第11話 地下農業迷宮始めました
今日は待ちに待ったダンジョン展開日ですよ。うまくいくかな?
ベルグリム鉱山に向かうべく玄関へ降りていったら辺境伯様一家が見送り準備をしていた。
「辺境伯様もおいでになるのですか?」
「領地にできる新たな試みだから見届けないとな。というのは建前で、どのように作られるものなのか見てみたい」
とても興味津々ですね。でも外からしか見えないので作成風景はたぶん地味ですよ?
「父上、僕も視察に同行したいです」
レオンハルト様も目をキラキラさせていらっしゃる……すでに服は外出着になっているから許可を取る前に準備していたようだ。
まあ、領主と次期領主の目線で展開後にあちこちチェックしていただいて、ご要望を出していただければいいかな。作業員が入ってからだと変更しにくい部分も出てくるだろうしね。
ゴーレムとガーゴイルの頭脳を作っている間は各階層を見て回ってもらおう。
玄関を出ると護衛の騎士様がずらりと……わあ、壮観。そうよね。辺境伯様のお出かけだものね。
「さすがに多くないか?」
いつもはこんなにつかないのですね?
「皆さまバラバラに動かれた時のためにもお連れください」
「みんな地下農業迷宮を見てみたいんだよね」
レオンハルト様の言葉に騎士様達の目が泳ぐ。みんな素直でよろしい。だけど今日はほんとに立ち上げだけだし、そんな面白いことは起きないと思うのだけどね?
ベルグリム村に到着して、まず辺境伯様から代表者に許可があるまで鉱山に立ち入らないよう下知する。
辺境伯様たちが村人の視線を集めている間にあたしはこっそりと鉱山入口に移動する。一応フード付きのマントですっぽりと姿を隠しているのだけどね。調査の時に姿は見られているから今さらと思うのだけど、情報が出回ってからだと注目度が違うから念のためなのだそう。
展開前に精霊に働きかけて坑道に誰かいないか確認する。ん、よし。誰もいないわね。
そのまま再度エネルギー状態を確認していたら辺境伯様たちがこちらへやってきた。
「辺境伯様、中には誰もいないことを確認しました。始めてもよろしいですか?」
「ああ、アルセラのタイミングで始めてくれ」
腰につけたマジックバッグからダンジョンコアを取り出して起動の魔力を込めていく。
キング種の魔石だからか結構な魔力を持っていくわね……精霊の祝福を受けたエルフじゃないと足りないかも……あとでいっぱい精霊にお礼しないとね。
起動の魔力が満ちるとコアが地面に潜り込んでいく。この光景は何度見ても不思議ね。これはエルフの古代遺跡から読み取った術式だから、あたしも完全には仕組みを理解できていないのよね。
設計図が展開されたのか、目の前のぽっかり空いた坑道の入口がバルディウス家の家紋を掲げた門へと作り変えられていく。我ながらちゃんとした形になったのではないかしら?
向かって左側には中で作業する人達の出口専用路。右側には入口がある。正面の大きな出入口は搬入路だ。一定より奥はゴーレムしか通行できないように見張りのガーゴイルを置く。
まだ頭脳を作ってないから動かないのだけどね。
入口通路には騎士の詰め所と監視用のガーゴイル。認識証を持ってない人を感知したらガーゴイルに攻撃をしてもらう。4体いるうちの1体は認識証の番号を記録して入退室をチェックできるようにしてある。
まぁ、コアから見ないといけないから実質あたしにしか見られないんだけどね。辺境伯様に見る方法を教えてもまた固まっちゃうわ、きっと。
作り変える魔力の流れが止まったところで辺境伯様たちの方を見上げる。
あら、皆さま。お口がものすごく開いてますけど大丈夫ですか? とりあえず外側はできましたよ〜?
「……見にきて正解だったな……」
「どこをどうしたらこのようになるのか、理解不能ですね」
うーん、それはあたしも不思議に思ってることが半分くらいあるから理解してもらうレベルの説明は難しいですねぇ。ダンジョンとはこういうものなんですよ。難しく考えてはダメです。
「もう中を自由に見て回っていただいても大丈夫ですよ。あたしは中で動く子たちの制御を作りますので案内はできませんが……」
「ああ、先にもらった設計図と照らし合わせながら見させてもらうよ」
いってらっしゃいませ〜……さて、あたしは掘り出した時に出てきた鉱石や水晶をまず確認しないとね。どれくらいあるかでできあがり数が違ってくるのよね。素材置き場にしたのは七階層だからそこまで歩いて行かなくてはいけない。遠いなぁ……
まずはガーゴイルの頭脳ね。これはセキュリティの要だから一番いい素材を使いたいのよ。
あった! オリハルコン! エネルギーを見た時に深層にあることは確認していたのよ。うん、採掘量は多くないけどガーゴイル分はありそうね。
錬金術で加工して、魔力で制御を書き込んでいく。さすがに魔力伝導が高いわね。滞りなく書き込めるわ。コアに認識させて、名前は……記録1とかでいいわね。凝った名前をつけるとどれがどれなのかわからなくなるし。記録用、攻撃用、出口管理用、ゴーレム認識用でそれぞれナンバリングして設定。入口のガーゴイルに……あ、先に認識証を作らないとね。制御を入れてしまったら誰も通れなくなってしまうわ。
クズ水晶の山を錬金にかけて溶かし、再構築して認識証を作っていく。とりあえず100個あればいいかしらね? 足らなくなったら追加したらいいか。
魔導金属でナンバリングを刻んで……よし。外からも何番か見えるわね。
作ったものをマジックバッグに詰め込んで入口に向かうと辺境伯様たちはまだ入口にいらした。
あら、ちょうどいいわね。認識証を配りましょう。
「この認識証がないと通れないのだな?」
「正確にはこの認識証を持っていないとガーゴイルに攻撃されます。今はまだ動かす制御を入れていないので攻撃されませんが」
今はただの石像なんですよね。ついでにテストさせてもらおうっと。
「今から制御を入れますね」
作ってきたオリハルコンのコアをガーゴイルの石像に埋め込んでいく。
うん、今は動かないわね。
「トビアス、認識証を誰かに預けてここを通ろうとしてみて。あ、動き始めたら怪我をする前に外に出てね。ガーゴイルは地下農業迷宮の中、しかも担当で割り当てた階層でしか動けないから」
トビアスが持っていた認識証をカイルに預け、ガーゴイルの前を通過しようとした瞬間、配置されたガーゴイルたちが一斉に動き出た。
うん、ちゃんと作用してるわね。
ガーゴイルは逃げるトビアスを追うけど認識証を持っている人には見向きもしない。
トビアスが外に出たのを確認したらゆっくりと元の場所に戻っていった。
動作確認完了ね。トビアス、協力ありがとう!
「動かないはずの石像が迫ってくるのはなかなかの迫力ですね」
まだ攻撃は何もしていないけどね。とりあえず侵入さえ許さなければいいから脅しになればいいのですよ。ガーゴイルが動けば警備についている誰かが気づくでしょうし。
攻撃能力のテストは……さすがにやめておきましょうね。あたしは他の通路のガーゴイルにもコアを入れにいってきます。




