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NOAH -ノア-  作者: 孝乃 (編集中)
第2章『関東エリア解放篇』
21/26

Lood..017 vs スカルライダー(2)

 『全力』と告げたナツキは、ヒートの返事を待たずして身を屈め、手にした杖を地に突き立てた。


すると突如、ナツキの背中に薄く緑に透き通る紋章が浮かび上がる。手の平サイズで、肩甲骨を挟むように現れた紋章は、まるで鳥類の翼をイメージしたような形。それを見たヒートにゴンザレスが驚きの表情となる。



「うわっ!何だこりゃ!?」

「何やナツキ…お前、【風精霊(シルフ)】の使い手やったんか!?」

「し、しるふ…?」



っと次の瞬間、その紋章から同色の羽根4枚が両手を広げたくらいの大きさに広がった。



「うお!今度は何だよ!?」

「飛びますよ。しっかり掴まってて下さい」

「は!?飛ぶ――…ってどわぁぁっ!!」



ヒートのリアクションの中、現れた羽根は小刻みに羽ばたき、ナツキの体が浮かび上がる。そして1回、大きな羽ばたきを見せた瞬間、ヒートを乗せたナツキの体は急加速。一気にスカルライダーの元へと急接近。


風精霊(シルフ)の羽根と共に空を飛ぶナツキの姿に、スカルライダーと戦うチエリコ姉妹とヒデの目も見開く。



風精霊(シルフ)の使い手か!?」

「うわっ、すごぉーい!」

「だけじゃないのよん、ウチの室長(ボス)は…」



その声に笑みを作るのはアイリ。構えた銃の空薬莢(からやっきょう)を地面に撒く――…瞬間、アイリの体を足元から頭へと、緑色の光を帯びたリングが上がっていく。するとアイリのステータスの名前の横に、『ブーツ』に『翼』のマークが付け加えられた新たなアイコンが表示された。



「おっと、《敏捷性上昇(アジリティインプルーブ)》ときましたか、ナっちんちん――…って、ふわぁぁぁぁっ!!」



突然アイリの体は、腰に巻いたポーチに引っ張られるように空へと引き上げられる。そして巨大なスカルライダーの頭上へと一気舞い上がる中、見上げた視界にはナツキがポーチを片手で掴んでいる姿が。



「ちょっと!どこ掴んでんのよ!?」

「その呼び方はヤメてくれと言ったはずだが」

「いやだからって掴み方乱暴ぉ~!」

「文句はいいから弱点属性を見るんだ」

「とっくに《ウイークサーチャー》かけてるわよ!火属性が弱点よ、スカルライ――…だぁぁぁっ!!」



突如アイリの体を引き上げる浮力が消え、空中で1回転する視界。その視界では、ヒートを乗せたナツキが通り過ぎていく様子が映る。



「じゃあアイリ、火力全開で頼むぞ!」

「いやん鬼畜ぅぅ~っ!!」



悲鳴と共に落下していく体はスカルライダーの顔の前へ。するとナツキは手にした杖先をアイリに向け、



「《スカイステップ》!!」



その呪文と共に、アイリの落下ポイントには直径5メートル程の空中に浮かぶ、黄金色(こがねいろ)の魔法陣が展開される。その魔法陣に向かうアイリの体は、ドゴ!っと鈍い音を発て顔面から落下。そして綺麗な逆さの『土』の字を体で作る。


その音――…っと言うよりは、目の前に現れたプレイヤーに反応するスカルライダー。アイリは『土』の字を維持したまま、パタンっと俯せに身を倒す。そして悶絶突破の激痛を表す、言葉にならぬ声を上げながら、顔を両手で覆い魔法陣の上をゴロゴロと高速に転がり始めた。


するとスカルライダーは再び黒板を引っ掻いたような奇声を上げ、巨大な鎌を振り上げる。その姿にナツキは空中で急旋回。



「アイリ!!何をしているんだ、早く起きろ!!」

「鼻!!鼻ァ!!おでこも取れたよォ~!!」

「おでこが取れる訳ないだろ…なら今回復する、《ヒール》」



ナツキが《ヒール》を唱えると、アイリの体に淡い緑の光が螺旋に巡り、ヘソの辺りに渦を巻いて吸い込まれていく。


だが、振り上がったスカルライダーの鎌の準備は万端。片手だった握りが両手に変わり、「行くぞ」を表す奇声と共に一気に振り落とされる。



「アイリちゃんヤベぇ!!逃げろ!!」




 ッ――ドォオォォォォォォンッ!!!!




