第21話 祝! パーティ結成!
「さて、ルミアは無事にパーティを離脱をしたわけだが......まぁ、正式にはギルドに脱退申請をしておく必要があるけど、それはさておき。今後の俺達の活動方針を決める必要がある」
冒険者ギルドから抜けた後、俺達は噴水のふちに腰掛け、途中で買った串肉で小腹を満たしていた。
その際、俺は相変わらずルミアの膝に乗せられ、先ほどから頭を撫でられている。どうやらこれが彼女なりの”お仕置き”らしい。
恐らく、猫扱いを嫌う俺に対してそうすることでお仕置きの体を為しているのだろうが、俺からすればこんな甘いお仕置きがあっていいのだろうかと思うレベルだ。
どう考えてもご褒美の類だろこれ――と思いつつ、やっぱり恥ずかしくなってきたので、スー子の隣に移動してそのままリラックスするように寄りかかる。
「ボス、どうしたの?」
「ここが落ち着くんだよ。しばらく借りるぞ」
「ボスならずっといてくれてもいいよ!」
と可愛い元気な妹のような返答を受けつつ、悲しそうなルミアの視線からそっと目を逸らして言葉を続けた。
「ごほん......話を再開するけど、俺達はこれからとある目的のために行動する。
というか、ほぼ俺の個人的な目的のためだ。それはルミアも理解してるな?」
「はい、元の体に戻る方法を探すことですよね?」
「そうだ」
ルミアの言う通り、俺達のこれからの目標は「俺の元の体への戻り方を探す」ことだ。
元の人間の姿に戻る――それが俺が掲げた目標であり、最優先事項。でなければ、いつまでもルミアに猫扱いされるしな。
「しかし、それだけではない。ルミアは病気のお母さんのために冒険者になったんだろ?」
「覚えていてくれたんですか!?」
「大事な理由だからな。だから、ルミアの治療費を稼ぐ。
さらに万病に効くとされる”トコハナの果実”の情報も集めるのが当面の目標だ。
ちなみに、ルミアは一度故郷に戻らなくていいのか?」
「今回の報酬金で最低限の薬は仕送り出来たので大丈夫です。
お母さんは病院の先生だったので、一緒に仕事してくださっていた方が面倒を見てくださっていますし、それに私の故郷はそこそこ離れてますから。
それに今恩人出あるはトールちゃんのために一肌脱ぎたいんです!」
なるほどな、ルミアの現状と意気込みは理解した。なら、ここは彼女の意気込みに甘えて俺の都合を優先させてもらおう。
「オーケー、事情はわかった。なら、話を戻すぞ。
俺達はこれから情報を集めと行きたいところだが......現状、活動資金が心もとない。
加えて、新参者のパーティで実力不足で、なにより戦力不足だ」
「そうなんですか?」「そうなの?」
なんで二人して疑問の声をあげるのか? そりゃそうだろ。
もしや、俺一人がいればどうにかなってると思っていやしないか?
「俺もあの戦闘で強くなったが、それでも全てをカバーできるほど強くなったわけじゃない。
それに俺が怪我や病気で動けなくなった場合、俺一人に頼ってちゃその時点で動けなくなるだろ?」
「それは......そうですね」
「というわけで、まずは仲間を集める必要がある。そのついでに情報収集だな。
そこで、俺達には仲間を集めるためにとある行動が必要だが......なんだと思う?」
クイズ形式で出した質問に、ルミアが考えるように腕を組む。
そんな彼女の姿を見ながら、俺が風魔法で浮かせた串肉をスー子に与えて甘やかしていれば、ハッとひらめくようにルミアが手を叩いた。
「勧誘、ですか?」
「ほう。どのように?」
「そうですね。とにかく声をかけて......とかですかね。
ソロで活動している人は少ないですが、いないわけではありませんので」
「どこかのパーティに所属しようとは思わないんだな」
「考えましたが、今回と同じような結果になるのは嫌なので。
おこがましい話ですが、私達が審査する側に立って仲間にするべきだと思ったんです」
確かに、信用できる相手かどうか見極めるのは大事だ。
ルミアの件は、彼女の過失が大きいとはいえ、あそこまで酷く言われることはないだろう。
仮に、言えるだけの正当性があったとしても、あの依頼は違う。あれはただルミアを意図的に殺そうとしただけのものだ。
それはさすがに話が違ってくるし、そんなの仲間としてもおかしい。
そういう意味では、ルミアの意見は理に適っている。
今度は俺達の手で信用できる仲間を集める.....それが今後の課題になりそうだ。それにルミアの容姿なら妙な連中も来かねないからな。
「良い回答だ。となれば、俺達に必要なことが必然と見えてくるはず」
「そうですね、自分のパーティを結成してそこで募集をかけることが必要です」
「その通り!」
パチパチパチと音こそならないが、拍手をして讃える俺。
