Lood..017 vs スカルライダー(2)
『全力』と告げたナツキは、ヒートの返事を待たずして身を屈め、手にした杖を地に突き立てた。
すると突如、ナツキの背中に薄く緑に透き通る紋章が浮かび上がる。手の平サイズで、肩甲骨を挟むように現れた紋章は、まるで鳥類の翼をイメージしたような形。それを見たヒートにゴンザレスが驚きの表情となる。
「うわっ!何だこりゃ!?」
「何やナツキ…お前、【風精霊】の使い手やったんか!?」
「し、しるふ…?」
っと次の瞬間、その紋章から同色の羽根4枚が両手を広げたくらいの大きさに広がった。
「うお!今度は何だよ!?」
「飛びますよ。しっかり掴まってて下さい」
「は!?飛ぶ――…ってどわぁぁっ!!」
ヒートのリアクションの中、現れた羽根は小刻みに羽ばたき、ナツキの体が浮かび上がる。そして1回、大きな羽ばたきを見せた瞬間、ヒートを乗せたナツキの体は急加速。一気にスカルライダーの元へと急接近。
風精霊の羽根と共に空を飛ぶナツキの姿に、スカルライダーと戦うチエリコ姉妹とヒデの目も見開く。
「風精霊の使い手か!?」
「うわっ、すごぉーい!」
「だけじゃないのよん、ウチの室長は…」
その声に笑みを作るのはアイリ。構えた銃の空薬莢を地面に撒く――…瞬間、アイリの体を足元から頭へと、緑色の光を帯びたリングが上がっていく。するとアイリのステータスの名前の横に、『ブーツ』に『翼』のマークが付け加えられた新たなアイコンが表示された。
「おっと、《敏捷性上昇》ときましたか、ナっちんちん――…って、ふわぁぁぁぁっ!!」
突然アイリの体は、腰に巻いたポーチに引っ張られるように空へと引き上げられる。そして巨大なスカルライダーの頭上へと一気舞い上がる中、見上げた視界にはナツキがポーチを片手で掴んでいる姿が。
「ちょっと!どこ掴んでんのよ!?」
「その呼び方はヤメてくれと言ったはずだが」
「いやだからって掴み方乱暴ぉ~!」
「文句はいいから弱点属性を見るんだ」
「とっくに《ウイークサーチャー》かけてるわよ!火属性が弱点よ、スカルライ――…だぁぁぁっ!!」
突如アイリの体を引き上げる浮力が消え、空中で1回転する視界。その視界では、ヒートを乗せたナツキが通り過ぎていく様子が映る。
「じゃあアイリ、火力全開で頼むぞ!」
「いやん鬼畜ぅぅ~っ!!」
悲鳴と共に落下していく体はスカルライダーの顔の前へ。するとナツキは手にした杖先をアイリに向け、
「《スカイステップ》!!」
その呪文と共に、アイリの落下ポイントには直径5メートル程の空中に浮かぶ、黄金色の魔法陣が展開される。その魔法陣に向かうアイリの体は、ドゴ!っと鈍い音を発て顔面から落下。そして綺麗な逆さの『土』の字を体で作る。
その音――…っと言うよりは、目の前に現れたプレイヤーに反応するスカルライダー。アイリは『土』の字を維持したまま、パタンっと俯せに身を倒す。そして悶絶突破の激痛を表す、言葉にならぬ声を上げながら、顔を両手で覆い魔法陣の上をゴロゴロと高速に転がり始めた。
するとスカルライダーは再び黒板を引っ掻いたような奇声を上げ、巨大な鎌を振り上げる。その姿にナツキは空中で急旋回。
「アイリ!!何をしているんだ、早く起きろ!!」
「鼻!!鼻ァ!!おでこも取れたよォ~!!」
「おでこが取れる訳ないだろ…なら今回復する、《ヒール》」
ナツキが《ヒール》を唱えると、アイリの体に淡い緑の光が螺旋に巡り、ヘソの辺りに渦を巻いて吸い込まれていく。
だが、振り上がったスカルライダーの鎌の準備は万端。片手だった握りが両手に変わり、「行くぞ」を表す奇声と共に一気に振り落とされる。
「アイリちゃんヤベぇ!!逃げろ!!」
ッ――ドォオォォォォォォンッ!!!!
