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NOAH -ノア-  作者: 孝乃 (編集中)
第2章『関東エリア解放篇』
20/26

Lood..016 vs スカルライダー(1)

 地下の安全区域を出たナツキ達。安全区域に残ったのはキヨマルとヒコマル、そしてタケシにトモキ、セキカワの面々。未だ落ち着きを見せない弟ヒコマルの為。加え、Lv.1のままで戦闘に参加出来ないタケシら3人を守るという意味でも、ヒコマルは待機を選んだ。


ヒートにも残るように言ったのだが、あれだけの啖呵をきってしまったからか、「行ってスカルライダーをブっ飛ばす」と言い張った。もはや意地だ。ナツキやアイリの傍を離れない、っとの約束の元に同行する事になったヒート。


一応だが、残った彼らとも〔同盟(どうめい)〕を組んだ為、ヒートを要してのクエストクリアでトーキョウへの帰還が可能となった。だが心配なのは――…



「大丈夫だよね?ナツキ」

「…何がだい?」



廃墟フィールドを走るアイリが、並ぶナツキに問う。アイリはすぐには返さず、数メートル前方を走るゴンザレス、チエリコ姉妹の背中を見る。



「75人、MAXで挑んでも勝てないスカルライダーって…初期設定の段階では、Lv.30オーバーが半数いれば勝てないバトルじゃなかったわよね?」

「テストの段階ではそうだったけど、その後の設定調整に(ひろ)が入ってくれたはず」

「あの小ブタ…戦闘レベル上げ過ぎ。帰ったら鼻フックビンタしちゃる……でもさ、さっき皆が言ってたバグって、あたしらが裏面データでログインしたからだよね?」

「断定は出来ないけど、可能性としては薄くない。僕ら自身にもバグらしき現象も起きているからね」

「なら、仮にスカルライダーを倒せたとしても、帰還用のクエストSL来るの?あの時みたいに暴走したりしないよね?」

「…わからないよ、そこまでは…とにかく、今はスカルライダーを倒す事が最優先事項だ」



そう言って前に向き直るナツキ。その横顔を見つめるアイリは、そっと視線を落とす。



「ねぇ…乃愛(のあ)ちゃん…いるかな?このクエストに」



乃愛(のあ)の名前に、ナツキの表情が一瞬強張った。



「…たぶん…いない。いる可能性は低いよ」

「どうしてそう思うの?」

乃愛(のあ)は僕らの後に一般公募で選ばれた、第2次βテスター100人の1人だ。関東エリアはとうの昔に攻略している」

「でも『友達とクエストに行く』って言ってた。もしかしたら、その友達のクエストを手伝ってる可能性だってあるよ」

「…そうか…なら早く会いたいものだよ」

「うん、そだね――…ッ!!」



頷き返すアイリの目が、一瞬にして鋭く光る。すると前方を走るエリコが腰から小太刀を抜き去った。



「皆!戦闘準備!!前方からエネミー反応!!」

「あの子も〔広域マップ〕スキルもってんだ。よっしゃ!いきまっか、ナっちん」

「じゃあ僕の傍を離れないで下さいよ、ヒートさん!」

「お、おう!」

「(ナっちんに対して)無視かよ…んじゃああたしも離れなぁ~い♪」

「いや…いい…」

「マジに嫌そうな顔すんなァー!」



抜き去る拳銃を、ナツキに向け抗議するアイリ。その姿に前方を走るゴンザレスが振り返り、



「今から戦闘やぞ、イチャつくんは終わってからにしてくれへんか?」

「コレのどこがイチャついてるように見えんだ!このデカぶつゴリりん!」

「うおっ、綺麗な顔してごっつ口悪っ」

「…――『彼女いない歴7年だからって(ひが)むなゴリりん』だって」

「何で知ってんねん!てか即カバーすんなや!」



っと言いながら背中に背負った大剣を抜くゴンザレス。その目から逃れるように、走るエリコの陰に隠れるチエコ。



「もーゴンちゃん!今から戦闘なんだから、チー姉の事あんま見ないでよ!」

