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第19話 目標達成!

 レベルアップの影響で、念願のルミアとの意思疎通を可能とした俺。

 強敵だったデカベアを倒した余韻に浸りたいところだが、それと同じぐらい確かめたいことがある。

 そのためにも、一度自分のステータスを確認しておくべきだろう。

 というわけで、チビベアに「少し待ってて」と言うと抱きしめるルミアの手を叩く。


「ルミア、嬉しいのはわかったけど、そろそろ降ろしてくれ。

 それから預けていた俺のバッグにある冒険者カードを出してくれないか?」


「ぐすん......はい、わかりました」


 俺を下ろし、涙を拭ったルミアがウエストポーチから冒険者カードを取り出す。

 それを両手で掴むと魔力を流し込み、自身のステータスを確認した。


===ステータス===


名前:トール(朝霧徹) 性別:男(オス) 年齢:19 職業:なし【重戦士(ロック)】

種族:子猫精霊【人族(ロック)】 レベル:188(+140)


筋力:286

敏捷:408

防御:253

魔力:693

器用:81

運 :52


【技能スキル】

盾術:レベル5(ロック) 剣術:レベル4(ロック) 体術:レベル4 挑発:レベル3 

投石:レベル1(ロック) 盾殴り:レベル2(ロック) シールドバッシュ:レベル3(ロック) 

ウォークライ:レベル3 斬鉄壊:レベル2(ロック)

ひっかく:レベル5 かみつく:レベル3 尻尾を振る:レベル1

暗視:レベル- 追跡:レベル3 探知:レベル4 テイム:レベル3

夜目:レベル- 


【魔法スキル】

生活魔法:レベル- 魔力操作:レベル4 防御強化:レベル4 身体強化:レベル4

火球:レベル3 水弾:レベル2 ビリビリ:レベル1 風弾:レベル2 石礫:レベル2

フラッシュ:レベル2 暗幕:レベル1 雷電風:レベル1 炎槍:レベル2 石槍:レベル2

炎剣:レベル3 雷剣:レベル2 風弩:レベル1


【固有スキル】

会話術:レベル3


【称号】

女神の加護 重騎士の誇り(ロック) パワーファイター 

会心の重撃 鈍重の鉄塊(ロック) 迷い人 追放されし者 人を辞めし者 

精霊になりし者 (NEW)魔神の敵対者

(NEW)魔神の眷属を討伐せし者(虚) (NEW)蛇龍神の分け身を打倒せし者 

(NEW)ジャイアントキリング (NEW)種族を繋ぎし者


======


「な、なんじゃこりゃ......」


 このステータスを見てまず思ったのが、俺のレベルが上がり過ぎということ。

 このレベル帯になるともはや冒険者の中でもかなりの上位ランカーと言っていい。

 もちろん、元が凡人なので完全な相場はわからないが......強いことは確か。


 にしても、まさか猫になった後の方が人間の頃より強くなるなんて。

 嬉しい......ちゃ嬉しいんだが、なんだか複雑な気分でしかないぞこれ。

 んで、技能スキルや魔法は良いとして......次は固有スキルだ。


「恐らくこれが原因だな」


 ここの<会話術>が「2→3」に上昇している。

 今までにっちもさっちも上がらなかったこのスキルが、ここで上がってみせた。

 だから、俺はルミアやスー子と円滑なコミュニケーションが取れるようになったのだろう。


 となると、このレベルアップにおける解放条件が種族の違う相手と一定数の会話をこなすとか?

 わかるかそんなもん! しかも、これたぶん会話が通じない相手とって感じだろ?

 こんなの、それこそ俺が猫にでもなければ上がらなかったじゃねぇか!


 っと今までのうっ憤はあれど、同時にコイツのおかげでルミアとスー子と会話できるのだ。

 なら、今の俺からすれば感謝するしかない。これで会話テンポのストレスから解放されるってもんだ。


「そんで正直、それ以上に気になるのが......この称号だよな」


 称号の一部には、スキル威力や自身のステータス自体に影響を及ぼすことがある。つまり、基本的に称号は得ておいて損することはない。


 例えば、「ジャイアントキリング」なんかは良い例だ。

 これは自分より強者相手になると攻撃力にプラス補正が入るのだが......レベル上がっちまったしなー。

 ともあれ、それはまだいい。問題は次だ。


 「魔神の敵対者」ってなんだよ。なんでいつの間にか敵対してんの? 嫌だよ、そんな相手とバチボコやりたくねぇよ! 俺はもうすでにこの世界で三年暮らして身の丈ってものを理解してんの!


