹という植物で、生える間隔によって太さが変わるのよ」
一メートルくらい開けて植えると太ももの太さくらいに成長するらしい。だからあんなに密集して生えていたのか。
「たけのこという、生えてくるときの芽がおいしいのよ」
あれを食べる?
「土から飛び出るほど伸びてしまうと、灰汁が強くなって硬くて食べられないのだけど、土の中にあるうちは柔らかくて灰汁もそんなにないのよ」
あれを太く育てて縦に割いて籠を編むこともするらしい。アルセラ様はどうやって編むのかは知らないらしく作れないようだが。
「うーん、五角形とかにするのは無理でも布のように編むことはできるかなぁ……」
後日、アルセラ様が作って持ってきてくれた見本は、とても……独創的な何かだった。
ただエルナとヘレナさんは見本から何か感じたらしく、竹を割いて作った薄くて柔らかい板を相談しながらいろんな形に編んで籠にしていた。編み方がわかったから大きく編んで収穫用の籠にするつもりのようだ。
後に竹板の細工が村人に知れ渡り、村の女性や足腰が悪くなった老人が編み始めたことでいろんな模様や形が考え出された。
それが話題となり、村の名産になっていったのはまた別のお話。