爆発でも起きたかの爆音と衝撃を起こし、スカルライダーの鎌が地面を割った。鎌が通り過ぎたであろう軌道には、《スカイステップ》が砕けた破片が飛び散る。
「おい室長!!アイリちゃんが――…」
「ちょっとだけ離れてて下さい、ヒートさん」
「は?――…っどぉぉぉっ!!」
旋回していた遠心力のまま、突如空中に放られるヒート。その放られる方向にはチエリコ姉妹とヒデの姿が。突然飛んでくるヒートを、慌ててキャッチするのはヒデ。
そのキャッチを確認すると、ナツキは再び急旋回。向かうはスカルライダー。
「30秒後に〔スイッチ〕!!それまで離れてて下さい!!」
「おっ、おい君!〔スイッチ〕?…ってまさか!?」
飛ぶ高度を上げていくナツキを見るヒデの目が、"その先"を見た瞬間見開いた。
「っ!!下がるぞチエリコ姉妹!」
「へっ!?あ、うん!」
"何か"に気づいた3人は、スカルライダーへの〔セット〕を解除し、戦線より離れるべく走り出す。
その気づいた"何か"――…それは振り落とされた鎌の遥か上空、割れた魔法陣とは別の魔法陣に、逆さに立つアイリの姿。手には時限爆弾のような、秒針タイマー付きで6~7束となったダイナマイトが握られている。
逆さまだというのに、普通に地面に立つような感じのアイリ。その姿に振り向くヒデの目は見開いたまま。
「まさか重力操作…風精霊だけじゃなく【地精霊】まで…彼は何者なんだ…!?」
「ちょっと待てって!何だよ?その『シルフ』だの『ノーム』だのって」
「自分で走れる」と、ヒデに並び走るヒートが問う。
「ん?あぁ、君はビギナーだから知らないか。それは精霊の名前だ」
「精霊?」
「種族選択時に妖精種を選ぶと、得意属性として地、水、火、風の4つから選べるようになっている。そして隠しダンジョンである、各種の【精霊神殿】にいる精霊を倒す事で、その身に精霊を宿し、更なる能力を得る事が出来るんだ」
「倒す?精霊って敵なのか?」
「力を試すと言う事さ。そしてその精霊のランク…我々のレベルのようなものを上げていくと、彼のように空を飛んだりなどの特殊能力を発揮するという事だ」
「??…ま、まぁ、要は室長がすげぇって事か?」
「あぁそうだ。精霊神殿は1人で攻略しなければならない高難易度ダンジョン。確かに『すげぇ』だな…って、『室長』?…珍しいユーザーネームだな…」
その室長――ナツキは、スカルライダーへと突進していく勢いで迫っていく中、上空で逆さに立つアイリを見た。
「調合出来た爆薬の数は?」
「10個。でもその前に言う事あんだろー!」
「…わかった。要求は?」
「帰って焼き肉!それでチャラ」
「なら幾らでも連れてくよ…1周200メートル10秒以内。行けるか?」
「100メートル13秒フラットに、敏捷性3倍中のアイリちゃんならぁ~――…」
「「…――超余裕ぅー(だな)!!」」
揃った声に、アイリは逆さの《スカイステップ》を蹴り、本来の大地に急降下。地面とアイリ、そしてスカルライダーの目の前が交差する位置に突っ込むナツキは、杖をバットスイングのように振りかぶる。
すると地面に刺さるスカルライダーの鎌がピクっと反応。両手に握られた鎌が地面より僅かに浮いた、次の瞬間――目前に迫る2人のタイミングに合わせ、鋭い刃が振り上がる。瞬間、突っ込むナツキと急降下するアイリが、スカルライダーの目の前で――…
「「せぇ~…のッ!!」」
振り抜くナツキの杖先から再び《スカイステップ》が展開され、その陣を踏み台にアイリが右へ跳び、アイリが蹴り出す反動でナツキが左へと飛び出した。
ブォォォンッ!!っと音を発て、鎌を空振るスカルライダーの態勢が大きく仰け反る。
「OK、タイミングぴったんこ♪さっすが美女とメガネコンビ」
「僕だけ雑だな…いいから走れ!」
っと、ナツキが振り抜いた杖をアイリに向け、再度真横に振り抜いた。するとスカルライダーを取り囲んでいくような軌道で、10メートル間隔に次々と《スカイステップ》が半時計回りに出現。その《スカイステップ》が出現すると同時に降り立つのはアイリ。円を描き駆け抜けるアイリは、まるでレーシングカーでも走っているかの速度を見せる。
そのアイリとは逆。時計回りに飛ぶナツキの速度もまるで戦闘機の旋回。赤く光らせた杖先をスカルライダーに向け、その杖先で旋回のままに円を描いていく。