爆発でも起きたかの爆音と衝撃を起こし、スカルライダーの鎌が地面を割った。鎌が通り過ぎたであろう軌道には、《スカイステップ》が砕けた破片が飛び散る。



「おい室長!!アイリちゃんが――…」

「ちょっとだけ離れてて下さい、ヒートさん」

「は?――…っどぉぉぉっ!!」



旋回していた遠心力のまま、突如空中に放られるヒート。その放られる方向にはチエリコ姉妹とヒデの姿が。突然飛んでくるヒートを、慌ててキャッチするのはヒデ。


そのキャッチを確認すると、ナツキは再び急旋回。向かうはスカルライダー。



「30秒後に〔スイッチ〕!!それまで離れてて下さい!!」

「おっ、おい君!〔スイッチ〕?…ってまさか!?」



飛ぶ高度を上げていくナツキを見るヒデの目が、"その先"を見た瞬間見開いた。



「っ!!下がるぞチエリコ姉妹!」

「へっ!?あ、うん!」



"何か"に気づいた3人は、スカルライダーへの〔セット〕を解除し、戦線より離れるべく走り出す。


その気づいた"何か"――…それは振り落とされた鎌の遥か上空、割れた魔法陣とは別の魔法陣に、逆さに立つアイリの姿。手には時限爆弾のような、秒針タイマー付きで6~7束となったダイナマイトが握られている。


逆さまだというのに、普通に地面に立つような感じのアイリ。その姿に振り向くヒデの目は見開いたまま。



「まさか重力操作…風精霊(シルフ)だけじゃなく【地精霊(ノーム)】まで…彼は何者なんだ…!?」

「ちょっと待てって!何だよ?その『シルフ』だの『ノーム』だのって」



「自分で走れる」と、ヒデに並び走るヒートが問う。



「ん?あぁ、君はビギナーだから知らないか。それは精霊の名前だ」

「精霊?」

「種族選択時に妖精種(フェアリー)を選ぶと、得意属性として地、水、火、風の4つから選べるようになっている。そして隠しダンジョンである、各種の【精霊神殿(せいれいしんでん)】にいる精霊を倒す事で、その身に精霊を宿し、更なる能力(ちから)を得る事が出来るんだ」

「倒す?精霊って敵なのか?」

「力を試すと言う事さ。そしてその精霊のランク…我々のレベルのようなものを上げていくと、彼のように空を飛んだりなどの特殊能力を発揮するという事だ」

「??…ま、まぁ、要は室長がすげぇって事か?」

「あぁそうだ。精霊神殿は1人で攻略しなければならない高難易度ダンジョン。確かに『すげぇ』だな…って、『室長』?…珍しいユーザーネームだな…」




 その室長――ナツキは、スカルライダーへと突進していく勢いで迫っていく中、上空で逆さに立つアイリを見た。



「調合出来た爆薬の数は?」

「10個。でもその前に言う事あんだろー!」

「…わかった。要求は?」

「帰って焼き肉!それでチャラ」

「なら幾らでも連れてくよ…1周200メートル10秒以内。行けるか?」

「100メートル13秒フラットに、敏捷性3倍中のアイリちゃんならぁ~――…」


「「…――超余裕ぅー(だな)!!」」



揃った声に、アイリは逆さの《スカイステップ》を蹴り、本来の大地に急降下。地面とアイリ、そしてスカルライダーの目の前が交差する位置に突っ込むナツキは、杖をバットスイングのように振りかぶる。


すると地面に刺さるスカルライダーの鎌がピクっと反応。両手に握られた鎌が地面より僅かに浮いた、次の瞬間――目前に迫る2人のタイミングに合わせ、鋭い刃が振り上がる。瞬間、突っ込むナツキと急降下するアイリが、スカルライダーの目の前で――…



「「せぇ~…のッ!!」」



振り抜くナツキの杖先から再び《スカイステップ》が展開され、その陣を踏み台にアイリが右へ跳び、アイリが蹴り出す反動でナツキが左へと飛び出した。


ブォォォンッ!!っと音を発て、鎌を空振るスカルライダーの態勢が大きく仰け反る。



「OK、タイミングぴったんこ♪さっすが美女とメガネコンビ」

「僕だけ雑だな…いいから走れ!」



っと、ナツキが振り抜いた杖をアイリに向け、再度真横に振り抜いた。するとスカルライダーを取り囲んでいくような軌道で、10メートル間隔に次々と《スカイステップ》が半時計回りに出現。その《スカイステップ》が出現すると同時に降り立つのはアイリ。円を描き駆け抜けるアイリは、まるでレーシングカーでも走っているかの速度を見せる。