そんな俺の動きに触発され、スー子も真似るように手を叩き始めた。
「わかりました。では、すぐに申請を――」
「ちょい待ち。何も急いでやる必要はない。
早く戻りたい気持ちはあるが、急ぎの用ではないからな。
それにせっかくアイツらと顔合わせないようにしたのに、また会いに行くのも嫌だろ?」
「そんなことまで気を遣わなくていいのに......」
「他にも理由があるぞ。さっきの宣告でルミアがパーティを抜けたことが知れ渡った。
冒険者歴としては短いが、冒険者の中でも数少ない治癒師だ。日々、回復薬のために金策している冒険者からすれば、喉から手が出るほど欲しい人材。
なんせ仲間であれば実質タダで回復薬が使い放題なんだからな。それに加えて、ルミアは可愛い。これは勧誘待ったなしだ」
「か、可愛いですか......」
俺の言葉を聞いた瞬間、ルミアが頬に手を沿えて悶え始めた。
恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、体を軽くひねらせる。実にそういう所だぞ――男ウケがいい理由は。
純粋で真面目で世間体に疎い.....ダメだ、俺がこの子を守護らねば。この子をそう簡単にどこぞの馬の骨に渡してたまるか。
「ともかくだ、ここで勧誘を開始する必要はない。始めるとしても次の街からでいいだろう」
「わかりました」
「ちなみに言っておくが、その場合のパーティリーダーはルミアになるぞ」
「そうなんですか!?」
スー子のモチモチボディを手慰みに猫式マッサージをしていれば、ルミアが素っ頓狂な子を上げながら立ち上がった。
その声に視線を向けると彼女はそのままの姿勢で聞き返してくる。
「な、なんでですか!?」
「なんでって......そりゃそうだろ、今の俺は猫だし。
俺とスー子が今街の中に入れるのは、俺達がルミアの”使い魔”というポジションだからだ。
つまり、俺達のご主人様はルミアであり、パーティ運営はルミアが主導となる。そもそも冒険者には”人間”しかなれないわけだしな」
「そ、そんな~~~~」
俺の言葉を受け、ルミアがしなしなとその場に崩れ落ちる。
恐らく、彼女的には俺がリーダーであって欲しかったのだろう。実際、こうして会話を回してるのも俺だしな。
しかし、こればっかりは仕方ない。そういう運命なのだ。
ってことは、俺も使い魔登録しないとな~......いよいよ、世間一般的に動物扱いか。悲しい。
そんなことを思いながら、俺はその場で伏せて、噴水に飛び込むスー子を眺める。
そしてプカプカと気持ちよさそうに浮かぶこの子にぼんやり視線を送りつつ、言葉を続けた。
「ともかくだ、これからルミアは自分の意思でパーティを運営しなければいけない。
もちろん、俺も助けられる所は助けるが、それでも体外的にはルミアがリーダーになる。
仮にパーティが有名になれば、それなりの重責が降りかかるだろう」
その場で起き上がると俺は縁から降りてルミアの前に座る。
そして下から彼女の顔を覗き込み、
「だが、俺はルミアなら出来ると思ってる。
それこそ、さっきの元仲間に対して堂々と言い返して見せたルミアにならな。
ルミアの助けが俺には必要なんだ。それがきっと近道だろうから。だから、どうか頼む。俺を助けてくれ」
そう言って俺はルミアに頭を下げた。
なんとも情けない話だが、今の俺が信用できて頼れる”人間”はルミアしかいない。
そのルミアが冒険者として活躍し、人脈を広げてくれれば、それだけ情報が手に入りやすい。
そしてそれは結果として、俺の人間の姿を取り戻すまでのプロセスを短縮するはずでもある。
ルミアに余計な責任を負わせてしまう罪悪感はあるが、それでも俺にはこれしかない。
そんな言葉の後、ルミアはそっと俺を手で持ち上げた。
「頭を上げてください。そんなに必死に頼まなくても大丈夫ですよ。
確かに、私にそんな立場が務まるかはわかりませんが、それでも『やらない』とは言ってません。
私はトールちゃんに助けられた時から、この恩返しを必ずすると決めていました――一緒に幸せになるんですよね?」
「そ、そこでその言葉を引き合いに出すのはズルいだろ......」
「ふふっ、ズルい女の子は嫌いですか?」
「.......」
嫌いじゃないです、はい。ましてや、ルミアぐらいの可愛いズルなら。
しかし、それを正直に言うのはなんか恥ずかしかった。口がむず痒いというか、認めてしまったら負けというか。
もっとも、なんとなく見透かされているような気はするが。
「スー子も幸せになるぅー!」
瞬間、噴水からバシャンとスー子が水しぶきと共に飛び出してきた。
その水に濡れたボディは太陽光を反射して燦燦と輝く。
そして俺達の前に着地すると輝かしい笑顔を見せた。
そんなスー子の気持ちを汲み取ったようにルミアも微笑み、
