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第78話 夜の閃光

 ――ドォン!!


 夜空が裂けるような白い閃光。


 数瞬遅れて、腹の底を揺さぶる爆音が王城を震わせた。


 一拍遅れて、遠くから悲鳴が響く。


「な、何だ!?」


「襲撃か!?」


「まさか反乱軍……!?」


 貴族たちが一斉に騒ぎ出す。


 酒杯が落ちる。


 悲鳴。


 混乱。


 先ほどまでの優雅な空気が、一瞬で崩壊した。


 だが――。


「静まれ!!」


 鋭い怒声が響く。


 ミヤーノだった。


 大広間の空気が凍る。


 憲兵隊総監としての威圧感。


 一声だけで、場が止まった。


「近衛兵!」


「陛下と皇女殿下を退避!」


「各出入口を封鎖しろ!」


「不審者を通すな!」


「はっ!!」


 近衛兵たちが一斉に動き出す。


 ユダも即座に皇帝とハギーの側へ向かった。


 クガーも険しい顔で周囲を見渡している。


 流石に場数が違う。


 混乱している貴族たちとは反応がまるで違った。


 ハギーも不安そうではあったが、取り乱してはいない。


 ミヤーノの指示へ素直に従い、近衛兵に囲まれながら退避していく。


 その横で。


 レイスが呆然と窓の外を見ていた。


「王都で……爆破……?」


 信じられない。


 そんな顔だった。


 一方。


 滝の中から、宴の客としての自分が消えた。


 残ったのは、四十五年生きてきた刑事だけだった。


 爆発。


 夜間。


 王都中心部。


 最悪なのは連続爆破。


 群衆雪崩。


 火災。


 暴動。


 そして――混乱に乗じた要人襲撃。


 滝は即座にミネーの手を取る。


「タ、タキ様?」


「ミネーさん、近衛から離れないでください」


 そのまま近くの近衛兵へ押し出す。


「頼みます」


「はっ!」


 ミネーは何か言いたげだった。


 だが滝の顔を見て、言葉を飲み込む。


 もう“仕事の顔”になっていた。


 そこへ。


 サカンとコーナンが駆け寄ってくる。


「タキ殿!」


 コーナンの顔にも緊張が浮かんでいた。


「町側で火災が発生しています!」


「複数箇所か?」


「確認中です!」


 滝は即座に言う。


「まず重要人物の安全確保を最優先」


「王城内の導線を整理してください」


「混乱した貴族を移動させる」


「通路を塞がれるとまずい」


「了解!」


 コーナンが即座に動く。


 滝は続けた。


「憲兵隊を市街地へ」


「負傷者救護」


「消火」


「避難誘導を急いでください」


「余裕があれば王都の出入口を封鎖」


「犯人を外へ出すな」


 コーナンが目を見開く。


 だが、すぐ頷いた。


「分かった!」


 走り去っていく。


 サカンは静かに滝を見ていた。


「……実に的確だ」


「爆発直後に、そこまで優先順位を組み立てられる者は少ない」


 滝は窓の外を見る。


 王都の夜空。


 その一角が赤く染まり始めていた。


 黒煙が上がっている。


 悲鳴も、まだ止まらない。


「慣れたくはなかったですけどね」


 小さく呟く。


 ガナト。


 密輸船。


 武器。


 国家転覆を目論む組織。


 あれで終わりではなかった。


 火種は、王都にまで届いている。


 滝は燃え始めた街を見つめる。


「……始まったな」

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