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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
地下農業迷宮

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第23話 地下農業迷宮の悩み

 王立迷宮が畑として本格的に稼働し始めてから、入口には騎士が常駐している。

 今までも中にいるという護衛対象者についていた二人の騎士が入口にいたのだが、一人は中での護衛に移行、もう一人は連絡役で離れることもあるとのことで、護衛とは別に小隊で入口の警護を受け持つことになった。


 入口の主な仕事である認識証の配布は見習い上がりの新米騎士二人の仕事で、五時から十八時まで休憩をずらしながら配置につく。

 その監督と周りの見回りを三交代で回していく。朝番の騎士は6時から16時まで、夜番は二21時から翌7時まで、隊長の私は10時から二22時まで入る。この施設周りに人が増えるであろう昼間は人数が多くなるようにしたのだが、想像以上に寂れた村だ。

 ここをドラグナールが狙っているという話だが、こんな寂れた村を狙うのだろうか? たしかに鉱山を畑に変えてしまう技術はすごいと思うのだが。


 王立迷宮ではまだ収穫がないため、食堂のために毎日食糧の搬入がある。この搬入は辺境伯邸からきているため、日々の報告を兼ねて私が立ち会いをする。


「今日も変わりはありませんか?」


「平和なものですよ」


 王立迷宮に出入りした人数や勤務体系などを記録して日々報告書を整えてはいるのだが、大きく問題がなければ報告書の提出は免除されている。ほぼ毎日「変わりなし」の口頭連絡のみだ。


「お疲れ様です」


 王立迷宮からエーリカさんが出てきたから揃って搬入口へと移動する。


「はい、今日の納入分を確認しました。こちらが明日の依頼票です」


「作業員たちに問題はありませんか?」


「ええ、問題なく作業していただいていますよ」


「それはよかった。では依頼票はお預かりしていきます」


 二人とも笑顔でいつものやり取りではあるがなぜか私の報告の時よりも緊迫感がある。ほんの小さな違和感ではあるのだが、なんなのだろうな?




 エーリカは納入された食糧を荷車ゴーレムからおろして休憩所の冷所へと運び込む。

 作業員に問題がないか、と聞かれてもね。中で作業している動きや食事時の会話では特に怪しい動きはない。作業員たちは通いで来ているのだから怪しい動きをするなら外のような気がするのよね。


「失敗したな……私も通いにするべきだったか?」


 ただアルセラ様を守るには常に近い場所にいた方がいい。そう考えての迷宮に住み込みという選択だったのだけど。本来のスパイを見つけ出す任務をこなすには失敗と言わざるをえない。


「今さら通いにするわけにもいかないしね」


 なんとかするしかない。

 とりあえず今作業に入っているのは昔から村にいた人ばかりで構成されていて、本当に問題がないことは確かだ。

 怪しいといえば村に来ている行商人だけど、こちらはここに近づかないから詳しい情報は得られない。それは相手も同じだろう。

 行商人に内部の中枢情報を与えない状態を維持するには外で囀る村人からアルセラ様を隠したままにしないといけない。


「中に入る人数が増えてもこの状態の維持は完璧にしておかないとね」


 毎日のあまり変わり映えしない情報を何度も思い返してパターン化されたもの、そうでないものを分類して情報を精査していく。

 うん、やっぱり問題はない。しばらくは観察だけが続くようだ。



 引きこもって四日目。アルセラは悩んでいた。


「やっぱり魂が宿らない……」


 あと一週間もしたら実をつける植物の花が咲き始める。それまでにはミツバチを飛ばしたいのだが……体はできるのにまったく動く気配がない。


 クローンだから体のつくりは問題がないはずだ。

 人であれば血流を流すことで細胞を維持している。虫であっても体液があるのだから巡るはずだ。

 ダンジョンからエネルギーを少量流してみる。

 わずかに羽や足が動いたがそれだけだ。ただエネルギーが流れたことによる反動だろうと推測される。


 エネルギーと同時に「飛ぶ」という簡単な命令を込めて流す。すると、どう飛ぶのか詳しい情報は入れていないにも関わらず、羽を羽ばたかせて飛んだ。

 ただ飛んだのだが、壁に当たってもずっとまっすぐに飛ぼうとしている。当たる時の頭の角度によって右に逸れ、羽が壁に当たることで損傷して飛べなくなって落ちた。

 落ちた後も飛ぶ動作は続いていて羽が片側だけ忙しなく動いている。

 そこまで確認して流していたエネルギーを止めると、ミツバチの動きも止まった。


「命令に従っただけで考えてはいないわね」


 ただ飛ぶという本能はエネルギーだけで引き出せるようだ。それであれば女王バチを作って生殖行為を、と思ったところでそれなら生体をいれて養蜂するほうが早いと踏みとどまる。


「目指しているのはラノベに出てくるダンジョンのような、ダンジョン内ですべての循環が完結する環境なのよね」


 ダンジョンにミツバチは出てこないが蜂型のモンスターは出てくる。同じことだと考えているのだが……当然ラノベは物語なのだから魂や循環がどう成り立っているかなど、詳しいことは書かれていない。参考にできる材料がない。

 エルフの古代遺跡の調査内容ではダンジョンっぽいものの生成はうまくいっている。だからこそ、この地下畑レベルのダンジョンまでは作れるようにはなったのだけど。


「生体生成が理解できない」


 エネルギー循環までは理解できる。前世の記憶のおかげでコアにそれを制御させることもわりと簡単にできた。だが、それを生体に転用しようとするとうまくいかない。


 一瞬、仕組みが一番わかっている人間で試せば……と考えがよぎる。だが、それに手を出せば人としてどうなのだろう? さすがに忌避感に遮られて手は伸びない。

 同じように外の魔物を生体実験することもできてはいない。古代遺跡の内容は生体実験をした方が理解が進むことはわかってはいるのだけど……


「解剖とか……あたしの領域ではないわ……」


 生き物を切り裂くとか、流れる血とか、考えるだけでゾゾっとする。


「生産用のロボットのように一通りの動きプログラムを組んでエネルギーと一緒に少しずつ流すか」


 ゴーレムのように、歩行や手足の稼働領域の設定など基本動作の他、周りの環境に合わせて動けるように様々な分岐を考えて組まなければいけないから結構な量になる。ただすべてのクローンに同じプログラムを運用させればいいから一度組んでしまえばあとはエネルギーと一緒に流し込むだけだ。


「コアだけに記憶させずに小さな魔石をもたせてある程度は魔石にも記憶させたいな」


 エネルギーから魔石を作り出す方法を確立する方が生産的かもしれない。

 次の研究テーマを魔石の生成と自動化と決めて、ミツバチの動きの条件分岐を作ることに没頭していった。

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