「いやいや、同じパーティとは思えん怒られ方!」



すると前方から押し寄せる白い波――ボーンナイトの軍勢が姿を現す。



「数はなんぼや?エリちゃん」

「たぶん30!行くよチー姉!」

「…うん」



っと頷き返したチエコの姿に、ナツキ達は――…



「あ、喋った…」



っと思わず声がもれる。


そんな驚きもあるが、迫り来るボーンナイトは待ってはくれない。先を行くゴンザレス達、10メートル手前に迫ったボーンナイト。するとチエコが帯に差していた、うちわ程の大きさの木槌を手にし、1人足を止めて地面を叩く。



「…《武器武器(ぶきぶき)ふぁくとりー》…」



呟くように唱えた技名に反応し、地面についた木槌がカメラのフラッシュのような発光を見せた。次の瞬間、持ち上がるチエコの手に握られていたのは、岩石をまとった巨大なハンマー。叩き所となる長方形の岩石は1メートル級。握る()も、チエコの身の丈1.5メートルはあり、両手で握る程。



「何だありゃ!?」

「武器を構築したい素材に触れさせ、属性武器を造り上げる技。鍛冶スキルを上げる事で覚えられるものよ。いちいち驚かないで察してよ…説明がめんどうだわ」



そう言ってアイリはヒートの頭を軽く小突く。反論のしようと口を開くヒートより先、再びアイリが口を開いた。



「後方のエネミー反応無し。前衛の加戦しに行くけど、OK?指揮者(コンダクター)

「OKだ。それじゃあ奏でようか、鎮魂歌(レクイエム)だ。名演奏家(ヴィルトゥオーソ)

「うわさっぶぅ~。『奏でよう』とか(はず)いんですけどー」

「きっ、君がフったんだろ!!」

「嘘ウソ。ノってくれてサンキュ~。ほんじゃま、援護よろ♪」



赤面するナツキに対し、イタズラに笑うアイリはウインク返し。口笛混じりに地を蹴り前方に駆け出した。その背を見送るナツキは、ヒートに止まるように促し、手にした杖を前方に向け魔法陣を展開。



「全く…言われなくても援護はするさ、《攻撃力上昇(アタックインプルーヴ)》!!《防御力上昇(ガードインプルーヴ)》!!」



視界前方にボーンナイトの波に飛びかかる、チエリコ姉妹とゴンザレスの手元には、攻撃力と防御力上昇を意味するの『拳』と『盾』に『⬆』のついたアイコンが浮かぶ。



「およ?」

「さすがや法陣術師(ほうじんじゅつし)!っシャァ!!行くでェッ!!」



己の前に盾を構えたまま、押し寄せるボーンナイトに突っ込んで行くゴンザレス。するとそのゴンザレスの頭の上に、エリコがフワりと降り立った。



「ふごっ…!!」

「ごめんゴンちゃん、頭貸して」

「何や――…ってぐおッ!!」



ゴンザレスの頭を踏み台に、押し寄せたボーンナイト群の中心へと舞い上がるエリコ。逆手に構えた小太刀を両手に、クルりと前方1回転。



「まとめて吹っ飛べ――…《爆砕陣壊(ばくさいじんかい)》!!」



回転をそのままに、ボーンナイトの群の大地に光る小太刀を突き立てた。瞬間、エリコの周囲10メートルの大地が割れ、円に広がる衝撃波がボーンナイトの一部を宙に撒き上げる。



「よっしゃワイもいくで――…んごッ!!」



勇むゴンザレスの頭に、再び何者かの足が乗る。



「あたしも頭借りるわね、ゴリりん♪」



っと、アイリがゴンザレスを頭を蹴り跳び上がる。滞空状態から構えた銃口が次々に()を噴き、撒き上がるボーンナイトを撃ち砕いていく。


砕け散るボーンナイトの中、地上に残る群めがけ、地に突き立てた小太刀を構え直すエリコが猛突進。ボーンナイトの繰り出す剣に槍、斧に棍棒といった錆びた武器の雨を、スレスレの所で躱しゆくエリコが、ボーンナイトの群を突破。すると手にした小太刀を手元でクルクルと回し、腰の鞘に納めた。




 …――カチャン…――ボンッ!!