そのアイリとは逆。時計回りに飛ぶナツキの速度もまるで戦闘機の旋回。赤く光らせた杖先をスカルライダーに向け、その杖先で旋回のままに円を描いていく。


この2人がスカルライダーの後方で交差する瞬間、アイリがヒラりと宙を舞い、側宙回転のままにスカルライダーを射撃。そのアイリの真下をナツキが通過し、余す手から攻撃魔法の《ファイアボール》を撃ち放つ。そしてアイリはナツキが敷いた《スカイステップ》へ着地を決めると、間髪入れずすぐさま走り出す。


両者の攻撃を背中に受け、スカルライダーはグルりと後方に旋回。しかしそこには誰の姿も無い。あるのは空中に浮かんだ《スカイステップ》と、ナツキが描いた赤い弧のライン。そして《スカイステップ》に乗った、アイリが手にしていた束のダイナマイトだった。



「彼らは何をする気なんだ…!?」



スカルライダーとの距離を取ったヒデが呆然と見つめる中、同様に見つめるチエコが呟く。



「…魔法陣みたい…」

「ほぇ?」



そう言って指差す先を首を傾げ見るエリコの視界には、展開された《スカイステップ》の中心を通り、スカルライダーを囲う綺麗な円になっていく赤いラインが映っていた。



「ホントだ!まさか、あれも法陣術(ほうじんじゅつ)って訳?」

「なら何故彼女まで…撹乱の為か…?」

「…――チー姉が『爆弾がある』って!」

「爆弾だと…!?」



ヒデ達の視線が向く中、ナツキとアイリが再び交わるまで残り10メートル。



「もうすぐだアイリ!そのまま突っ込め!!」

「OKだにゃーっ!」



そう言うと、空中で手にしたダイナマイトで敬礼を見せ、次なる《スカイステップ》に着地と同時にそのダイナマイトを設置。そして地を蹴り、再び空中に飛び出した。その瞬間と同時にナツキの描いた赤の円が繋がり、空中でナツキがアイリを抱き止めた。互いの速度を相殺するように、空中で横回転しながら停止する2人の体。



「ナイスキャッチだぜ旦那!」

「それじゃあ総仕上げといこうか」



浮かぶ能力(ちから)を持たぬアイリはナツキの体に掴まり、ナツキはスカルライダーの方へと向き直る。だがその瞬間、視界に映るスカルライダーは天高々と鎌を振り上げた態勢にあった。



「ちょっ、マズいわよナツキ!!」

「心配無い」

「へ?」

「既に召喚詠唱は終わっているよ」



焦るアイリに対し、ナツキの口元はゆっくりと笑みに変わる。するとスカルライダーを囲んだ数十個の《スカイステップ》から、ナツキの描いた赤いライン同様の線が中心に向かい、複雑なラインを描いて伸び始める。そして互いに繋がり合い、巨大な魔法陣を作り上げた。伸びたラインはスカルライダーの体を貫き、陣の中心に置く。



「ギィイィィエェェェッ!!」



貫くラインによる衝撃なのか、奇声を上げて仰け反るスカルライダー。



「出でよ…【火精霊(イフリート)】!!」



ナツキの呼び声に反応し、赤いラインは炎へと姿を変え、勢いよく燃え上がる。その炎は《スカイステップ》をも包み込み、炎の渦を巻かせてスカルライダーの頭上に集まっていく。集まりゆく炎は渦の回転をそのままに、徐々に人型へと――…



「なっ、何だありゃ…!?」



驚きの表情のヒートの目に映る炎は、巨大なスカルライダーと同じくらいの炎となり、人型の形状を確かなものとする。頭部は蛇のようだが闘牛のような角を生やし、首や手足に装飾はあるものの着衣は腰に巻いた布のみ。背中には広げれば身の丈程の翼が。



