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NOAH -ノア-  作者: 孝乃 (編集中)
第2章『関東エリア解放篇』
24/26

Lood..020 vs スカルライダー(5)

 突然出された妹――…乃愛(のあ)の名前に呆然となるナツキ。



「…なぜ…乃愛(のあ)の名前を…?」

「おいおい、そんなに驚く程の事ではないよ。おれは第2次のβテスターとして、何度か君に会っている。もちろん、君の彼女(アイリ)さんとも」

「…え…」



否定の言葉も出てこない程に動揺しているのか?ただヒデの目を疑問の眼差しで見つめるだけのナツキ。否定が無ければ肯定。何の引っかかりも無いヒデは言葉を続けた。



「初めてβテスターとしてログインした時だ。テスター100人を5班に分けた班でノアさんと一緒で、その班の案内役としての君に習ったんだよ」




◆◆◆――…




  3年前―――



 景色は広い草原地帯。周囲には背の高い木々が所々に生えている。その中に立つのはゲームアバター姿のナツキ。そして向かい合うように20人のテスター達が立ち、ナツキの説明を聞いていた。


テスター達の姿は全員が人類種(ヒューマン)で、初期装備の革の胸当てに、ハンディソードを差した姿。



「それでは今から戦闘の仕方を説明を始めます。まずはパーティメンバー無しのシングルバトルからです――…」



続く説明を聞く中、テスター姿のヒデの前で1人の少女が、並ぶ同じくらいの少女に寄った。



「ねぇねぇ、あの人がノアのお兄さん、ナツキさんなんだよね?」

「うん、そうだよ。あれが私のお兄ちゃん。妖精種(フェアリー)姿もかっこいいでしょー?」

「おー出た出た、底無しブラコン発言。あいかわらずおアツいですな~」

「もぉ~、またそうやってバカにする…私はブラコンじゃありませーん」

「ほ~。スマホ待受は兄妹写真、って女の口がよく言うわ」

「わっ、それ言わないでよ!」



っと大きく上がるノアの声に、以外のプレイヤー達の驚きの視線が集中。その光景に、説明役のナツキは「コホン」っと咳払いを1つ。



「何を言わないでほしいのでしょうか?それとも説明が要らないとでも?」



そう注意を受けるノアは、真っ赤になる顔で「ごめんなさい」と小さく謝った。


そして再開するナツキの説明の中、いかにも「あなたのせいで怒られた」的な、肩での軽い体当たりを並ぶ少女にするノア。当てられた少女は笑いを堪え切れないのか、顔を伏せ肩を揺らしていた。その姿にノアはフンっ!っとそっぽを向き、頬を膨らませた。


一連の流れを目の前にしていたヒデは、少女達の名…ナツキの妹と言われた少女のステータス表示、〔Lv.1 Noah(ノア)〕をしばらく見つめた。




◆◆◆――…




「ユーザーネームか本名か…ゲームと同じ名前だったから印象に残っていてね。それに、100人のテスター内の成績トップ3に入ったあの子を忘れる訳もない」

「……なら…」

「ん?」

「今…今ノアは何処にいるんで――…」




 …――ピピピッ!




ナツキが言葉を言いかけた瞬間、突然ナツキにヒデ、2人前にメニューが立ち上がる。そのメニューに、ナツキも言葉を止め、各々視線を向けた。



「ん?これは〔緊急メッセージ〕…キヨマルからか」

「僕にまで…まさかっ…!」



安全区域で待機中とまで知るナツキからすれば、この緊急メッセージは"何か"が起きたとしか想像出来ない。慌てメニューにタッチし、メッセージを開くナツキ。



「『スカルライダーに遭遇。D7-14番地にてマーキング成功。南西の方角へと現在移動中。〔広域マップ〕スキル保持者の追跡求む』…っ、アイリ!!」



スキル〔広域マップ〕を持つプレイヤー、アイリに振り返るナツキ。するとキヨマルからのメッセージは、この場にいる全プレイヤーの前に立ち上がっていた。当然呼ばれたアイリも既読済み。


するとアイリの視線はナツキに向き、すぐにプレイヤー達の中に立つエリコに向いた。



「あなたも〔広域マップ〕スキルあるでしょ?」

「うん、あるよ」



っと頷き返すエリコの横には、ベースは無表情だが、ほのかに頬を赤らめ、ヒートのウサギの耳をモフモフと触り続けるチエコの姿が。ヒートは居心地の悪そうな表情を浮かべながら、アイリに「やめさせてくれ」っと言いたげな目でチエコを指差している。おそらくだが、あらゆる抵抗も空振りだったのだろう……


