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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
地下農業迷宮

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第24話 それは常識ではありません

 今日は葉物野菜の間引きをしていく。できる限り離すように蒔いているとはいえ、実際に生えてくると密集しているものだ。

 さすがにこんなに早く間引きになるとは思っていなかったから間引きしたものを入れる箱が足りない。

 仕方がないからエーリカさんに大きめの木の皿を借りてそこに入れていってもらうことにした。どちらにしても抜き菜は出荷するのには向いていない。全て食堂で使ってもらえるよう話は通してある。


「いっぱい蒔いても半分以上捨てるんだな」


「市場に回らないだけで農家の間では食べますよ」


 抜き菜はまだ成長してないからすぐに萎れてしまう。見た目が保つのは馬車で一日程度だろう。見目よく整える手間をかけるよりも自分たちで食べた方が楽だから出荷しようとは思わなかった。

 成長が早い上にこの広さだ。今夜からしばらくは青菜のおかずばかりだと思うぞ。


「お、そのままでもうまい」


「食ってねぇで仕事しろ」


 うんうん、採りたてはうまい。あ、ホウレンソウはそのままだと渋いぞ。まだそんな育ってなくて若いから食べられなくはないが……


「お父さん、明日は麦踏み?」


「ああ、そうだな。春蒔きの麦はどちらでもいいんだが、これだけ成長が早いと倒れるかもしれないな」


「さすがにゴーレムちゃんだと重いよね?」


 いくら麦が強いとはいえ、その重量で踏みつけるのは……どうかと思うな。


「じゃあおじちゃんたちと麦踏みだ〜」


 リーナの楽しげな声にハンスさんたちがわけわからないままに合わせてくれる。ノリがいいな。


「そんなに楽しみにしてるなら、麦踏みを教えるのはリーナにお任せしよう」


「いいの? やるやる!」


 子供の成長を感じるのも嬉しくもあり、寂しくもあるな。ちょっと前まで『あれは? これは?』って聞いてから一緒にやっていたもんだ……


「追加の人員はいつ入れようか? ゴーレムのおかげで今は十分に人は足りているのだが……」


 この辺りは食堂の都合もあるし、セドリックさんやエーリカさんを交えて相談してからだな。理想は収穫が始まる頃だな。

 この成長速度だと一斉に収穫しないとあっという間に旬を逃しそうだ。


「……いや、なんか仕組みがありそうな気がする……」


 アルセラ様のことだ。当然と思っていて伝わっていない可能性がある。今夜夕食にきたところを捕まえて聞くか。




「それなら一番の食べ頃で一週間もつようになってるわよ?」


 やっぱり……当たり前のように言われたけど、それは当たり前じゃない!

 声に出さないように注意しながら心の中では盛大に反論する。やっぱりアルセラ様は常人の考えとはズレている。


「森の木なんかはある程度の高さまでは急成長するけど、その木の成木になったらほとんど成長しなくするのよ。その応用ね」


 だからですね。植物に合わせて成長速度を速くしたり遅くしたりは普通はできないものなんですよ。

 言っても不思議そうに首をひねるのだろうな。この人は……今も小さく首を傾げているし。


「使える機能があるなら、ちゃんと活用しないとね」


「……そうですね……」


 もう考えが別次元すぎて、理解しようとするとどっと疲れる。考えちゃダメだ。


 とにかく、収穫タイミングになったら急ぐ必要もないってことだが、広さが広さだから収穫が被ると今の人数では少し厳しいかもしれんな。

 成長が止まったものから順番に収穫して、空いたところを耕して畝にして……


「そういえば畑に肥料をまいてない?」


 しまった! ……いや、準備されてない時点でこれは……


「土は植物にとって万全の栄養状態を保持してるわ。地下畑のエネルギーが枯渇しない限りは肥料いらないわね」


 ……やっぱり……

 いや、肥料のことをすっかり忘れていたのはこちらの落ち度だから助かったけど。いろいろと規格外すぎる。


 他にも根腐れ防止のために設定水分になったら二十四時間は自然に乾燥させるとか、地面に根を張っていない植物は栄養に分解されて吸収させるとか、起きる現象はわかるけど仕組みのわからないものが出てくる出てくる。


「アルセラ様、すごーい!」


「えへへ〜、そうでしょ?」


 リーナが褒めると嬉しそうにしている。

 知識はともかく、こういう反応は子供だな。


 それはともかく、人数を増やすのはやっぱり収穫が始まり、次の作付けと並行する頃からだな。


「アルセラ様、土が万全の状態が保たれるってことは連作も気にしなくていいんですね?」


「大丈夫〜対策済み!」


 そうか……連作も知っているのか……もう何も言うまい。

 連作を気にしなくていいなら、収穫が終わったら同じものを作ろう。葉物はもう少し間隔を狭くして収穫量を上げるのもありかもしれない。

 小麦の収穫時期を割り出して、小麦粉にするのをここでやるのであればそれに合わせて作業者を手配してもらわないとな。

 ある程度は日持ちするとはいえ、早いところ加工した方がいいだろう。

 粉挽きはさすがに詳しく知らないことも伝えておかないとな。


「アルセラ様、明日は麦踏みをするんだよ」


「麦踏み! 楽しそうね!」


「リーナがおじちゃんたちに教えるんだ〜」


「それは責任重大ね!」


 アルセラ様がリーナを盛り立ててくれる。リーナは胸を張って得意げだ。とはいえ、麦を踏むだけの作業だからな。

 明日のリーナの監督はエルナに任せて、俺は書類作成するか。成長具合がおかしいから計画書も大幅に見直さないとな。


「アルセラ様、支柱を作るのに向いた植物って生やせますか?」


「生やせるけど、植物を使うと吸収されちゃうわね……」


 あ、そうか。根っこが生えてないと吸収されるのか。

 アルセラ様から「プラスチックはないし、石でコーティングは重いしあたしがいないと……」などとぶつぶつ漏れ聞こえる。考えを聞くと半分くらい知らない言葉が出てきて、一体どういう知識が詰まっているのやら。


「畑全体での植物吸収はやめて、ゴミ捨て場を作ってそこで吸収するようにするのが一番手っ取り早いわね。後で各階層にゴミ捨て場を作っておくわ」


 支柱を作るのはまっすぐに育つ植物ならなんでもいいかしら? なんなら加工もしておくわよ、と言うけどそこまで仕事を奪わんでください。もしうまくできないようなら依頼します。

 あ、支柱の木は二階層だけに作って下さいね。

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