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第2話 五連橋の追跡

 「至急、至急、本部から甘苦」


 「至急、至急、甘苦です、どうぞ」


 仁保が応答する。


 「五連橋において、指名手配の佐田仁がいるとの匿名の通報」


 「至急、現場に向かい、被疑者の発見、確保にあたれ」


 「発見の際は至急報をもって報告せよ」


 「甘苦、了解」


 「以上、警察本部」


 仁保が興奮した様子でこちらを見る。


 滝はすかさず地図モニターへ目をやった。


 橋までの距離は数分――だが、今はそれが遠い。


 しかし、署のパトカーも、刑事も、交通課員も対応中で、すぐに出せる車がない。


 「機捜10から、本部、甘苦。霞市から現場に向かう」


 「自ら20から、本部、甘苦。北甘苦から現場へ」


 本部直轄隊の応援は来る。


 だが遠い。


 その時、仮眠前の湯田が当直室の前を通り掛かった。


 「湯田部長、当直室へ」


 滝は即座に声を掛ける。


 「仁保さん、一緒に現場へ」


 「はい!」


 署に残っていたミニパト、甘苦11で現場へ向かう。


 橋の入り口に差し掛かった、その時だった。


 現場着の無線報告をしようとした瞬間、橋の手前にいた人影が、橋の向こう側へ走り出す。


 「仁保さん、無線で報告!」


 滝は無線のマイクを仁保へ放り投げ、車から飛び出した。


 深夜で顔は見えない。


 だが、パトカーを見て逃げた。


 それだけで十分だった。


 雨粒が顔を打ちつける。


 雷鳴が近づいてくる。


 木造の橋へ足を踏み入れる。


 濡れた板が滑った。


 踏みしめるたび、軋む音が響く。


 何度も修復されているはずなのに、その軋みは妙に古く、どこか不気味だった。


 前方を走る男の背中を見失わないよう、滝は距離を詰める。


 息が上がる。


 肺が焼けるように苦しい。


 それでも止まれない。


 橋の中央付近で、男が足を滑らせて転倒した。


 追いついた。


 立ち上がろうとする男へ飛び掛かる。


 ――一瞬、世界の音が消えた。


 その瞬間。


 大きな雷鳴と稲光が轟いた。


 視界が白く弾ける。


 その夜、滝はまだ知らなかった。


 この雷鳴が、自分の人生を変える合図だったことを。

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