しかしアイリは「はいはい」と手を振り、エリコを見てメッセージを指差した。それに頷き返すエリコ。



「おれも一応スキル保持者だ」



っとヒデがナツキの肩を叩く。そしてヒデはプレイヤー達を見渡し、声を上げる。



「他にもいるか?〔広域マップ〕使いは!」



すると3人のプレイヤー…ユーザーネーム【ユージ】、戦士風の柴犬の獣人種(ビースタント)。【コマ】と【セン】の名を持つ、忍び装束の人類種(ヒューマン)の女性プレイヤーが前に出た。



「6人もいるわね。ナツキ、あたしらどう動く?」

「それなら南西方角へ向け、各プレイヤー6方向に扇状展開。マップに探知した時点でメッセージを飛ばし、集結後に戦闘開始でいこう」



確認し合うようにアイリらを見渡すナツキ。応えるように頷くヒデは、僅かにズレた眼鏡を調えた。



「そうとくれば、扇状の90度間はレベル的におれとアイリさんで行った方が良さそうだな」

「そうね。賛成よ」

「じゃあ後の対応は、司令官(ナツキ)に任せるとしよう。さぁ、おれ達は散るぞ」

「お願いします皆さん!《敏捷性上昇(アジリティインプルーブ)》!!」



アイリをはじめとした6人のプレイヤー達のステータスに、上昇効果のアイコンが付くと同時に駆け出すプレイヤー達。


展開は向かい右からセン、アイリ、コマ、ユージ、ヒデ、エリコ。道を行く――…っと言うよりは、瓦礫に建物などに飛び、そしてまた飛びのアクロバティックな動きで散っていくプレイヤー6人。上昇した敏捷性により、彼らが視界から消えるまではものの数秒だった。




 戦場跡地に残るプレイヤーは24名。ナツキらが合流後の戦闘での死者はいない。それぞれのLGを確認するナツキの腕に、ガバっとセレアが抱きついてきた。



「うわっ…どうしました?セレアさん」

「ナツキ様~、邪魔者(アイリ)さんもいません事ですし、2人きりでゆっくりと待ちましょ♥」

「何を言ってるんですかセレアさん。僕達はゆっくりなんて出来ませんよ」

「どうしてです?」

「捜索の6人は単独行動中。もしもの際に対応出来るよう、小数パーティを組んで追います」

「で、でしたらわたくしはナツキ様と――…」

「一緒では駄目です。レベル的に僕とセレアさんは分かれるべきです」

「わっ…別れるですって!?まだお付き合いもしていないのに別れるだなんて――…ふぐぁ!!」



『わかれ』違いに異常反応するセレアの口を、背後から覆うゴンザレス。そのままセレアの身を横に「はいはい」っとどけた。



「…――っぷは!いぎなし何すんだっぺ!?このゴリラっこが!」



っと、当然の如くに訛って抗議するセレア。だがその光景は既に予測済みなのか…ゴンザレスはすぐさまナツキの腕をセレア越しに掴み、ナツキの手がセレアの頭に乗るように置いた。



「え?ちょっ、何なんで――…」

「ほれ、『(ナツキの)なでなで』や」

「え、あ、なでなで…」



ゴンザレスの言葉につられ、ナツキはセレアの頭をなでなで。するとセレアの表情は至福の時を感じた時のように、ほわぁ~っと天に召される表情となる。


静かになったセレアを見、ナツキに向いて口を開くゴンザレス。



「分かれる()うなら、どないして分けるんや?レベル上位者6人でパーティ分けか?」

「いえ。パーティ分けするなら、僕を除いた4班にします。出来るだけプレイヤーの数を減らさずに4方向へ散り、中央を僕とヒートさんで追います。各パーティには回復魔法を使えるプレイヤーを均等に分ける。そうする事が1番でしょう」

「お前とウサ公って、そんなん危ないやろ!お前しか戦えへんやないか…」

「これは戦いが目的ではありません。スカルライダーの捜索、及び先行の6人のカバーリングです。数で押し寄せるボーンナイトを相手にするともなれば、最低でも1パーティ4人は必要と思います」

