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強欲のダンジョンの作り方  作者: 夢兎
地下農業迷宮

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第17話 不穏な空気?

 セドリックさんが城へ戻るとのことだったのでエーリカさんに一度住居を見にきてもらって要望を聞きたいと伝言をお願いする。あとは認識証ね。これは騎士の詰め所に預けておいてもらう。地下畑へ来たら詰め所で待機中のトビアスかカイルに休憩所へ案内してもらって下さいね。


 トーマスさんには道具が揃ってからの作業計画書を作ってもらって、後日まとめてセドリックさんから辺境伯様に提出することになる。

 こういうところは個人で農業してるときと違うところよね。お役所仕事になると提出書類が増える。


 あたしはエーリカさんの住居を増設して、スリム体型のゴーレム作りね。今の2メートルだと背が高すぎてバランスが悪いから1.5メートルくらいにしようかしらね。まずは試作してトーマスさんに確認してもらおう。

 アルゴ~まずはコアまで連れてって!



 王宮の執務室では王と宰相が書類仕事をこなしていた。宰相がそこに届いた書簡を整理していると一つの報告書で手が止まった。


「陛下、バルディウス辺境伯から王立地下農業迷宮に関して要望書が届いております」


「要望?」


 報告書を受け取りながら宰相から軽くまとめた内容を聞く。


「いくつかの資材や道具の手配と果物農家の移住または一時派遣をお願いしたいそうです」


 資材や道具の手配は必要経費だから問題はないが、果物農家か……下手に他の領地から連れてこようとすれば時間がかかるな。それに情報を持ち帰らせようと間者を仕込むことを考えると、広く募集するのは得策ではない。


「直轄地でいい人材はいるか?」


「直轄地には果物の産地がありませんから、小さな農園に打診する形となりますね」


「ベルノルト子爵に直轄地と子爵領から移住しても良いという果物農家を選出してもらってくれ。あまり王立地下農業迷宮の情報は広く流したくはないからな」


「手配しておきます」


 レオナルトが情報といえば……と気になることを言ってくる。


「ドラグナール帝国のヴァルカディアン家へ、ベルグリム鉱山に畑ができるとの報告が入ったようです」


「……早いな」


「まだ正確にはどのような形で畑になるかは不明となっているようですが、近いうちに仕掛けてきそうですね」


「ただの食糧庫としても、あれの技術目的だとしても欲しがるであろうな」


 よりによってすぐ隣のヴァルカディアン家か。あの家は技術に貪欲で攻め入ることにも躊躇がない。畑として成功していることが確定したらすぐにベルグリム鉱山を入手しようと攻めてくるだろう。


「バルディウス辺境伯にヴァルカディアン家への警戒度の引き上げとアルセラの警備強化を改めて指示しておいてくれ」


 話を聞く限りでは王立地下農業迷宮の警備体制は砦よりも強固なようだが、情報面では軍に求めるような完全な情報封鎖は難しいであろう。村人の口に戸は立てられないからな。

 攻められる要素があるからといって、表立って軍備強化をするわけにもいかない。そんなことをしてしまえば重要拠点であると吹聴しているようなものだ。


 ドラグナール帝国が動くのは畑として動いて作物が流れ始めてからだと思っていたが……ドラグナールの情報収集能力を甘くみていたな。厄介なことだ。




「辺境伯様、宰相様より秘匿文が届いております」


 秘匿文? 戦時でもないのに?

 いぶかしく思いながらも届いた秘匿文を受け取る。軽めの暗号だからそこまで重要度は高くないようだ。しかしまた古い暗号を出してきたものだな……


「セドリック、ヴァルカディアン家が動く」


 この一言だけでセドリックには伝わる。セドリックの表情にピリッと緊張が走った。

 さすがに村全体を動かすような事業だ。どこからか情報は洩れるものだが、早すぎる。これは邸内か村の中にスパイがいるな。


「アルセラにつけた護衛騎士とメイドの素性は?」


「トビアス、カイル、ミアの三名ともドゥルガルド国外へ出たことはなく、両親の血筋もドゥルガルドで国との確執はありません」


「一番近しい者の中に疑わしい者はいないのだな?」


「はい。その三名は特に厳重に調査を重ねた上での採用となっております」


 全く考える素振りもなくスラスラと情報が出てくる。さすがはセドリック。重要なところは押さえているか。


「また地下農業迷宮の内部捜査と護衛のためにエーリカを休憩所の調理担当として住居を構えるように手配してあります」


 エーリカはたしか、まだベルグリム鉱山に活気があったころに村に置いていた諜報員だったな。当時も村に入り込んだスパイをあぶりだすために食堂を経営させていたはずだ。なら村人も顔見知りばかりですぐに違和感にも気付けるだろう。


「そうか。あとは護衛騎士を常に視界に入るところに置いて欲しいのだが……」


「アルセラ様は嫌がるでしょうね。今も騎士は入口の詰め所で待機させていますから」


 出入りの監視はしっかりしているとはいえ、中に入るものを完全に限定しているわけでもない。入口で認識証さえ配られればどんな人物だろうと中に入れてしまう。


「収穫の時期はいつごろになる?」


「一般的な農業ですと早いもので三か月。多くの種類は半年くらいで収穫が可能だそうです」


「……一年後には攻めてくるだろう。訓練と哨戒レベルを上げておいてくれ」


 今の時点では地下農業迷宮の情報をドラグナールに渡さないためにどうするかを考えるべきだな。

 ただあれの仕組みの情報を入手できたからといって理解できるかといったら、かなり難しいだろう。であれば、アルセラ本人を狙ってくるだろうな。どう守るべきか……


「本人がもう少し狙われる側だという自覚を持ってくれると楽なのだが……」


「その自覚は全くありませんね」


 外を出歩きたいという性格ではなかったことだけは幸いだが、初めて会う人物でも全く警戒心がないからな。悩ましいことだ。

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