「つーか、この称号で世界の裏でなんかヤバイこと起きてんの丸わかりじゃん......」


「どうしました?」


「いや、なんでもない......」


 ルミアに様子を伺われ、俺は首を振りながらステータス画面をそっと閉じる。

 こう言っちゃ悪いが、俺は魔神なんかを倒すより元の姿を取り戻す方がよっぽど大切だ。


 それにこの世界にも「勇者」と呼ばれる存在がいるだろ、知らんけど。世界の問題は、世界の救世主たるそいつに任せればいい。

 というわけで、俺がそんな壮大な冒険に自ら赴くつもりはない。


「にしても、その冒険者カードが開けるなんて......もしかしてトールちゃんは本当に人間?」


「やっぱりそこは信じてなかったんだな......」


「すみません。見た目が猫なので、どうしても意識がそっちに引っ張られてしまって」


「いいよ、今更だし。それにせっかくしゃべれるようになったことだし、改めて俺の事情でも話しておくよ」


 それから休憩がてらに、俺は自分が猫になった経緯を話した。

 さすがに迷い人であることは面倒なので伏せたが、パーティーから強制追放された挙句に反抗出来ないように猫にするというまさに鬼畜の所業をされ、その身一つで森に投げ出された俺はそこでスー子とルミアに出会い、色々あって今に至る――そんな話をした直後、珍しくルミアの顔が怒ってることに気づいた。あのデフォルト下がり眉が怒りによって釣り上がる日が来るなんて。

 その新鮮な表情に見惚れているとルミアは口を開き、


「そんなの酷いです。確かに、人には得意不得意があってそれによって立場も状況も変わると思います。

 ですが、そんな一方的な理由で追放して、挙句には猫にするなんて......」


「ぶっちゃけ猫になったのは運だと思うよ。かけられた魔法は本人でも何に変身するかわからなかったみたいだし。

 だからまぁ、この姿だけは不幸中の幸いという感じかな」


 そんなことを言うと、途端にルミアは微笑みながら俺を見る。


「優しいですね.....そんな目に遭っておきながら、見ず知らずの私の力になってくれる。

 私の悩みを聞いて一つの答えを示してくれて、それで恐怖で動けなくなった私を庇って.......あっ」


 瞬間、慈愛の眼差しを送っていたルミアの顔が急速に赤くなる。

 加えて、ただ頬が赤くなっただけではなく、耳までゆでだこのように真っ赤にするほど。え、何事? 怒ってる感じではなさそうだが.......。

 そう思っていれば、ルミアはそっと両手で口元を塞ぎ、横目で俺を見ながら、


「と、ということは......私は男の人の前で......その、は、裸になっていたってことですよね......」


「あー......」


 あの絶景......ゲフンゲフン、裸ノーエプロンの時のことね。

 あれはまぁ、濡れた服を乾かすって意味合いもあったし、仕方ないというべきか。


「挙句に、男の人を膝の上に乗せて食べさせて......どうりであんなに紳士的な振る舞いを――ああああぁぁぁぁぁ! 死にたい! 穴があったら潜って大地の一部になりたい!」


「.......」


 目の前でルミアが両手で顔を覆ったまま、その場で亀のように丸くなる。その光景を見て、俺はかける言葉が見つからなかった。

 仕方ない、これは俺には救えぬ類の悩みだ。この恥ずかしさは彼女にしかわからないだろう。とはいえ、全くの無言も辛いな。


「で、でもさ......ほら、俺も同じようなもんで。

 そうじゃん、俺は常に真っ裸(まっぱ)で歩いてるようなものじゃん!

 こんな恥ずかしい奴がすぐそばにいるんだ。だから、恥ずかしがらなくていい!」


「でも、トールちゃんは猫ですし......恥ずかしがってるようには見えませんし」


「それは......」


 まぁ、この姿で過ごすようになり始めてから恥ずかしさは確かに感じない。

 この全身を覆う毛が常に服を着てるような気分を感じて、特に気にならないのだ。

 そんな俺の言い淀んだ反応を見て、チラッと俺の反応を見ていたルミアはもう一度塞ぎ込む。


「わあああああぁぁぁぁ! 死にたいいいいいぃぃぃ!」


「.......どないしよ」


 と呟きつつも、どうにも出来やしない。

 とりあえず、彼女の中で折り合いがつくまでスー子でも相手でもよ。

 ってそういえば、スゲー今更だけど、俺はいつまでスー子を「スー子」って呼んでんだ?