「ナツキ様は風精霊(シルフ)の羽根を使えますから、単独でもボーンナイトの襲撃は無くなる。っという訳ですね?」



セレアの言葉に頷き返すナツキ。ゴンザレスは少し考え、ため息と共に頷いた。



「…そうか。お前さんがそう()うなら、それに乗っとくわ。ほんなら、ナツキを除いた高レベルプレイヤーは…セレアお嬢ちゃんにチエちゃん。あとワイと…」



っとプレイヤー達を見渡すゴンザレスだが……



「あれ?…チエちゃん?」



その見渡した視界には、チエコの姿が無い。



「あららら?チエちゃんがおらへん」

「え?…本当だ、いない…」



同じく視界を廻したナツキも、チエコの姿を発見する事が出来ない。加え、重要な人物(アバター)の姿までも……



「あ、あれ…ヒートさん?」



チエコを捜した目には、ヒートの姿は見られない。何度も必死に見渡すも、どこにもヒートの姿は無かった。


すると1人のプレイヤー…ゴンザレスのような黒の西洋風の鎧兜をまとった、小人種(ドワーフ)の男性プレイヤーがナツキらに歩み寄る。



「なぁ団長。ヒートって、あのウサギのヤツの事か?」



ゴンザレスに対し『団長』と言った彼は、おそらくはゴンザレスのギルド『ゴッド・スパルタン』の団員なのだろう。



「おぉそうや。どこ行ったか知ってるんか?」

「それならさっき、チエコさんが抱いたまま行っちゃったけど」

「はい!?抱いたままって、連れてっちゃったんですか!?」

「あぁ。ヒートってヤツの(ウサギ)耳を触りながら、周りをキョロキョロと見てから急に震え出したんだ。そしたら、ヒートの体をまるでぬいぐるみみたいに抱きしめて、慌てた様子で走り出したんだ」

「走り出したって、どっちにですか!?」



そう問うと、小人種(ドワーフ)のプレイヤーは、スカルライダーが飛んでいったであろう6人のプレイヤー達が向かった方角とは、まるで真逆の方向を指差した。


これにはナツキとゴンザレスはキョトーンと見合い、同時にため息。そして頭を抱える。



「うっわ~…まさかエリちゃん追ってったんか…」

「じゃあ何でヒートさんを…人見知りのはずですよね?チエコさんって…」

「確かに人見知りや…でも、モフモフした獣人種(ビースタント)は別なんや…だからわざわざアバター作り直して、『強い男』っちゅう意味でゴリラにしたのに…」



っと後半はブツブツと言い出すゴンザレスに苦笑いを返し、ため息をつくナツキ。



「なら何でヒートさん、何も言わずに行くんですか…」

「いや俺見てたけど、ヒートってヤツ泡吹いて気ぃ失ってたぜ。チエコさんに腹を(抱き)絞められてたみたいだったし」

「それって『迷子が怖くてぬいぐるみ強く抱きしめる』パターンやないか…あんな小っさい体でも、チエちゃんはパワーファイターやから尚更や…」

「しかも逆方向ときましたか…」



ナツキはアイリ達が向かった方向を見、チエコが向かった方向を見直すと、難しい表情を浮かべて後頭部を掻いた。



「では、僕が2人を連れ戻します。ゴンザレスさんは皆さんと先行の後追いをお願いし――…」

「アホ、何言()うてんねん。お前が行ったら、誰がスカルライダー戦の指揮をとるんや。それに回復役としてお前がおるから、あれから誰も死んどらんのやぞ。だからナツキ。お前は前線に進まんとダメや」

「なら誰が2人を――…」

「ワイや。ワイが2人を連れ戻しに行く」

「ゴンザレスさんが…ですか…?」

「そうや。我らギルド『ゴッド・スパルタン』のアイドル、チエリコ姉妹を迎えに行くんは、そらもぉーワイしかおれへんやろ?な?」



っと、小人種(ドワーフ)のプレイヤーを、同意を求むような笑顔で見るゴンザレス。



「ま、団長はチエコさん派っスからね。俺はエリコさん派だな~」

「いやワイはエリちゃんも好みやからどっちも――…って好みの問題やあらへんがな!」



団員にツッコみ、咳払いをするゴンザレスはナツキに向き直る。



「とにかくやナツキ、ワイはチエちゃんと(一応)ギルドとは違う繋がりの〔戦友(フレンド)登録〕しとんねん。そんでもって〔(※)追跡(ついせき)〕スキルの使い手や。だからワイならチエちゃんを追える」