「あれが火精霊(イフリート)かいな…初めて見たわ…」



スカルライダーの頭上に悠然と立つ人型の炎――火精霊(イフリート)を、呆然と見上げるゴンザレス。ヒートにチエリコ姉妹、ヒデも同様に口をポカンとさせるだけ。


するとナツキが片手でアイリを支えたまま、手にした杖を天に翳す。



「紅蓮の炎の使い手よ…放て鉄槌…破滅の業火に、全てを呑み込め――《火精霊(イフリート)蓮獄(れんごく)》!!」

「グォオォォォォォォォッ!!」



ナツキの声に呼応するように、召喚された火精霊(イフリート)が、衝撃波ともとれる雄叫び上げ、巨大な拳を振り上げた。その動きに合わせてアイリの手が横に伸び、指を鳴らす形をとる。そしてナツキの顔を見て、何かを合わせるように小さく頷いた。


瞬間、火精霊(イフリート)の拳は炎をまとい、スカルライダーの頭上から一気に振り落とされる。気配に顔を上げるスカルライダーの顔面を捉えた拳に、まるで打ち上げ花火でも鳴ったかの轟音が鳴り響き、マシンに乗ったスカルライダーの身が折れる――…その時を見計らったように、



「行っちゃいますか、あいりん花火!たぁ~まやぁ~!!」



っと伸ばした指を鳴らした。するとスカルライダーを囲い円に並んだ、《スカイステップ》に置かれたダイナマイトが一斉に起爆。




 ッ――ガァアァァァァァァンッ!!!!




起爆の瞬間の音が一瞬とぶ程の爆音と衝撃を走らせ、すさまじい爆撃がスカルライダーを襲う。爆音と爆風、そして炎の蔓を巻かせた爆煙に、スカルライダーはもちろん、火精霊(イフリート)にナツキとアイリの姿も呑まれゆき、爆撃一波の衝撃波がヒートやチエリコ姉妹、ヒデにゴンザレス達をも吹き飛ばす。



「うわぁぁぁぁッ!!」

「こんな合わせ技、チートやろぉぉ~っ!!」



爆撃より一拍置いて、ナツキの詠唱による火精霊(イフリート)の《蓮獄(れんごく)》、爆煙を振り払う渦巻く火柱が空に向かい突き上がった。その炎が火精霊(イフリート)だったのか、火柱が空に吸い込まれていく跡…浮かぶマシンに跨がり、頭に手足をだらりと垂らしたスカルライダーが姿を見せる。


すると――…




 …―――ドサッ…!!




吹き飛ばされたヒート達の近くに、何かの塊が落下する。「何だ?」っと視線を向けると、それはアイリを抱いたままのナツキだった。



「室長!?アイリちゃん!?――…っておい!」



2人の姿にも驚きの表情だったが、ナツキの元に浮かぶステータスを見た瞬間、ヒートの身が強張った。


ナツキのLGは、もはや表示されているのかいないのか…爪先程のゲージしか残されていなかった。すぐさまナツキの元に走るヒートは、倒れたナツキの肩に手をかけ揺らす。



「おい室長!!室長無事かよ!?」



すると、ハっと目を開くナツキは倒れた状態のままに顔を上げ、チエリコ姉妹とヒデに向く。



「急いで〔スイッチ〕を!!コンボダメージ増幅判定が続いてる内に!!」

「えっ…あ、あぁ~っ、はい!!」

「わっ、わかった!!〔スイッチ〕だ!!」



ナツキの剣幕に、慌てたように何度も頷き走り出すチエリコ姉妹とヒデ。ナツキとアイリの合わせ技による大ダメージに、スカルライダーは未だ怯んだ状態。この状態ならば、一時的にエネミーの防御力が下がる為、絶好の攻撃のチャンス。


〔スイッチ〕と共に武器を構え走る3人だが、ジョブによる敏捷性の違いからか、エリコとヒデが先行。すると遅れるチエコは1人立ち止まり、手にした石の巨大ハンマーを地面に打ち付けた。



「…《鍛冶場(かじば)大地(だいち)》…いっちゃえ…」




 ドッ――ゴォォォォォンッ!!