「ふふっ、そうですね。スー子ちゃんもですね」
「......となれば、せっかくだしやってみるか」
そう言いいながら、ルミアにその場に下ろしてもらうと俺は噴水の縁に登る。
それからルミアとスー子に視線を配り、
「えー、俺達はこれから団結の証を作ろうと思います」
「団結の証?」
「簡単に言えば、共通のものを身につけたり、シンボルを作るってことだ。
例えば、全員が同じアクセサリーを身につけたり、アクセサリーは違えども同じ模様のやつを体の一部に持ったりとかな。そうして同じものを身につけることで、『俺達は仲間だ』という団結意識を作るんだ。
効果のほどはわからないが、裏切りにくくすることだってできるって話だぞ」
「なるほど、そういうことですか。確かに、有名なクランの一つが全員に同じ鉢巻を渡してましたね。
全員が同じ鉢巻で揃っていた時は、なんか凄い圧倒された感がありました」
「そういうこと。そうじゃなくても単純に仲間を一目で見つけやすいからな。というわけで――」
そこまで言うと俺は立ち上がり腰に手を当て、もう片方の手でビシッとルミアに手を向ける。
「まだ正式にパーティが始まったわけじゃないが、これが最初のリーダーの仕事だ。
ルミアはこれからパーティの名前とロゴを考えること」
「わ、私がですか......?」
「もちろん。俺だとどうにもセンスが怪しいからな。
それに実質ルミアのパーティとなるわけだ。
となれば、リーダーが決めなきゃ話にならんだろ」
俺の言葉に、ルミアは最初こそ面を食らったような顔をした。しかし、彼女はすぐに拳を作り、
「わかりました。必ずいいものを作ってみせます!
ちなみに、センスは私に一任するって感じで良いんですよね?」
「そうだな。ルミアの好きなようにしてくれて構わない。
それじゃ、俺は少し確かめることがあるから、スー子についてやってくれ。
別に急ぎじゃないからゆっくり考えてもらっていいぞ」
「いえ、既に脳内にイメージはあるので、すぐに完成させます!」
「あらそう。ま、出来たら教えてよ」
ということで、俺達は一度解散。ルミアと反対方向を一人歩きながら向かったのは、一つの宿だ。
その宿の近くにある木に登り、そこから二階の部屋を<遠目>で見てみるもものけの殻。
冒険者ギルドに訪れた時から感じていたが、どうやら元仲間は全員この街を発ったらしい。
一体どこへ行ったのか皆目見当もつかないが、一つ言えることは――、
「絶対俺の装備や道具は寝こそぎ売り払われているだろうな」
相手は俺を死んだと思っているだろう。まぁ、普通魔物が跋扈する森で猫にされりゃ、生きてると思わないし。
それでもやっぱり、俺がいない痕跡を見るのは少し寂しいな。
「用事も済んだし、たまには猫視点でのんびりして帰ろ」
そう思って帰ったその日の夜。ルミアが使用している宿屋にて、彼女は早速考えた案を見せつけてきた。
それは一枚に書かれた絵であり――、
「パーティ名はまだですが、ロゴは絶対これにしたいです!」
「これ.....俺じゃね?」
そのロゴは一言で言えば、「羽のついたテンガロンハットを被った猫の横顔」――つまり、俺である。
そしてその絵を見ながら、確かめるようにルミアを見れば、
「.......」
ビックリするほど目が輝いている。もはや、その輝きは圧にすら感じるレベル。
どうやらルミアは言葉通り、このロゴにしたくて仕方ないらしい。
まぁ、リーダーを押し付けたのは俺だしな。それぐらいは受け入れるか。
「今度はこれを形にしよう」
それから数日後、俺達は手元にロゴが入った青い布を手に入れた。
そしてそれを俺はスカーフのように巻き、ルミアはそれで髪をポニーテールにし、スー子は――、
「スー子はどうしよっか......」
「?......スー子も付けたい!」
「だよなぁ」
スー子だけはスライムボディなので、身に着けることが難しい。
巻くってことが出来ないしな。しかし、このままというのもなぁ。
そんなことを思っていると、ルミアが「こうしたらどうですか?」とササッと布を折り上げ、
「布でヴィアラを表現してみました。可愛くてスー子ちゃんに似合ってると思います」
そう言ってみせたのは、花のような形をしたものであった。
なんか昔に母さんが布遊びで「バラ」とか言って折って見せてくれたものと同じ感じだな。
それをルミアがスー子の頭に乗せると、スー子はそれを器用に掴む。
「スー子、似合う?」
「あぁ、似合ってるぞ」
「スー子ちゃん、可愛いです」
「やったー!」
俺達が褒めるとスー子は嬉しそうに飛び跳ねた。
というわけで、無事に俺達の団結も深まった所で、
「んじゃ、次の街に出発だー!」
「「おおー!」」
読んでくださりありがとうございます(*^_^*)




