第20話 村人の初作業
今日から村人たちがやって来る予定なので、あたしは本格的に引きこもり開始!
なので、朝ごはんと昼ごはんはミアがデリバリーしてくれることになったのよね。ものすごく食っちゃ寝感。
受け入れ準備期間中に持ち運びできるコア操作端末もできたから、各階層の稼働状況がダンジョン内ならどこからでも見られるようになった。
おかげで部屋でごろごろしながら端末を見ることができるわけで……すぴー……
「アルセラ様? 昼食のお時間ですよ」
はっ! 寝てたわ。
ベッドの上ではダメね。
「むしろ今まで根を詰めすぎです。いい機会ですから少しゆっくりしてください」
自堕落になると抜け出るのが大変なのよね。作りたいものもいっぱいあるし。そもそもダンジョンを作ったのは錬金をしたいからなのよ。
「せめて今日一日は、ゆっくりしてくださいね」
強めに念を押された。珍しくミアがこわーい。
仕方ない。データでも眺めながらゆっくりごろ寝しますか……すぴー……
「トーマスさん、今日作業される方々が到着しました」
アルセラ様の護衛騎士の一人、カイル様が十人の村人を案内してきてくれる。
護衛を任されるほどの騎士様に、案内役までさせていいのか不安になるのだが……アルセラ様を奥から動かさないと決まったから仕事がある方が嬉しいと言われてしまった。
次からは来たことのある村人が引率してくるはずだから初日のみではあるが……
休憩所へ誘導して自己紹介と配給票の仕組みを説明していく。意外にも配給票の仕組みはすぐに受け入れられた。
「今ここにいるメンバーは鉱山でもチームを組んでいたからな。誰がどういうところで手を抜くかもわかってる。監視の補佐と人の動かし方は任せてくれ」
「それであれば……最初にする仕事の説明は三、四人に把握してもらって、適任と思う人に説明と割り振りをお願いしてもいいですか?」
「ああ、それでいい。説明は俺とディート、クラウス、エミールが聞く」
割り振りをお願いしたが、まだ作物がないからな。しばらくはみんな揃って土を耕すところからだ。
さて、ゴーレムを見て固まるか、騒ぐか。他人事だと反応が楽しみだな。
説明を聞く四人を連れて休憩所の外に出るとリーナが畑でゴーレムと遊んでいた。こちらに気がつくとゴーレムを連れてこちらに来る。
「お父さん、ゴーレムちゃんは三体でよかった?」
「ああ、とりあえずは三体で大丈夫だ」
四人を見ると口を開けてただゴーレムを見ている。やっぱり最初はそういう反応だよな。俺はもう見慣れたが。
「ゴーレムは簡単な命令なら聞いてくれるので、力仕事は全てゴーレムを動かします」
一体だけ前に出てきてもらう。
「胸と背中の真ん中あたりにゴーレムの個別名が書かれてます。個別名と言っても記号なので、読み方を覚えてください」
この出てきたゴーレムは『GS1』だ。とりあえず農業に使うゴーレムはGとSの読み方を覚えたら呼び分けられるだろう。
「リーナ、ゴーレムたちに櫛の金具を持ってきてもらってくれ」
「はーい、GS1、GS2、GS3、リーナについてきて」
リーナが歩き始めるとゴーレムが後ろをついていく。見慣れたとはいえこの光景は不思議だよな。
「あのような感じで命令を出すと従って動いてくれます。ただ複雑な命令は理解できません」
感覚としては五歳くらいの子供に話しかける感じですかね? どんな命令なら理解できるのかは何度か試して覚えてください。
「……なんで土人形が自分で動くんだ?」
さあ? それは俺にもさっぱりわからないんで説明はできないですね。本当にどうなってんだか。
リーナとゴーレムが戻ってきたら櫛をどのように使うか説明していく。まずはゴーレムを指示通りに動かすところから慣れないとな。
簡単な命令だけで意図通り動かすってのは案外難しいんだよ。
説明をするとリーナが目の前でゴーレムを動かして耕してくれる。
リーナはここ数日ゴーレムと遊んでいたせいか、俺よりゴーレムの動かし方が上手い。
「ゴーレムがうまく命令を理解できなくて変なふうに動き始めたらまずは『止まれ』といって動きを止めてくれ」
うろたえて想定外の動きをさせたままにすると、なまじ力があるだけに被害が広がっていく。命令がうまく通らないときはまず動きを止める。これは徹底しておかないといけない。
「本当に子供が相手だな。癇癪を起こしたらまず動かなくしたらいいんだな?」
図体も力の大きさも子供の癇癪なんてかわいいものじゃないですがね。
とりあえず説明を終えて三体のGSを預けて二階層の畑を耕してもらう。
畑の中では1番狭いが、初めてゴーレムを扱うなら夕方までかかるだろう。どのように人を割るかは予定通りお任せにする。
「よし、早速取り掛かる。作業的には難しいことはない。いつもの班で分かれるぞ」
元からチームだっただけあって、ハンスの一声であっという間に分かれてそれぞれゴーレムに命令を出していく。
やはりゴーレムに出す命令がうまくいかず頭を捻っているようだ。だが、その日の作業が終わる頃には作業が単純なだけにうまく誘導できるようになってきた。
「あの硬い岩がこんな簡単に脆くなるとはな」
「鉱山の時もこうなら楽だっただろうな」
「いや、どう見ても鉱山の時の岩とは違うよな。どうやったら岩がこんな土になるんだ?」
元鉱夫ならではの会話だな。
もっとも、普通の鉱山なら野菜など育ちはしないだろう。俺としては普通の畑だった時にもゴーレムがあったら楽だっただろうな、か。
この光景に慣れすぎると、もう普通の農業なんてやってられないな。
「アルセラ様、村人が帰ったので夕食を食べにいきましょう」
はっ! もうこんな時間。ほんとに寝て終わったわ……一応通行ログを確認して……うん、通いの人は誰もいないわね。
アルゴ〜休憩所までお願いね。




