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ある熟年夫婦の場合  作者: つよきち
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自分のいない思い出

祥子とのデートはただ青山通りを道なりに歩いているだけであった。

それをデートと言えるかどうかは分からなかったが、誠一はデートだと思いたかった。

ただ歩いているだけのデートは二人の関係を語らせた。

二人が歩いていく先にベローチェがあった。

こんなところにもベローチェがあるんだな。

誠一はそう思った。

誠一が歩いている道はもう青山通りではなかった。

二人はだいぶ先まで歩いていたのだ。

誠一がベローチェを見ていると、祥子が気を利かせて、「少し休まない?」と声を掛けてきた。


誠一と祥子が二人でベローチェに入るのは初めてだった。

祥子はアイスカフェオレを頼んだ。

誠一も同じものにした。

本当はアイスコーヒーにしたかったがやめた。

祥子は懐かしむように店内を見回していた。

ベローチェに何か思い入れがあるのだろうか。

誠一もベローチェを見回してみた。

さすがに休日はサラリーマンの姿はない。

土地柄もあるのかもしれない。

店内の客は、年齢層が高めだった。


「学生の時、よく来ていたの」


祥子はそう誠一に話したが、祥子の頭の中に誠一はいないような気がした。

誠一は祥子のことを眺めた。

年相応の背格好になった祥子は、やはり誠一の好みのタイプだった。

いい年の取り方をしているな。

そんなことを考えていた。

控えめで、よく気が利く人柄が、歳とともに、雰囲気に馴染んできている。

この人と一緒にいられて本当に幸せだったな。

誠一はそんなことを感じていた。


祥子は、ベローチェが感慨深いようだった。

きっと今、誠一がいない世界について祥子は考えている。

それを考えるだけで誠一はなんとなく嫉妬していた。

こんなに年をとっても、祥子への思いは色褪せることがなかった。

でも誠一は、誠一のいない思い出に浸っている祥子の邪魔をしたくなかった。

だから誠一はただ祥子のことを眺めていた。

そういえばこんなふうに祥子のことを見たのは久しぶりのことだ。

誠一は、そんなことを思っていた。



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