(※)…ギルドや戦友(フレンド)に登録している仲間が、10分以内に歩いた足跡を視界に映し出す事が出来るスキル。


「し、しかし1人では…」

「大丈夫やって、心配すなや。ワイは防御力特化型の【重戦士(じゅうせんし)】や。さっき(もろ)うたポーションもあるんや、ボーンナイトの攻撃なんぞ問題あらへん。それに、こう見えても一応はギルドの(かしら)張ってんねん。しっかり状況を見据えた形で2人を連れ戻したる。ウサ公の事はワイに任せろやって」



まっすぐに見つめるゴンザレスの視線に、少し考えたナツキ首が、ゆっくりと縦に揺れた。



「…そう、ですか…わかりました。ではお願いします、ゴンザレスさん」

「おう、任せんかい」

「でしたらセレアさん」

「はい?」

「ゴンザレスさんと共に、ヒートさんとチエコさんの2人を追って下さい」

「はぁ!?何言()うてんねん!お嬢ちゃんをワイに同行させたら、前線が薄くなるやろ!?」

「なら後追いの4班を2班に変更し、班を厚く、堅く作り進行しますから大丈夫です。それにゴンザレスさんがチエコさんと合流出来ても、回復役がいません。もし乱戦となった場合、ゴンザレスさんは広範囲の攻撃を持っていません。だから単独でも戦えるくらいの白魔導士(しろまどうし)の方が、危険度は低くなりますから」

「…そか、わかった。ならセレア嬢、すまんがおっちゃんと一緒に行ってくれんか?」

「いやです」



サラっと笑顔で断るセレアに、「何でやねん!」っとズっコケるゴンザレスにナツキ。



「いやいやおかしいやろ!聞いてた!?聞いてたんか!?今までの流れやったら、そこは『はい』やろ普通!」

「な、何でですか!?何か不都合でもあるんですか…」

「いえ。ナツキ様からお願いされたいだけです」

「安っ!理由安っ!」

「じゃあ…お願いします…」

「はい、喜んで」

「軽っ!軽い上に切なっ!ワイ切なっ!」



今度はあっさりOKしたセレアにコケるゴンザレス。すると突然、ゴンザレスの目の前にメニューが立ち上がる。



「ん?何や…『Player(プレイヤー) Yu-ji(ユージ) Died(ダイド)』…ッ!!ユージが死んだやと!?」

「なっ…!?」



この通知メッセージは、ギルドに所属しているメンバーがGAME(ゲーム) OVER(オーバー)となった場合、団員全員に通知になるもの。つまりプレイヤー『ユージ』はゴッド・スパルタンの団員であったという事。その通知はゴンザレスだけでなく、待機中のプレイヤーの中にいる、ゴッド・スパルタンのメンバー達にも表示された。


すると待機中のプレイヤー内で、また別の通知メッセージが立ち上がる。それはセレアと共に回復部隊に廻っていた、2人の白魔導士(しろまどうし)の女性プレイヤーらの目の前。



「…えっ、コマもGAME(ゲーム) OVER(オーバー)ですって!?」



ユージに続き、探索に向かったプレイヤーの死の通知に、周囲がザワついた。



「ナツキ様、中央に向かった2人ですわ!」

「中央で何がっ…!!」

「おそらくそこにスカルライダーがいるか、【デッドロデオ】が現れたかですわ」

「【デッドロデオ】…?何ですか?それは」

「え?知らないんですか?そのレベルですのに、ナツキ様はスカルライダー戦は初めてですの?」

「実際に戦うのは…」

「そうでしたか。【デッドロデオ】とは、スカルライダーのLGが残り1本となるとフィールド内に出現するボスエネミーですわ。容姿は鎧をまとうゾンビ化したお馬さんで、スカルライダーと同じくらいの大きさをしてるのです」

「えっ、レイドボスが追加されるんですか!?」

「いえ違いますわ。デッドロデオ自体はさほどの強さではありません。Lv.30オーバーの1パーティで倒せるくらいです。ですが、このデッドロデオがフィールド内を駆け回る間にスカルライダーと出会ってしまうと、エネミー同士が融合し、新たなボスエネミー【"蛮骨(ばんこつ)銀騎手(ぎんきしゅ)"シルブファングランサー】となります」



セレアの話しに、ナツキは制作段階を振り返る……




◆◆◆――…




夏輝(なつき)先輩、ちょっといいっスか?」

「ん?どうしたんだ(ひろ)