この2人がスカルライダーの後方で交差する瞬間、アイリがヒラりと宙を舞い、側宙回転のままにスカルライダーを射撃。そのアイリの真下をナツキが通過し、余す手から攻撃魔法の《ファイアボール》を撃ち放つ。そしてアイリはナツキが敷いた《スカイステップ》へ着地を決めると、間髪入れずすぐさま走り出す。
両者の攻撃を背中に受け、スカルライダーはグルりと後方に旋回。しかしそこには誰の姿も無い。あるのは空中に浮かんだ《スカイステップ》と、ナツキが描いた赤い弧のライン。そして《スカイステップ》に乗った、アイリが手にしていた束のダイナマイトだった。
「彼らは何をする気なんだ…!?」
スカルライダーとの距離を取ったヒデが呆然と見つめる中、同様に見つめるチエコが呟く。
「…魔法陣みたい…」
「ほぇ?」
そう言って指差す先を首を傾げ見るエリコの視界には、展開された《スカイステップ》の中心を通り、スカルライダーを囲う綺麗な円になっていく赤いラインが映っていた。
「ホントだ!まさか、あれも法陣術って訳?」
「なら何故彼女まで…撹乱の為か…?」
「…――チー姉が『爆弾がある』って!」
「爆弾だと…!?」
ヒデ達の視線が向く中、ナツキとアイリが再び交わるまで残り10メートル。
「もうすぐだアイリ!そのまま突っ込め!!」
「OKだにゃーっ!」
そう言うと、空中で手にしたダイナマイトで敬礼を見せ、次なる《スカイステップ》に着地と同時にそのダイナマイトを設置。そして地を蹴り、再び空中に飛び出した。その瞬間と同時にナツキの描いた赤の円が繋がり、空中でナツキがアイリを抱き止めた。互いの速度を相殺するように、空中で横回転しながら停止する2人の体。
「ナイスキャッチだぜ旦那!」
「それじゃあ総仕上げといこうか」
浮かぶ能力を持たぬアイリはナツキの体に掴まり、ナツキはスカルライダーの方へと向き直る。だがその瞬間、視界に映るスカルライダーは天高々と鎌を振り上げた態勢にあった。
「ちょっ、マズいわよナツキ!!」
「心配無い」
「へ?」
「既に召喚詠唱は終わっているよ」
焦るアイリに対し、ナツキの口元はゆっくりと笑みに変わる。するとスカルライダーを囲んだ数十個の《スカイステップ》から、ナツキの描いた赤いライン同様の線が中心に向かい、複雑なラインを描いて伸び始める。そして互いに繋がり合い、巨大な魔法陣を作り上げた。伸びたラインはスカルライダーの体を貫き、陣の中心に置く。
「ギィイィィエェェェッ!!」
貫くラインによる衝撃なのか、奇声を上げて仰け反るスカルライダー。
「出でよ…【火精霊】!!」
ナツキの呼び声に反応し、赤いラインは炎へと姿を変え、勢いよく燃え上がる。その炎は《スカイステップ》をも包み込み、炎の渦を巻かせてスカルライダーの頭上に集まっていく。集まりゆく炎は渦の回転をそのままに、徐々に人型へと――…
「なっ、何だありゃ…!?」
驚きの表情のヒートの目に映る炎は、巨大なスカルライダーと同じくらいの炎となり、人型の形状を確かなものとする。頭部は蛇のようだが闘牛のような角を生やし、首や手足に装飾はあるものの着衣は腰に巻いた布のみ。背中には広げれば身の丈程の翼が。
「あれが火精霊かいな…初めて見たわ…」
スカルライダーの頭上に悠然と立つ人型の炎――火精霊を、呆然と見上げるゴンザレス。ヒートにチエリコ姉妹、ヒデも同様に口をポカンとさせるだけ。
するとナツキが片手でアイリを支えたまま、手にした杖を天に翳す。
「紅蓮の炎の使い手よ…放て鉄槌…破滅の業火に、全てを呑み込め――《火精霊・蓮獄》!!」
「グォオォォォォォォォッ!!」
ナツキの声に呼応するように、召喚された火精霊が、衝撃波ともとれる雄叫び上げ、巨大な拳を振り上げた。その動きに合わせてアイリの手が横に伸び、指を鳴らす形をとる。そしてナツキの顔を見て、何かを合わせるように小さく頷いた。
瞬間、火精霊の拳は炎をまとい、スカルライダーの頭上から一気に振り落とされる。気配に顔を上げるスカルライダーの顔面を捉えた拳に、まるで打ち上げ花火でも鳴ったかの轟音が鳴り響き、マシンに乗ったスカルライダーの身が折れる――…その時を見計らったように、
「行っちゃいますか、あいりん花火!たぁ~まやぁ~!!」
っと伸ばした指を鳴らした。するとスカルライダーを囲い円に並んだ、《スカイステップ》に置かれたダイナマイトが一斉に起爆。
ッ――ガァアァァァァァァンッ!!!!
