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ある熟年夫婦の場合  作者: つよきち
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会話が一切ない夫婦

誠一は自称映画馬鹿というくらい映画が好きだった。

それに付き合う祥子も当然映画が好きだと思っていた。

それでなければどうして誠一と一緒に映画を見ていたのだろうか。

子どもが自立してからは毎週末と言っていいほど、映画を見ていたのだ。

時には一日4本見るくらい映画を見ていた。

好きでなければどうしてそれに付き合えるのだろうか。


「旦那さんが映画が好きだからですか?」


誠一はそんな馬鹿な質問を思いつき、自笑した。

もちろんそんな質問はしなかった。

でも次の質問がなかなか思いつかなかった。

そうしているうちに、あることに気づいた。

私は祥子に質問をしていただろうか。

少なくともここ最近祥子に何か聞いたことはなかった。

というのも会話が一切なかった。

でもそれはそれくらいお互いのことをよく理解している象徴だと思っていた。

それは誠一だけだったというのだろうか。


「好きなものは何ですか?」


まるでデートに誘おうとしているみたいだ。

誠一は馬鹿な質問だと思った。

でも最初の質問よりはマシだと思って、送ってみることにした。

もし連絡が返ってこなかったら、別のアカウントを作ろうと思った。


誠一は映画「クレイマー、クレイマー」の境遇が自分と似ているような気がして、他人事には思えなかった。

彼は仕事に没頭するあまり家族を顧みることができなかった。

そして大事な家族を失った。

でも彼は偉大だった。

自分の過ちに気づき、正しい努力ができたのだから。

誠一は自分の過ちすらまるで分かっていなかった。

思い返せば、どこからが自分が信じていたものか分からなくなり、自分の正しさが崩れていった。


翌日祥子から連絡が返ってきた。


「あなたは何が好きですか?」


もちろん映画だった。

でも映画が嫌いだという人に映画が好きだという勇気はなかった。

もう自棄糞だった。

もしかしてばれてしまう恐れもあったが、自分のことについて、祥子に直接聞いてみようと思った。


「私はなぜ妻に嫌われてしまったか分からなくて困っています。もしよろしければ、あなたがなぜ旦那さんが嫌いになったか聞かせていいただけないでしょうか?」

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