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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
地下農業迷宮

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第25話 わがままは言ってみるもの

「今日はみんなで麦踏みだ〜!」


 リーナが朝から元気だ。

 麦踏みの説明を任せたことで無駄に興奮しているリーナだけど、ハンスさんたちは微笑ましそうに受け入れてくれている。


「ハンスさん、今日の作業はリーナが説明します。わかりにくい部分があったらエルナに聞いて下さい」


「いろいろと提出書類をまとめたいので、合間に進捗は見に行きます」


 普通なら子供に説明させるのかと文句が出そうなものだが、ここに来ている元鉱夫の人たちとリーナは仲がいい。特に問題も出ずにすんなりと受け入れられる。


「了解! リーナちゃん、よろしくな!」


「まっかせて! 麦踏みはみんなでやると楽しいの」


 楽しんでやってもらえるならそちらの方がいいな。

 さて、村人の増員と粉挽き担当の要請のためにも計画書をしっかり作ってくるか。




「レオナルト。どこかに移住してくれそうなドワーフはいないか?」


 王宮にある陛下の執務室で書類にサインを書きながら唐突にそんなセリフを投げかけられる。


「またなぜそのような考えになったのかお聞かせ下さい」


 今度は一体何を思いついたのか。陛下は思いつきでも楽しいと思ったことはすぐに取り入れていくから困る。


「王立地下農業迷宮に鍛冶場を作る計画があっただろう?あそこにドワーフがいたらいいじゃないか」


 ああ、あの金食い虫の王立地下農業迷宮ですか。とてつもなく大きい魔石を準備させただけでなく、宝石まで使いこんだ高価な畑。

 アレの収穫などまだまだ先だというのに。結果も見えていないところにまた国庫から投入しようと?


 会話の内容は重めだが、二人の書類を処理する手は止まることがない。


「収穫が始まれば確実にドラグナールが動く。ドラグナールとの国境でもあるバルディウス領を強化することは理に叶っているだろう?」


「ドワーフを囲い込むとなると相当な量の酒を毎日準備しなければいけません。それも含めて報酬はどこから出すのです?」


「あそこは王立だからここの予算からだな」


 今までもどれだけの税金が投入されていると思っているのか。報告書はすべて陛下決済だからご存じのはずですが……


「王立といえど直轄地ではありません。これ以上一つの領に国庫から出すと不満が出ます」


「鉱山を貸せと言った時に名乗り出ない方が悪い」


「最初から作った後に妨害や買収などの不正が起きにくいバルディウス領が最有力だったことも確かです」


 バルディウス領は何度か姫が嫁いでいる王家の血筋。鉱山の採掘量が落ちて領の勢いとしては衰退していたものの、権力としては公爵の次に強い。

 余計な横やりを入れさせないためにもある程度権力があるところでないと運用も難しい案件だった。


「王立の施設に王命で投資して何が悪い」


「物事はそのように単純でないことはよくご存じでしょう?」


 どうせ通すことになるのだから、ぎりぎりまでごねさせてもらう。それとは裏腹に頭の中ではドワーフの選定を進める。


 ドワーフか。鉱山の情報には敏感だから、今までいた鉱山が枯れはじめて次を探しているドワーフは話を聞かないだろう。そうなると一人立ちしたばかりでまだ山を決めていないドワーフか……候補はいるな。


「費用に見合う成果を出す保証は?」


「あるだろう?」


 まったく……その自信はどこからくるのか。たしかにドワーフであればある程度は保証されたようなものだ。そして候補に考えているあの男であれば問題なく成果は出すだろう。

 こちらが望んだ方向のものを作ってくれるかは、わからないが。おそらく口出しは許さないという条件は入れてくるはずだ。


「根拠がなければ揉めます」


「そういうのを通すのが宰相だろう?」


 簡単に言ってくれる。確かに文句を言ってきた時に言いくるめるための材料はすでに辺境伯から出ている。そして王命。不満は溜まるが通せないことはないだろう。その溜まった不満を解消させることが大変なのだが。


「承知しました。手配します」


 ドワーフの手配でこれ以上ごねてみせるのも時間の無駄だろう。いつ鍛冶場を作ると言ってきても良いように交渉は進めておかなければいけない。

 国境の地下にある機密性の高い鍛冶場。そこにドワーフ。確かに組み合わせとしては最善だ。

 こんな面白い案件ならグランダル・アイアンハンド。あれなら来るだろう。



 陛下からドワーフの手配要請があって数日後。レオナルトは王都にある鍛冶区画のある建物に来ていた。

 目の前にはドワーフのグランダルが腕を組んで立っている。


「地下に作る鍛冶場に来い、だと?」


「はい、まだできていませんが近いうちにできる王立の鍛冶場です」


 お互いに表情には何も出さない。見た目は淡々と話しているように見えるだろう。


「鉱石の質は保証します」


 グランダルが鼻で笑う。


「素人に保証されても信用できんな」


「そういう貴方だからこそお願いしています」


 グランダルが目をつむり考える素振りを見せる。だが、すでに心は決まっているのであろう。


「条件がある。それは守ってもらう。一つ、炉は俺が決める。一つ、口出しは認めん。一つ、素材が気に入らなければ出ていく。以上だ」


「全て了承します」


「返事が早いな」


「すでに検討済みの内容でしたから」


 グランダルが鼻を鳴らす。


「気に入らんが悪くない」


「では、鍛冶場が整い次第またご連絡します」


 互いに挨拶もなく背を向ける。ここで貴族のようにだらだらと挨拶を述べたところで、もはやこちらの声など聞いていないだろう。


「おい、お前ら。鍛冶場が変わるぞ!」


 気の早い。まだ鍛冶場はできていないというのに……これはバルディウス領にも使いを出しておいたほうが良いでしょうね。

 陛下からドワーフが送られます、なんて伝えたらどのような顔をするのでしょうね? 書簡で済ますから直接見られないのがとても残念です。

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