起爆の瞬間の音が一瞬とぶ程の爆音と衝撃を走らせ、すさまじい爆撃がスカルライダーを襲う。爆音と爆風、そして炎の蔓を巻かせた爆煙に、スカルライダーはもちろん、火精霊にナツキとアイリの姿も呑まれゆき、爆撃一波の衝撃波がヒートやチエリコ姉妹、ヒデにゴンザレス達をも吹き飛ばす。
「うわぁぁぁぁッ!!」
「こんな合わせ技、チートやろぉぉ~っ!!」
爆撃より一拍置いて、ナツキの詠唱による火精霊の《蓮獄》、爆煙を振り払う渦巻く火柱が空に向かい突き上がった。その炎が火精霊だったのか、火柱が空に吸い込まれていく跡…浮かぶマシンに跨がり、頭に手足をだらりと垂らしたスカルライダーが姿を見せる。
すると――…
…―――ドサッ…!!
吹き飛ばされたヒート達の近くに、何かの塊が落下する。「何だ?」っと視線を向けると、それはアイリを抱いたままのナツキだった。
「室長!?アイリちゃん!?――…っておい!」
2人の姿にも驚きの表情だったが、ナツキの元に浮かぶステータスを見た瞬間、ヒートの身が強張った。
ナツキのLGは、もはや表示されているのかいないのか…爪先程のゲージしか残されていなかった。すぐさまナツキの元に走るヒートは、倒れたナツキの肩に手をかけ揺らす。
「おい室長!!室長無事かよ!?」
すると、ハっと目を開くナツキは倒れた状態のままに顔を上げ、チエリコ姉妹とヒデに向く。
「急いで〔スイッチ〕を!!コンボダメージ増幅判定が続いてる内に!!」
「えっ…あ、あぁ~っ、はい!!」
「わっ、わかった!!〔スイッチ〕だ!!」
ナツキの剣幕に、慌てたように何度も頷き走り出すチエリコ姉妹とヒデ。ナツキとアイリの合わせ技による大ダメージに、スカルライダーは未だ怯んだ状態。この状態ならば、一時的にエネミーの防御力が下がる為、絶好の攻撃のチャンス。
〔スイッチ〕と共に武器を構え走る3人だが、ジョブによる敏捷性の違いからか、エリコとヒデが先行。すると遅れるチエコは1人立ち止まり、手にした石の巨大ハンマーを地面に打ち付けた。
「…《鍛冶場の大地》…いっちゃえ…」
ドッ――ゴォォォォォンッ!!
