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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第34章

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2394話 黒銀を担いて

 街路を駆け抜け、息を切らせたフリーディアが黒銀騎団の詰め所へと駆け込む。

 だがそこではフリーディアの想定とは異なり、既に集結が完了し、完全武装を整えた黒銀騎団の面々が待ち受けていた。


「っ……! あれは……!」

「フリーディア様っ……!」


 部隊ごとに集結した面々の中には、フリーディア旗下の白翼騎士団の者達も居て。

 白翼騎士団は主に、ファントの町の治安維持に重点を置いた任に就いている。

 そのため、有事においてもフリーディア直属の者たちの他はまず駆り出される事はない。

 しかしテミスが斃れた今、フリーディアは全軍集結を命じるべきだとも考えていた。

 尤もその前に、テミスが斃れた現状を共有するところからだと考えていたのだが……。


「おぉ! フリーディア殿! ちょうど、伝令を送ろうと考えていたところでした。流石、お早いですな」

「っ……! マグヌス! 貴方こそ……。まさか、もう準備を整えているとは思わなかったわ?」


 恐らくは彼等も、既に何らかの方法でテミスの現状を知り、独自に準備を進めていたのだろう。

 本当に、心強い。

 テミスという主が逐一指示を出さなくとも、各員が己の意思で考え、最適な行動を導き出して動く。

 フリーディアは黒銀騎団の練度に心底感心しながら、自らの胸中に蟠る不安を呑み込んで微笑みを浮かべる。


「して……テミス様はどちらに? あぁ! フリーディア殿が先行されたのですな? いや、テミス様がいつもご苦労をおかけいたします……」

「えっ……?」


 しかし、穏やかに続けられたマグヌスの言葉にフリーディアは凍り付くと、背筋を駆け抜けていく悪寒と共に表情を引きつらせた。

 やはりまだ、テミスの現状は伝わっていなかったのだ。

 けれどそれなら、この集結した部隊は何……?

 僅かな違和感から広がった予感は確信へと変わり、フリーディアは絶望に屈しそうになる自らの心に喝を入れると、ギラリと鋭い視線でマグヌスを見据えた。


「それでは、先にフリーディア殿に――」

「――マグヌス。現状を共有したいわ。緊急よ。全軍即応待機を通達、貴方とサキュドは大至急執務室へ着て頂戴」

「っ……! 承知」


 そして、穏やかな微笑みを浮かべるマグヌスに対して、フリーディアは凛と気迫の籠った声で矢継ぎ早に告げる。

 本来ならばマグヌスはテミスの旗下で、今のフリーディアにはテミスが認めない限り、黒銀騎団への指揮権も有してはいない。

 しかし、フリーディアの纏う気迫から何かを察したかのように、マグヌスは柔らかだった表情を引き締めて頷くと、身を翻して兵達の向こうへと消えていった。


「……これでい良い、はず。大丈夫、間違えてない」


 マグヌスの背中を見送ったあと、フリーディアは途端に襲い来る不安を押し返すように呟くと、自らも詰め所の建物の中へと駆け込んだ。

 現状を鑑みるのなら、マグヌスたち黒銀騎団本隊と、フリーディア自身の間で有している情報が異なるのは確実。

 だとするなら、現状の確認すらせずに出撃しても、事態をより悪化させるだけ。

 けれど、もしもマグヌス達が部隊を集結させていた理由が火急の案件だったら……?


「ッ……! だめ、揺れては駄目。しっかりしなさい、フリーディア。今は私がやらないと……!!」


 一気に詰め所の廊下を駆け抜け、執務室へと駆け込んだフリーディアは、手早く自身の軍装を整えていく。

 この執務室には万が一の時に備えて、甲冑など予備の軍装一式を置いていたのだが、宿舎へ戻る暇がない今回は、それが功を奏した形となった。

 そして、フリーディアが装いを整え終えたのと同時に、執務室の扉が開いて、不満気な顔をしたサキュドを連れたマグヌスが駆け込んでくる。


「マグヌス、サキュド両名、只今集結しました!」

「……なに? アタシはもう、アンタの命令を聞く義理も義務も無いのだけれど?」


 びしりと姿勢を正して告げたマグヌスの傍らでは、身に纏った黒銀騎団の団服を示したサキュドが、責めるような視線をフリーディアへと向けていた。

 サキュドの態度に込められた言外の文句。

 それは確かな警告であり、既に白翼騎士団に紛れてフリーディアの旗下に収まる役は果たしているとの宣言だった。

 しかし、その警告を正しく受け取りながらも、フリーディアは焦る内心を鋼の意志力で御し切ると、駆け付けた二人を見据えて静かに口を開いた。


「まずは、現状を共有しましょう。状況は最悪と捉えて貰って構わないわ。落ち着いて聞いて頂戴、恐らくだけれど……テミスが敵の手に堕ちたわ」

「なっ……!!?」

「はっ……?」

「その為に二人を呼んだの。教えて、そちらで何があったのかを」


 フリーディアが重苦しい声で告げた言葉に、マグヌスは大きく目を見開いて動揺を露わにし、サキュドは一騎に殺気を迸らせる。

 そんな二人に気圧される事無く、フリーディアは真っ直ぐにサキュドとマグヌスを見据えると、緊張感を孕んだ声で問いかけたのだった。

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