突如爆音と共に、エリコとヒデの足元の大地が隆起。そしてまるで発射台の如く、2人の体を天高く舞い上がらせた。その高さは5~60メートルの高さを持つスカルライダーの顔の位置。



「よっしゃ!行くよヒデちゃん!」

「了解!ゴンザレスも来い!!」

「言われんでも行っとるわい!!チエちゃ~ん、ワイにも足場をーっ!!」



…――っだが、チエコの視線はゆっくりと外される。



「何でやねぇ~ん!!」



っと嘆きのまま、1人虚しく跳んだゴンザレス。技の発動か、光を帯びた大剣を振り抜きスカルライダーの足を斬る。



「こっちも行くぞ…ダァアァァッ!!」

「喰らえぇ~いっ!!」



ゴンザレスに続く斬撃がスカルライダーにヒットする中、ナツキの腕の中でようやく目覚めるアイリが、「あたたたた…」っと頭を擦り顔を上げた。



「無事か?アイリ」

「う…うん…あたしは大じょ――…ってナツキ!?…そのLG…何で!?技の発動と同時にあたしを置いて逃げてって言ったじゃん!」

「そんな事したら、君が爆発に巻き込まれるだろ」

「技の発動範囲にいなきゃいけないからあたしはいいの!それに自分の技でのダメージじゃ死にはしないのよ…なのに何であんたが――…およっ」



っと喋るアイリのおでこを、ナツキが指で小突いて言葉を止める。



「僕は【水精霊(ウンディーネ)】の担い手…火属性の耐性と、君の技の威力は把握してるつもりだ。だから僕でも耐えられると計算した…それに、もし君を傷ものにして、"責任"はとりたくないからね」



鼻で笑うナツキの指に、再びアイリのおでこは小突かれる。



「あうっ…これ以前に傷ものにしたから、責任はとってもらうぞ」

「いや、今のでプラスマイナス0だろ?」

「責任をプラマイの問題にすんのおかしくない!?てか真顔で言うなしっ!」



またお約束なのか…言い合う両者だが、今度はそのナツキのおでこに、青い液体の入った小瓶がコツン!っと当たる。その小瓶はLG回復アイテムの〔ライフポーション〕。持つ者はヒートで、ナツキのおでこに〔ライフポーション〕を当てながら、何やら難しい顔つき…



「イチャついてるトコ(わり)ぃんだが…コレどうやって使うんだ?回復しねぇとヤバそうだから使いてぇんだけど…」

「だっ、誰もイチャついてないわよ!けなされてんのよ、あたしは――…むぁっ」



茶化しを買い、身を乗り出すアイリの顔を、ごとに手で押し退けるナツキは、ヒートがおでこに当て続ける〔ライフポーション〕を受け取り笑みを作る。



「ありがとうございます、ヒートさん」

「でもまぁ…無事でよかった――…」

「ナツキぃーっ!」



お礼に対する照れなのか、サっと視線を反らすヒートを押し退け、膨れっ面のアイリが出現。ナツキの手から〔ライフポーション〕を奪い取り、小瓶の蓋を開けると、中身を無理矢理ナツキの口内に流し込む。



「むぐっ…ぶはぁっ!何をする――…んーッ!!」

「乙女の顔を物みたいに掴むなコラァーっ!」



繰り返されるお約束に、ヒートの感情はもはや『無』。



「あー…そうやっても使えんだ…」




 ドガァアァァァァァンッ!!




「ギィイィィエェェェッ!!」



ヒートの言葉直後、響き渡る轟音にスカルライダーの奇声。慌て振り向くヒートに、お約束中のナツキとアイリ。


すると完全に起きたスカルライダーの鎌が振るわれた後。地面ごと薙ぎ払われた瓦礫と土煙、そして宙に舞うゴンザレスにエリコとヒデ。



「どわぁあッ!!…あかんっ…!ワイらだけは無理や!!」

「マズいっ…!!行くぞアイリ!ヒートさん、乗って下さい!」

「おっ、おう!」

「了解ですわん隊長。ヒート。ナツキの背中でおりこうさんにしてんのよー」

「い、言われなくてもそうするぜ…」



再びナツキの肩に乗っかり、表情を引きつらせるヒートの頭を、軽くポンっと叩くアイリ。身構えるナツキの横顔をチラっと見ると、



「こういう戦いの時、オージロウがいたら楽だったわよね…」

「うん…でも、今は今に集中だ。行くぞ」

「…わかった」



再び風精霊(シルフ)の羽根を背に、飛び上がるナツキ。その背を見送り、二丁拳銃を構えるアイリは、息を大きく吸い込みピタっと止めると――…



「残りLG3本と半分!締まって行こぉーっ!!」



…――っと声を上げ、地を蹴り走り出す。

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