↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
92/163

第92話 狙われた諸侯会議

 滝は五連橋を駆け下り、そのまま司法省へ向かった。


 昼の王都。


 行き交う人々が驚いて振り返る。


 だが、そんなことを気にしている余裕はない。


 胸の奥で、嫌な感覚が膨れ上がっていた。


 点だったものが線になる。


 そして今、その線が一つの場所へ収束し始めている。


⸻


 司法省――上級執務室。


 勢いよく扉が開く。


 書類を整理していたミヤーノが顔を上げた。


 「タキ殿?」


 思わず目を見開く。


 先程まで疲れ切っていた男とは別人だった。


 目に力が戻っている。


 いや――鋭すぎる。


 「何か分かったのですか」


 滝は机へ地図を広げた。


 サカンとコーナンも顔を上げる。


 「多分な」


 滝は深く息を吐いた。


 「これまでの事件――」


 「俺のいた国で四十年以上前に起きた大規模テロ事件と酷似してる」


 部屋の空気が変わる。


⸻


 「連続……テロ?」


 ミヤーノが眉をひそめる。


 滝は頷いた。


 「犯人は革命思想を掲げた過激派組織だった」


 「各地で無差別爆破を繰り返して警察を混乱させる」


 「その裏で仲間を増やし、武器や資金を集める」


 「そして最終的には、政府中枢を叩いて武装蜂起する計画だった」


 サカンが腕を組み、低く唸る。


 「つまり……」


 滝は地図を指でなぞった。


 「武器はセキから流れ」


 「ガナトで受け渡され」


 「不穏分子はノオダで動いていた」


 一拍。


 「そして最後は王都」


 「全部繋がっている」


 それは、これまでの捜査で何度も浮かび上がってきた線だった。


 「地方で不満分子を煽る」


 「武器や食料を集める」


 「反政府側につきそうな連中に資金を流す」


 「各地に“種”を撒いてたんだ」


 コーナンが静かに頷く。


 「そして、ジロウタやセキの総督も、その駒だった……」


 「ああ」


 滝も頷いた。


 「ハギー誘拐も、おそらく交渉材料だ」


 「決起の時、王家を揺さぶるためのな」


 室内が重く静まり返る。


 ここまでは、すでに見えていた。


 問題は――その先だった。


 滝はゆっくりと言う。


 「だが、ここから先が重要だ」


 「奴らの“最終目的”は何か」


 サカンが険しい顔で呟く。


 「……政府転覆か」


 滝は静かに頷いた。


⸻


 「そして――」


 滝は続ける。


 「奴らの最終目標は、おそらく政府要人をまとめて叩くことだ」


 ミヤーノが目を細める。


 「なぜ、そう思うのです」


 「テロの目的は混乱そのものじゃない」


 滝は答える。


 「混乱で“人を動かす”んだ」


 「治安対策」


 「緊急会議」


 「軍の招集」


 「政府は必ず、大物を一か所へ集める」


 「そこを狙う」


 その瞬間だった。


 ミヤーノの顔から血の気が引いた。


⸻


 「……まさか」


 滝が視線を向ける。


 ミヤーノは静かに言った。


 「一か月後、各地の有力諸侯を王都へ招集する諸侯会議が予定されています」


 空気が凍る。


 「今回の王都爆破事件を受けて、治安対策と反乱対策を協議するためです」


 サカンが立ち上がる。


 「待ってください……!」


 「それでは!」


 ミヤーノが頷く。


 「司法卿」


 「軍務卿」


 「財務卿」


 「有力諸侯」


 「各地の領主」


 「そして皇帝陛下もご出席になります」


 滝は低く呟いた。


 「――それだ」


⸻


 沈黙。


⸻


 誰も、すぐには言葉を出せなかった。


⸻


 コーナンが絞り出すように言う。


 「もし会議場で爆発など起これば……」


 「国が終わる」


 滝が静かに答える。


 「混乱に乗じて各地で反政府勢力が動けば、なおさらだ」


 サカンの額に汗が浮かぶ。


 「ですが、会議の場所や警備は極秘ですぞ……!」


 「内部協力者がいれば関係ない」


 滝は即座に返した。


 全員が黙る。


 貴族。


 火薬搬入。


 王都内部。


 今まで集めてきた情報が、一つの形になり始めていた。


⸻


 滝はゆっくり窓の外を見た。


 王都の空。


 穏やかな昼。


 だが、その下では確実に何かが動いている。


 「あと一か月……」


 小さく呟く。


 この計画を止められるか。


 間に合わなければ、この国は燃える。


 そして――


 今度こそ、止めなければならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。