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嫌われ転生聖女は、攻略対象の想い人 死亡フラグを回避するために欠損を肩代わりしただけなのに、どうして曇った三英雄が執着してくるのですか?  作者: 桜城恋詠
【第二章・神殿崩壊編】

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新たな目標

 ――私を救うために、他者を犠牲にするなんてあり得ない。


「ハルル村の悲劇で生き残った奴は、やっぱり言うことが違ぇなぁ!」

「2択なら、皆殺しは避けたいね」


 そんな私の思いとは裏腹に、三英雄は心を1つにして話し合いを続ける。


 まるで、己の命が助かるのであれば、これに越したこと言わんばかりの反応を見せたのだ。


 ――あり得ない。

 彼らが私に好意を抱いているのは知っていたけれど、まさかここまで入れ込んでいたなんて……。


 彼らの決定を受け入れるわけには、いかない。

 私は慌てて、三英雄の意見を拒絶した。


「誰かを犠牲にしなければ生き残れないのなら、私は……」

「心配しないで。僕たちが絶対に、君の中から魔王の魂を追い出して見せるから」

「そうだぜ。自己犠牲はやめろって、何度も言ってるだろ?」

「ですが……」


 彼らはこちらが「止めてほしい」とはっきり宣言するのをよしとしていないようだ。


「この秘密は、何があっても守り抜こう」

「そうだな」

「ああ……」


 普段は啀み合っていることのほうが多い3人は、コツンと拳を重ね合わせて誓いを立てた。


 ――こんな状況じゃなければ、みんなが仲良くなって本当によかったと感動する場面なのに……!


 これじゃ、台無しだ。


 どうにかして、考え直してほしいと言いたい。

 だけど、3対1はさすがに勝てる見込みがなかった。


 いつものように、険悪な雰囲気に戻ってしまっては困るし……。


 今のところは、黙認するべきなのだろう。


「自分の意思で、コントロールはできるの?」

「どうでしょう……。それは、聞いてみないとわかりません」

「誰にだよ」

「魔王に、でしょうか」


 ――そうだ。

 あとで個別に、説得を試みよう。


 名案を閃いた私が何気なく口にした言葉は、どうやら彼らにとっては想像もつかない内容であったようだ。


「会話ができるのかい?」

「はい……。彼は、意識を失う前に言っていました。自分と共存したいと思えるように、遠隔視を授けると……」

「聞いたことのねぇ能力名だな」

「未来視や、過去視のようなものでした」


 私は夢の中で目にした光景を、彼らに説明した。

 ヒロインとラジェスに出会ったことまで伝えた瞬間、フェドクスの表情が曇ったのは気がかりではあるが――。

 いつものように、嫉妬心を爆発させていないだけ、よしとしよう。


 幼馴染の頭部を撫でつけてその姿を褒め称えていると、彼らは私の遠隔視がどういった異能なのかについて考察を始めた。


「未来視や過去視ではないけど、霊体になれる。それなら、遠隔透視の可能性が高いね」

「なるほどな。じゃあ、あんたの目撃した光景ってのは……」

「リアルタイムで起きた、出来事だ」


 あれはどうやら、白昼夢の類であったらしい。

 意識を保ったまま、千里眼にも近い異能が使えれば、いろんな情報が手に入る。

 もう、みんなの足手まといになってしまうと謙遜する必要はない。


「司祭は、ティルタラーテ王国との交渉役を買って出ていた。彼が捕まった今、新たにその役割を担う人間が必要になる。でも……」

「随分と、歯切れが悪ぃな」

「父上は、あちらと交渉を続ける余地はないと考えているみたいだ。そう遠くない未来に同盟は解除され、戦争となるだろう」


 私が力を自由自在に操れるようになれば、ティルタラーテ王国で暮らすヒロインたちにとっては脅威となるだろう。


 リアルタイム機密情報を、盗み聞きできるのだから。


 いくら己の身体に魔王が取り憑いていとしても、陛下が己の内にこうした能力が秘められていると知れば、これ幸いとばかりに協力を依頼してくるはずだ。


 母国を壊滅させる秘密兵器扱いされる前に、みんなの前から姿を消さなくちゃ……。


「世界が平和になったはずなのに、考えることが山積みだな……」

「これからゆっくりと、みんなで力を合わせて考えていけばいいさ」

「そんなに悠長なことを言ってて、本当にいいのかよ?」

「僕たちには、勝利の女神がついているからね」


 ルドルフから同意を示すように微笑まれても、相槌を返す気にはなれなかった。


 ――どちらかと言えば、疫病神だと自認していたからだ。


 だけど……。

 そんなふうに自分を卑下したら、私を心配でどうにかなりそうなフェドクスが病んでしまう。


 私はぐっと堪え、曖昧に口元を綻ばせた。


「安心して。どんな困難が起きようとも、僕たちは絶対に君を離さない」

「監視を掻い潜って、外へ出ようとするなよ。不幸にしかなんねぇから」

「エミリエは、俺が守る」


 三英雄に代わる代わる重い愛を向けられて笑っていられるほど、私も神経は図太くない。


 でも――。


 彼らがいてくれたからこそ、私は死なずに済んだのだ。


「ありがとう、ございます。私は、幸せ者ですね」


 いつかみんなが、ヒロインを好きになるその日まで――私は三英雄のそばにいると誓った。

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