第12話 地下農業迷宮の構造
農地や気候の調整は農家さんとしたいから、二階層に作った休憩所の使い心地かしらね。机や椅子は以前覚えたデータをいじって大きさ変えただけなのよね。強度とか大丈夫なのかしら?
休憩所に入ると六人が余裕をもって座れる机が六つ並んでいる。椅子も机も見た感じは問題なさそうね。
壁には横長の手水場があり、綺麗な水が流れている。一応子供も手伝いに来るかもしれないから低いものも用意したわ。
水の精霊にお願いして飲める水かチェック。うん、精霊お墨付きの美味しい水ね。チェックした子が気に入ってそのまま住み着くようだ。
調理場に入ると奥にある水場にはすでに他の水の精霊がきて遊んでいた。コンロとして作っていたかまどには火の精霊が早く火を炊けとばかりに見ている。ごめんね。かまどの稼働はまだ先なのよ。
地脈エネルギーに溢れているせいか、精霊が集まってくるわね。ダンジョンに精霊がくるのはエルフの森の特性なのかと思っていたけど、エネルギーが濃い場所にダンジョンを作ると精霊が住みつきやすいのかもしれないわね。
休憩所へ戻ると辺境伯様たちが入ってきたから椅子に座ってもらう。騎士様には勢いをつけてもらったりと少し乱暴に扱ってもらった。
うんうん、強度も問題はなさそうね。
二階層にはベルノルト領から移住してくる農家の住居もあるけど、ここの調整は実際に住む農家に見てもらってからの方がいいだろう。
三階層は特に建物がないから四階層に向かう。
この階層には川を流して水車小屋が作られている。麦とか育ててもらう予定だから粉挽きまでできた方がいいわよね。
あー、小麦粉を入れる袋のことを忘れていたわ。この世界の小麦粉を入れる袋ってどんなものかしら? 城にもどったら厨房で見せてもらおうかな?
五階層も建物は倉庫くらいなのでそのままスルーして……この縦移動もなんとかしたいわね。転移陣を置きたい。転移陣そのものはできるのだけど転移エネルギーをどうしようかしらね? あたしが使うだけなら自分の魔力でいいけど、あればみんな使いたいよね。うーん……
六階層は少し広くして、奥の方にエルフの森の小型版を作っている。まだエネルギーが供給され始めたばかりだから木々の成長が1メートルくらいのかわいい森だ。あと三日くらいで指定した大きさまで育つだろう。
その真ん中にスペースを作ってあたしが住居にするログハウスが作ってある。ログハウスの横には錬金スペースのためにレンガ造りのちょっとした研究所も作ったのよね。
住居と研究所と一緒にしてしまうと寝食をつい忘れちゃう。その辺りはすでにミアが把握しているから引き続き時間管理をお願いしないとね。
住居の中の構造もあたしはこれで十分だけど、ミアにも見てもらって要望があれば反映ね。それぞれのプライベートは保てるようにはなってるはずだけどね。
住居のさらに奥へと入っていくとコアがある。二畳ほどの小さな祠みたいな作りにしてみたのよね。
ここにはあたしか、キーを持っている人しか入れない。認識型の結界が展開されているから盗難や破壊に及ぼうとしたらまず結界をなんとかしなければいけない。
まぁ、知識があればこんな簡単な結界なんてすぐに突破できてしまうけどね。
中に入ってコアを通してダンジョンに使われているエネルギーバランスを見る。
まだ作物に合わせて天候調整をいれていないからか、エネルギーにはずいぶんと余裕があるわね。これなら採掘と鍛冶場も問題なく作れそうだわ。とりあえず農場が全て稼働し始めてから着手するようにはするけどね。
通行記録は問題なくとれているわね。
この機能はほんとなら辺境伯様かセドリックさんが使えるとダンジョンでの防衛面でかなり有効活用できるはずなのだけど、やっぱりこの世界の人たちには難しいわよね。こういう管理を補助するAI欲しいな。圧倒的に判断させるためのデータが足りないのよ。アルゴリズムもどうなっているのか……あああ、検索したいのにできないこのもどかしさったら!
あら? 出口のガーゴイルが動いてる? ……あ! もしかして認識証を持ったまま出ようとしたのかしら? そういえばその説明をしていなかった気がするわ。急いでいかないと!
走るには遠いわ……やっぱり移動手段をなんとかしよう。そうしよう。
「すごいな、このガーゴイル。一瞬で門のような形に変わった」
「追われるわけじゃないから怖くないけど、これだと通れないぞ」
「どうしたら通れるんですかね? これ」
騎士たちがガーゴイルを前にしてああでもない、こうでもないといろいろ意見を交わしている。
しばらく意見を交わし合い、どうにもならないと結論が出て戻ろうとしたところで息を切らせたアルセラが到着した。
「ぜぇ……はぁ……も、もうしわけありませ……げほっ……」
「アルセラ、まずは落ち着いて息を整えろ」
普段走ることなどないのだろう。なかなか息が整わずに苦労している。
後ろからついてきていたトビアスが自分の水筒で申し訳ないですが、と水を差しだして飲ませた。
「はー……ありがとうございます」
ひとしきり落ち着いてから出口のガーゴイルについて話をしてくれる。
どうやら認識証を持ち帰らせないようにするために、認識証を持っていると外に出られないように妨害するようだ。
「帰るときはここの箱に認識証を返してください。ここに返してから認識証をもたないで二階層に戻ろうとすると二階層のガーゴイルが追い出しにかかります」
話を聞いてカイルがトビアスに認識証を預けてガーゴイルの前へ行くと門のように塞いでいたガーゴイルの形状が像に戻って通れるようになった。
そのままこちらに戻ってきて二階層へ向かうと、二階層の階段前のガーゴイルが動き、まずは行く手を阻むようだ。強行しようとすると攻撃するのだろう。
「カイル、ありがとう。いいテストになったわ。ちゃんと認識はうまくいっているようね」
ここに入れた認識証は常駐する騎士が回収するように依頼された。騎士専用の認識証を持っている場合は通行を妨害しないらしい。
続いて正面に開いていた大きな通路についての説明になる。あちらは搬入口で出入口付近の広間までは認識証の有無に関わらず入れるがその先は運搬用のゴーレムしか通れないらしい。ゴーレム以外が通ろうとするとこの出口のガーゴイルのように門となって塞がるそうだ。
入口、出口、搬入口と考えると砦よりも強固な警備体制なのではなかろうか?
「国境戦になることがあると伺っていましたのでいざという時の避難所としても使える想定にしています」
ここは国境関門に近いが、守りに来るには遠いからな。いざというときにしばらく自力で耐えてくれる要素があるのはありがたいな。
むしろ城よりも攻められにくく、籠城も楽にできるのではなかろうか。




