第16話 地下農業迷宮の便利道具
ミアに欲しいものの手配をお願いして送り出した後、セドリックさんとトーマスさんに休憩所へ来てもらい打ち合わせをする。
「アルセラ様、村で食堂を営んでいたエーリカが休憩所で食事を作っても良いと返事をいただけました。住居はこちらで、調理場に近い場所にお願いしたいとのことです」
ふむふむ、それでは休憩所の調理場から住居にすぐ移動できるように拡張しましょうか。
「しばらく食材は全て仕入れしなければいけないですけど手配はどうしましょう?」
「そちらはバルディウス家にて一括で購入して搬入しましょう」
わぁ、それは一級品が届くということですね? 贅沢だわ……
「トーマスさん、農作業に必要な道具を一通りお聞きしたいのですが……」
「基本的なものはこちらに書き出しておきました」
こんな感じで人の手配や、必要な道具をすり合わせていく。
ぼんやりと畑を作ればなんとかなると思っていたけど、全てダンジョン機能で育てるわけじゃないから道具類とかいろいろと準備が必要なのよね。たとえダンジョン機能で育てたとしても収穫には人と道具は必要になってくるのだけど。
「では道具は村の鍛冶場に依頼を出せる部分は依頼していますので、他はバルディウス家より手配します。だいたい一週間、作成が必要なものは一か月ほど必要でしょうか」
「まずは種まきですので、とりあえず土を耕す道具を優先していただければ作業はできます」
「あ、それなんですけど作業ゴーレムを見ていただいていいですか?」
ちょっとゴーレムたちを連れてくるのでお待ちくださいね。
七階層から人型三体、荷車型、箱型のゴーレムについてきてもらい休憩所の前に連れてくる。
「力仕事用にゴーレムを作っています。耕す時なんですけど、この櫛型に作った金具をゴーレムに引かせると荒くは耕せるはずなのですが、使えますか?」
G1に持たせていた金具をそのまま畑に運んでもらい、櫛を下にして置かせる。あたしがその上に乗ってゴーレムに引っ張らせると土が削れて耕せる。別に乗らなくてもいいのだけど、重さがあった方が深く耕せる。
こんな感じなのですがどうでしょう?
「最初に耕すのには使えますね」
よし、ゴーレムには櫛の上に乗った人が指示を出してくださいね。
櫛の幅や密度、いくつ必要かも打ち合わせていく。鉄は結構出ていたからその数なら作れますよ。
あと畝なんですけど、櫛で耕した後にゴーレムにこのV字を左右で引っ張らせるとですね、土寄せができるのですよ。あとは均して形を整えるだけ。使えます?
「とても使えます。便利ですね、これ」
「普通の農地でも牛に引かせて使えるのでは?」
「ああ、それはいいかもしれませんね」
外ででも使えるのであれば作って広めていただいていいですよ。あとでサンプルを作ってセドリックさんにお渡ししますね。あ、櫛もですね。承知です。
でもゴーレムが大きすぎて柔らかくした土を硬く踏みしめてしまっているという指摘が入る。
畝の作成に従事するゴーレムはもう少しスリムな子を要望された。ふむ、それならもう少し細い体型を標準体型にしましょうか。もう作ってあるごつい子は荷物運搬用にしましょうね。
試しに作った自走する荷車型と箱型もなかなかいい反応だった。ただ出番は収穫期になりそうだからその時にまたサイズはリテイクあるかも、ということなので量産は待ったがかかった。
とりあえず作業用のスリムなゴーレムと櫛とV字の作成ね。
あとは種! はい、ご注目~!
こちらはですね。上に乗せたものをクローンしてくれる魔法陣なのですよ。あ、クローンがわからないよね。えっと、同じものを増やしてくれます。
魔法陣の上に用意してもらった種を3粒ほど置いて魔力を流すとあら不思議。同じ種がいっぱいになるのです。
「まとめて作る時は魔力切れをおこさないように注意してくださいね」
あたしはいざとなったら精霊から魔力を借りられるけど、普通の人は倒れちゃうからね。あ、この魔法陣は門外不出で、できればセドリックさんとトーマスさんで情報を管理してくださいね。
「さすがにこれは外には出せませんが、辺境伯様には報告させていただきます」
そこは最高責任者なので大丈夫ですよ。あ、最高責任者は陛下になるのかな? とにかくこの魔法陣が地下畑から外に流出しなければ大丈夫です。
「この魔法陣を保管できてその場で使用できる場所が欲しいですね。できれば入室できる人を制限できる部屋であればなお良いですが」
そうですね。コア室みたいなところがあると便利よね。管理室を作るのは簡単なのですぐにできますよ。どの辺りにしましょう?
「できればあまり人の出入りがない場所がいいでしょう」
「それであれば、あたしの住居を作っている森の一角に作りましょうか」
さ、アルゴに乗ってくださいね。アルゴ、家まで壁伝いによろしくね。
あたしの家に向かう途中でアルゴを止める。
「この辺りでどうでしょう?森に少し入って人目も気にならないかと思いますが?」
森の入口には近いけど、木々が目隠しとなっていて直接は見えない。あたしの家からも少し離れているからお互い気にしなくていいでしょ。
「そうですね。来るのは種まきの頃だけですし、ここでお願いします」
はーい、じゃあ作ってきますのでこのまま少々お待ちくださいね。
セドリックさんとトーマスさんをこの場に残してコアに行く。さっきの座標にコア室のような祠を作成していく。ああ、中に小さいテーブルも必要ね。あと魔法陣の保管場所。セキュリティは扉に魔力鍵を作って、マスターキーはあたしの魔力。サブマスターとその他に五人くらい枠があればいいかしら。
魔法陣用に作った小屋まで戻るとセドリックさんとトーマスさんがまじまじと小屋を見ていた。
「お待たせしました。鍵は魔力登録にしたので今時点では開かないことを確認して下さい」
まずはセドリックさんが扉を開けてみるが開かず、トーマスさんも同様に開かないことを確認した。
扉の魔力登録する場所にはあのルビーとサファイアのインクルージョンが埋まっている。そこに触れながら「魔力登録サブマスター」と言いつつ魔力を流すとふわっと光った。
「セドリックさん、ここに魔力を流して下さい」
セドリックさんが魔力を流すと光が消える。
「これでセドリックさんがサブマスターに登録されましたので五人までなら魔力登録ができます」
というわけで、トーマスさんの魔力登録はセドリックさんにやってもらいましょう。
「ここに手を当てて魔力登録と言いながら魔力を流して下さい」
セドリックさんが魔力を流すと同じように光った。
「トーマスさん、ここに魔力を流して下さい」
トーマスさんが恐る恐る魔力を流すと光が消える。
「これで登録は終わりです。扉を開けて入ってみて下さいね」
まずセドリックさんが開けて中に入り、続けてトーマスさんが開けて中に入っていく。
どうやら二人とも魔力鍵に登録するのは初めてのようでどういう仕組みになっているのかわからず首をひねっている。物理で鍵があった方がわかりやすいわよね。
「広さとかどうでしょう? あまり大人数では入らないと思って小さく作りましたが」
「種を作るだけなので十分ですよ」
では使用者が変わる時はセドリックさんに魔力を登録してもらって下さいね。これなら必ずセドリックさんを通すことになりますので大丈夫ですよね?




