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ある熟年夫婦の場合  作者: つよきち
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聞きたいこと

二人は特にしゃべらなかった。

他愛のない会話くらいはしたかもしれない。

でもそれぞれの時間を過ごした。


祥子は相変わらず、ベローチェに浸っていた。

誠一は、祥子が誠一の知っている祥子ではなくなるベローチェが好きではなかった。


ふいに誠一は肝心なことを思い出した。

祥子が学生の時にベローチェはあったのだろうか。

あったとしても学生の時に入ったりしたのだろうか。

祥子が学生の時なんて、カフェに入るなんて、学生がすることではなかったはずだ。

誠一はようやく祥子の思い出が、学生の時のものではないことに気がついた。

それならばなぜあんなことを言ったんだ。

誠一は、学生の時を思い出すとは言ったがそれが必ずしも学生の時の思い出ではないのではないか。


「なんでベローチェなんだ?」


誠一は要領のつかめない質問をしていた。

祥子は何となく誠一の言いたいことを悟ったようだった。


「学生に戻った気分になるの。こういうことしてみたかったって」


祥子がよく行くベローチェには学生がよく来るのだろうか。

誠一はなんとなく祥子が言いたいことが分かった。

でも祥子がこれ以上誠一の知らない世界に想いを馳せるのは嫌だった。

自分との現実を否定されているような気がした。


「別に今が嫌だっていうんじゃないんだけどね。学生の時にもっとこうしてみたかったとかはあるんだよね」


祥子は弁解する様に話すが、後悔しているのだと思った。

それは誠一との現実に対してだろうか。

なぜか横山が話してくれた顛末を他人事のように思えないのだった。

あれは自分の未来なんじゃないか。

誠一は自虐的な質問をしてみたくなった。


「もし人生やり直せるなら、いつに戻りたい?」


誠一は、その時こんな質問をした自分を後悔していたはずだった。

でも同時に誠一は、無邪気に質問に答えようと真剣に考えている祥子を可愛いと思っていた。

その時、誠一は気づいた。

誠一は、あの時からずっと気持ちが変わることはない。

変わらず同じ気持ちで祥子を愛している。

こんな自分は普通じゃないんだろうか。

誠一は祥子に聞きたかった。

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