「スー子。そう言えば、ちゃんとした名前つけてやるって言ってたのにずっとほったらかしにして悪かったな。今付けるから待っててくれ」


「え? なんで? スー子はスー子でしょ?」


「そうだけど、そんな安直すぎる名前は嫌だろ?」


「そんなことないよ! スー子はボスがつけてくれたこの前好き!

 だから、スー子はこれからもずっとスー子だよ!」


「......そっか」


 あまりにも雑な名付けだからと気にしていたが、本人が気に入っているならいいか。

 そうこう話していれば、ルミアがのっそりと上半身を起こす。


「落ち着いた?」


「はい......なんかもうトールちゃんならいいかなって。いや、年上なのでトールさんでしたか」


「それで落ち着くのもどうかと思うけど。それから、別に呼びやすい方で良いよ。

 慣れちゃったならそっちで良いと思うし、俺は気にしないから」


 それこそ俺も「ちゃん」付けは少し恥ずかしかったが、ルミアならまぁいいかと思えるし。

 俺自身も逆にそう呼ばれる方がしっくりくる感じがある。慣れは恐ろしいな。

 そんなことを思っていると、ルミアはチラッと視線を向け、


「それで......人間に戻った後はどうするんですか? もしかして、復讐とかするつもりなんですか?」


 その質問を口にする温度は、先ほどの言葉と違っていた。さっきのが温かいとすれば、こちらは冷たいというべきか。

 俺が事情説明の際に見せた態度が気になっているのだろう。まぁ、だいぶ恨み節強めに言ってたしな。

 とはいえ、そう不安そうな顔をするな。


「いや、その予定はない。もはやどうでもいいとすら思ってる。

 俺は俺の幸せのために時間を使って、人間に戻って好きなことを謳歌したいだけだ。

 ま、見返したいって気持ちがないわけじゃないけどな」


「......やっぱりトールちゃんは私の信じた人でした。なら、きっとあの時の人は――」


「あの時の人?」


「いえ、なんでもありません。気にしないでください」


 なんだか慌てて否定するルミア。妙に顔が赤い。

 そんな彼女を怪訝に見ながら、思い出したように俺は祭壇に移動して近くに生えるミダモフルーツを回収。

 そしてそれを地面に置くと――、


「それはそうと、あんな事情を話したばっかだが、実は元に戻れる手段が見つかったんだ」


「本当ですか!?......もしかして、その果実に魔法を打ち消す効果が?」


「あぁ、そうだ。だから、これを食えば元に戻れるかもって話だ。

 幸い、量は十分にあるし、少しだけもらうぞ」


 そう言って採取したミダモフルーツを両手で挟み、そのまま噛り付く。

 人間の歯じゃないので相変わらず苦戦しながらも無事完食。

 その瞬間、俺の体がパァっと光り始め――、


「......すぐに消えたな」


「.....ですね」


「だね!」


 まるで線香花火が燃え尽きる前の最後の強い光のような一瞬の輝き。しかしその後は何事もなかったように反応なし。


「だああああぁぁぁぁ.......」


「だ、大丈夫ですよ! 次はきっと見つかります! それにその姿も可愛いですよ!」


「ボス、可愛い!」


「だああああああぁぁぁぁぁぁ......」


 その褒め言葉にも程よくメンタルがやられるも、こうなってしまった以上仕方ない。

 もうしばらくはこの体と付き合うことになるようだ。


「あのー、それで僕はいつまで待てば.....」


「あぁ、ごめんごめん。そうだな、俺達を森の表層まで連れてってくれ」


 ずっと放置プレイをくらっていたチビベアに、電車代わりになってくれることを頼んだ。

 それから俺達はチビベアの背中に乗りながら、のっそのっそと数日かけて表層に辿り着く。

 そして森の入り口でチビベアに別れを告げると、今度はルミアに向き合い、


「それじゃ、ルミアともここでお別れだな」


「うん、お別れだね」


「え......どうしてですか?」


「だって、ルミアはパーティに許してもらうためにこの依頼を受けたんだろ?

 ってことは、それが達成された今、ルミアは元もパーティに戻る。

 そうなれば、俺とは違う道を歩むことは必然だ。スー子は俺の相棒だからこっち側だしな」


「あぁ、そういうことですか。それなら、実は考えがありまして――」


 そう言って、ルミアは一つの選択を俺達に伝えた。

読んでくださりありがとうございます(*^_^*)


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