「関東エリア解放のレイドボス、スカルライダー戦のイベント企画、こんなんでどうっスかね?」

「……徘徊する新たなボスエネミーに融合…いいじゃないか。これ面白いよ」

「ホントっスか!ならシステムテストまで許可もらえるっスか?」

「うん、是非やってほしいよ。テストの時には声をかけてくれ」

「よっしゃー!ありがとうございますっス!」




◆◆◆――…




「…――そうか…けっきょくテストはオージロウがやったから、すっかり忘れていた…」



面白いと思って作ったクエストが、現状を悪化させているやもしれない今に、グっと唇を噛み締めるナツキ。そんなナツキの姿に、慌てたようにフォローするセレア。



「だっ、大丈夫ですわよナツキ様!デッドロデオは2体いて、1体の融合だけならエネミー形状と攻撃パターンが変わるだけ。2体の融合で完全体となり、(敵の)ステータス値が上昇するので、2体の融合さえ阻止出来れば楽勝ですわ。そもそもこの広大なフィールドで、互いに呼び合わない者同士が出会う確率は低い…今まで完全体のシルブファングランサーを見たプレイヤーもいないと聞きますし…」



必死にフォローしてくれるセレアに、ナツキはゆっくりと視線を向け、微かに笑って応えた。少なくとも今、2人の人間が死んだ……この事実にその笑みすらもくすんだものである。真意は知らずとも、感づく"何か"に、セレアは何も続けずに視線を下げた。


ナツキはセレアから視線を外し、ゴンザレスに向くと…



「ゴンザレスさん…?」



ゴンザレスは脱力感のある背中を見せたまま、棒立ち状態。ナツキの呼びかけにも答える様子は無い。


ナツキから、このゲームの現状を知った上で通知となったギルド団員の死…内からくる喪失感に、思考から全てを停止しているように見える。



「ゴン…ザレスさん…」

「………」

「ごめんなさい…僕が彼らを1人で向かわせたから――…」

「…ナツキ…」



ゴンザレスの力の無い声が、ナツキの言葉を切った。



「なぁ、ナツキ…ユージは…ユージはホンマに死んだんか…?」

「…はい…」



震えるようなゴンザレスの声に、ナツキはひと言しか返せず、黙り込むだけ。少しの沈黙を残し、再び口を開くゴンザレス。



「ユージ…アイツはワイの親友なんや…現実(リアル)の昔馴染みで、ガキの頃からずっと一緒だった……このゲームもな、ユージと徹夜で並んで買ったんや…そのユージが死んだんか…」

「………」

「ナツキ…ホンマはこれ…嘘なんやろ?イベントかなんかなんやろ?」

「…いえ、これは事実。ゲームで死ねば、現実(リアル)でも――…」

「何でや…」

「え…」

「何でや!!何でアイツが死ななアカンねん!!」



突如張り上げられた声に、ナツキとセレアは驚き動きを止める。そして他のプレイヤー達もゴンザレスに視線を集めた。



「アイツは…ユージはな…来週子供が生まれんねん…」

「っ…!!」

「最近結婚してな、嫁さんに『ゲームやめて家庭に子育てに燃えるわ』宣言しとったんや…だからこのクエストが引退試合やって…」



ゴンザレスは肩を震わせながら、ゆっくりと振り返る。その表情は、恐ろしい程に感情無き表情。



「ゴ…ゴンザレスさん…」

「何でなんや、ナツキ…何でアイツは死ななアカンねん…これ、ゲームやろ?ゲームなんやろ!?」

「…ごめんなさい…」

「何謝るんや!!ゲームなら、また復活出来るんやろ!?蘇生出来んねやろ!?ゲームなんやからユージは――…」

「戻りませんッ!!」



迫るゴンザレスを跳ね返すように、更なる声を上げたナツキ。



「ユージさんは…死んだんです……このゲーム…僕が生み出したこのゲームによって殺されたんです!!ユージさんにコマさん!彼らは今、僕が殺したんです!!」



突然の言葉に、周囲のプレイヤー達がザワめき出す。



「ナツキ様…?何を突然おっしゃっているのですか?ナツキ様が彼らを殺すだなんて、意味が――…」

「セレアさん…」

「はい…?」

「皆さんにも、聞いて頂きたい事があります」



そう言って、ザワつくプレイヤー達の方に向くナツキは言葉を続けた。

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