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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
地下農業迷宮

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第28話 果物農家のとまどい

 私はフリードリヒ・アルトマン。男爵家の出だ。男爵といっても特にたいした収入になるものもなく、そういったものを探して広げる才能は皆無だったために、趣味でやっていた果樹園を残してすべてを失った。

 その果樹園も長く続いていたが後継者がいなくて引き取ったもので、木々がずいぶん老朽化して収穫量が落ちていたから若木を育て始めたところだった。


 そんな折に子爵様からお声がけをいただいて、同じ再出発ならと飛びついてみたのだが……


「それじゃあ、持ってきてもらった苗木と合わせて植えて、実がなるまで一日で一年経つように調整するわね」


 アルセラ様と打ち合わせをしているのだが、開口一番からよくわからないことを言いだした。

 一日で一年分育つ? どういうことだ。


「実がなるようになった種類から成長を緩やかにするから種類ごとに壁で区切りましょうか。そのほうが気温も調整できるからね」


 気温を調整……何を……どうやって?

 いや、ここにくるまでも階層ごとに気温がずいぶん違った。あれを果物ごとにやるということか?


 こちらが必死に情報を整理している間にもアルセラ様からは理解できない言葉が溢れてくる。いや、一つ一つの現象はわかる。どうしてそんなことができるのかが理解できない。

 一緒に説明を聞いていた妻のヘレナと顔を見合わせて固まっていると、アルセラ様の護衛騎士がそっと寄ってきてささやいた。


「なぜそうなるのかは深く考えないほうが良いですよ。アルセラ様ができるという現象が果物にとって最適かどうかだけをお考えください」


 ……なるほど……?

 他の野菜を育てている農家も作物と土の状態だけを見て、都合の悪いことはそのまま伝えれば調整してもらえる、と言っていたか……


「苗木が増えたからちょっと広げないといけないわね。どこに何を植えましょうか?」


 壁で区切って管理できるらしいけれど、こちらが考えるためには季節で収穫できる順にしておいた方が管理しやすいだろうな。早く実り始める桃から梨、ベリー系、木苺、胡桃、林檎、柑橘類の順にしてもらうか。柑橘類はまた種類によって季節が違うけど、土の管理はまとめておいたほうが楽だろう。


 そのように伝えるとゴーレムを使って桃の苗木を運び、等間隔に置いていく。


「このゴーレムの動かし方も覚えてくださいね」


「はい……木の間隔はゴーレムの両手を広げたくらい離して置いてください」


「あ、それはわかりやすいわね。GS31、この木を両手を広げた先に置いていって」


 アルセラ様が指示を出すと苗木を一本持って両手を広げてその先に置く。それをひたすら繰り返していく。十本ほど置いたら向きを変えさせて同じように繰り返させた。


「難しい単語はわからないから言葉を覚え始めた子供に話すように簡単な言葉を使って指示を出してね。これがなかなか難しいのよ」


 一度やれたことはそのまま繰り返すといいらしい。でもその動作を覚えているわけではないから止まった後に同じ動作を始めるためには同じように指示を出さなければいけない。


「置いた位置がよければ、GS32を使って苗木を土に植えさせてみて」


 そうだった。苗木を置いただけでは根付かない。これを植えていかないとな。えーっとスコップは……


「ゴーレムの手で掘ればいいからスコップはいらないわよ。こういう単純な力仕事は全てゴーレムに任せて」


「えーっと、GS32。この木の丸いところの大きさに穴を掘って、穴に丸いところを入れてくれ」


 指示をした通りにゴーレムが動いてくれる。少し離れたところで見ていたカールが僕もやりたいとGS33を連れてきた。


「カールは穴に置いたところに土をかけていってくれ」


 同じ作業をさせるよりも違う作業を任せた方がいいだろう。

 しかし子供というのは順応性が高い。GS33に「肩にのせて」と言い、肩車の状態で指示を出している。見ている親としては落ちないか心配なのだが、本人はとても楽しそうだ。

 ヘレナと娘のエリーゼも力仕事ではないのなら、と他のゴーレムを連れてきて二人で手分けをして梨の苗木を置いて穴を掘っていってくれる。

 桃の苗木を置き終えた時点で、アルセラ様は自分の作業へ戻っていった。まだ全部の種類を早く成長させるから壁は後日作るそうだ。場所が足らなくなったり困ったことがあったりしたら森の入り口にいる騎士に言えばいいらしい。


 四人で手分けをして植えていくと柑橘類を植える場所がまるごと足りなくなって騎士に連絡してもらう。

 すぐにアルセラ様が板のようなものを持ってこちらにきてくれた。


「柑橘類が全部植えられていないのね?」


 たしか種類がたくさんあったわよね? と確認されたから五種類あると答えた。ミカン、オレンジ、キンカン、カボス、レモン。

 それならばと元あった空間と同じくらいの広さが急に目の前に現れて何が起こったのかわからず、ただ呆然とその空間を眺めていた。


「ちょっと広めにしておいたから、空いた空間はそのままゴーレムの待機場にしたり収穫箱を置く場所にしたりして活用してね。何か建物とか作りたかったらまた教えて」


 なんとかカクカクと頷いて去っていくアルセラ様を見送った。


 わからないものを考えても仕方がない。柑橘類の苗木を植えていくか。同じようにまた並べるのと穴を掘るのを手分けしていき、最後にみんなで土をかけていく。


 この広さと苗木の多さなのに一日で作業が終わったことに驚いた。一つ一つの作業は単純だけど力はそれなりに必要だ。それをゴーレムに任せるだけでこんなに楽で早くできるものなのだと感心してしまった。


 夜ご飯を食べるために休憩所まで行く。

 アルセラ様が果物畑は一番遠いから、と移動のためのゴーレムを置いてくれた。一応椅子は作ってみたけど、振動がすごいから立つ方がおすすめと言っていたが、これは確かに座れない。

 カールなどは、ゴーレムに歩いてもらったほうが振動がなくていい、などと言っている。あれは高さがあるから心配でやめてほしいのだが、かなり気に入っているらしくやめなさそうだ。


 休憩所につくとアルセラ様がいらしたから、苗木は全て植え終わったと報告しておいた。


「なら今夜から成長促進をかけるわね」


 実がなるまでは成長具合を見ながらのんびりしてて、などというが……実がなるまでに収穫に必要なハサミや箱は用意しておかないといけないよな。

 トーマスさん、その辺りの手配の仕方を教えていただけますか?

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