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ある熟年夫婦の場合  作者: つよきち
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同じカフェオレ

祥子は試すように誠一を見てから答えた。


「あなたが答えたら答えてあげる」


簡単に答えられない理由があるのだろうか。

誠一は答えられなかった。

それは答えられない理由があるからではなかった。

本当に答えが分からなかったのだ。

そもそも誠一は今に満足していた。

だからこそ、満足していないかもしれない祥子が信じられなかった。

というよりも信じたくなかったと言った方が正しかったのかもしれない。


誠一が答えられないでいると、なんとなくその話はなかったことになってしまった。

でも誠一は納得できなかった。

でもこの話題に拘っているのは誠一だけのように思えた。

誠一は祥子を見た。

祥子はまた誠一の知らない何かに想いを馳せているのだろうか。

なぜこうなってしまったのか。

誠一は自分自身に後悔していた。

こんなふうにいつまでも嫉妬深いのは異常だとも思えた。

気持ちに余裕がないのは何か誠一自身に問題があるように思えてならなかった。

誠一はまた祥子を見た。

でも誠一の視線に祥子が気づくことはなかった。

それは不思議なものだった。

もしかしてずっと誠一の片思いだったのかもしれない。

目の前で一緒にカフェオレを飲んでいる祥子を見て、誠一はそんなことを思っていた。

誠一は、その同じカフェオレを見た。

同じカフェオレを飲んでいるのは、誠一が祥子が頼んだものと同じものを望んだせいだった。

もしかしてずっと独りよがりだったんじゃないか。

でも、それらの思惑について、誠一は何て質問をすればいいか分からなかった。


誠一は祥子の立場になって考えてみた。

もしそれが本当だった場合、祥子はどういう気持ちで誠一と一緒に時間を過ごしてきたのだろうか。

もしかして誠一が映画に没頭するのは祥子にとっては都合がよかったのかもしれない。

誠一と一緒に時間を過ごさないことを祥子は望んでいた。

だから今まで映画馬鹿な誠一と生きてこられたのだ。

そういうことだったのだ。

誠一はそんな自虐的なことしか考えられなかった。

横山は何て答えるだろうか。

こんな時でさえ、誠一は横山のことを思い浮かべるのだった。

それは横山のことを他人事のように思えないせいだと思っていた。

でも本当は、その時、その程度しか横山のことを知らなかったせいだった。



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