突如爆音と共に、エリコとヒデの足元の大地が隆起。そしてまるで発射台の如く、2人の体を天高く舞い上がらせた。その高さは5~60メートルの高さを持つスカルライダーの顔の位置。
「よっしゃ!行くよヒデちゃん!」
「了解!ゴンザレスも来い!!」
「言われんでも行っとるわい!!チエちゃ~ん、ワイにも足場をーっ!!」
…――っだが、チエコの視線はゆっくりと外される。
「何でやねぇ~ん!!」
っと嘆きのまま、1人虚しく跳んだゴンザレス。技の発動か、光を帯びた大剣を振り抜きスカルライダーの足を斬る。
「こっちも行くぞ…ダァアァァッ!!」
「喰らえぇ~いっ!!」
ゴンザレスに続く斬撃がスカルライダーにヒットする中、ナツキの腕の中でようやく目覚めるアイリが、「あたたたた…」っと頭を擦り顔を上げた。
「無事か?アイリ」
「う…うん…あたしは大じょ――…ってナツキ!?…そのLG…何で!?技の発動と同時にあたしを置いて逃げてって言ったじゃん!」
「そんな事したら、君が爆発に巻き込まれるだろ」
「技の発動範囲にいなきゃいけないからあたしはいいの!それに自分の技でのダメージじゃ死にはしないのよ…なのに何であんたが――…およっ」
っと喋るアイリのおでこを、ナツキが指で小突いて言葉を止める。
「僕は【水精霊】の担い手…火属性の耐性と、君の技の威力は把握してるつもりだ。だから僕でも耐えられると計算した…それに、もし君を傷ものにして、"責任"はとりたくないからね」
鼻で笑うナツキの指に、再びアイリのおでこは小突かれる。
「あうっ…これ以前に傷ものにしたから、責任はとってもらうぞ」
「いや、今のでプラスマイナス0だろ?」
「責任をプラマイの問題にすんのおかしくない!?てか真顔で言うなしっ!」
またお約束なのか…言い合う両者だが、今度はそのナツキのおでこに、青い液体の入った小瓶がコツン!っと当たる。その小瓶はLG回復アイテムの〔ライフポーション〕。持つ者はヒートで、ナツキのおでこに〔ライフポーション〕を当てながら、何やら難しい顔つき…
「イチャついてるトコ悪ぃんだが…コレどうやって使うんだ?回復しねぇとヤバそうだから使いてぇんだけど…」
「だっ、誰もイチャついてないわよ!けなされてんのよ、あたしは――…むぁっ」
茶化しを買い、身を乗り出すアイリの顔を、ごとに手で押し退けるナツキは、ヒートがおでこに当て続ける〔ライフポーション〕を受け取り笑みを作る。
「ありがとうございます、ヒートさん」
「でもまぁ…無事でよかった――…」
「ナツキぃーっ!」
お礼に対する照れなのか、サっと視線を反らすヒートを押し退け、膨れっ面のアイリが出現。ナツキの手から〔ライフポーション〕を奪い取り、小瓶の蓋を開けると、中身を無理矢理ナツキの口内に流し込む。
「むぐっ…ぶはぁっ!何をする――…んーッ!!」
「乙女の顔を物みたいに掴むなコラァーっ!」
繰り返されるお約束に、ヒートの感情はもはや『無』。
「あー…そうやっても使えんだ…」
ドガァアァァァァァンッ!!
「ギィイィィエェェェッ!!」
ヒートの言葉直後、響き渡る轟音にスカルライダーの奇声。慌て振り向くヒートに、お約束中のナツキとアイリ。
すると完全に起きたスカルライダーの鎌が振るわれた後。地面ごと薙ぎ払われた瓦礫と土煙、そして宙に舞うゴンザレスにエリコとヒデ。
「どわぁあッ!!…あかんっ…!ワイらだけは無理や!!」
「マズいっ…!!行くぞアイリ!ヒートさん、乗って下さい!」
「おっ、おう!」
「了解ですわん隊長。ヒート。ナツキの背中でおりこうさんにしてんのよー」
「い、言われなくてもそうするぜ…」
再びナツキの肩に乗っかり、表情を引きつらせるヒートの頭を、軽くポンっと叩くアイリ。身構えるナツキの横顔をチラっと見ると、
「こういう戦いの時、オージロウがいたら楽だったわよね…」
「うん…でも、今は今に集中だ。行くぞ」
「…わかった」
再び風精霊の羽根を背に、飛び上がるナツキ。その背を見送り、二丁拳銃を構えるアイリは、息を大きく吸い込みピタっと止めると――…
「残りLG3本と半分!締まって行こぉーっ!!」
…――っと声を上げ、地を蹴り走り出す。