刀を納めた音に合わせ、エリコの通った道のボーンナイト達が砕けて消滅。


その消滅と共に、滞空のアイリの体が真下にいたままのゴンザレスに、肩車するように落下。



「ぐおっ!!」

「うっひゃー、何あの子。攻撃スピード速っ」

「そらそうや、エリちゃんはプレイヤー間では『"瞬刃(しゅんじん)"のエリコ』っちゅう通り名でな。(ボス以外)エネミーを1撃で仕留められる【(コア)】を叩く技術。そして攻撃速度に関しても、プレイヤー内でもトップクラスや」

「全然見えなかった…」

「だから"瞬刃(しゅんじん)"なんや。ってオイ、エリちゃん!獲物独り占めはヤメてくれっていつも()うとるやろ!」



ゴンザレスの言葉に、エリコは笑みを浮かべた表情で振り返る。



「大丈夫大丈夫、まだ残ってるから」



その言葉通り、エリコが倒したのは一部。残るボーンナイトは約10体。このボーンナイトを挟むアイリ、ゴンザレス、エリコは再び武器を構える。



「ほんなら、残りはワイが片づけたるわ」

「ほんなら、あたしの足となり頑張りたまえ、ゴリの(すけ)

「いや自分で歩けや!」

「じゃれてるならアタシもう1回いっちゃうよー♪」



っと次の瞬間、突如宙を舞う1つの黒き忍装束の影が――…



「《火流忍法(かりゅうにんぽう)奥義(おうぎ)炎蛇双流覇(えんじゃそうりゅうは)》」



結ぶ印から飛び出す炎の蛇2匹。大人2人分はあろう胴廻りの蛇は、術者からグングンとその身を伸ばし、残るボーンナイトらを吹き飛ばしていく。そしてその炎の蛇は身を返し、空中、地上に残るボーンナイトを再び襲い、完全に消滅させた。



「な、なんや…?」



範囲内のボーンナイトは消え、何もしてないゴンザレスがキョトンとなる中、炎の蛇を出現させた術者――黒の忍装束に、黄土に縁取られた同色の胸当てに手足の装甲。深い紺の目元以外を隠す頭巾に、あきらかに不釣り合い…現代風のオシャレ黒ぶちメガネをかけた男が舞い降りる。



「…無事か?」



っと告げる声は確かに男。その男を見たゴンザレスは大きくため息をついた。



「おーコラ何してくれんねん、【ヒデ】…アイツらワイの獲物やったんやぞ~」



【ヒデ】と称された忍装束の男は、小さく「え?」っと返して頭をポリポリ。



「助けたつもりなんだが…その言われようなら、助けは要らなかったようだな」

「お~要らへんちゅーの…せっかくチエリコ姉妹にええトコ見せるチャンスやったんやぞー」



っと、何やら両者顔見知りのようだ。まぁこの彼――【ヒデ】も、今この地にいるという事は、スカルライダー討伐のクエスト参加者なのだから、知っていて当然と言えば当然。



「あいかわらずだな、ゴンザレス。チエリコ姉妹ファンぶりは…」



ため息混じりにゴンザレスから視線を外すヒデは、駆け寄るエリコを見て、挨拶するように軽く手を上げる。エリコも手を振り返してヒデに並ぶ。



「よかったヒデちゃん無事で。あとサンキュ、助かったよ。あ、あとゴンちゃん。アタシ彼氏いるからね」

「んなァ!?ホンマかァ!?」

「あとチー姉も彼氏いるから」

「んっ――…のォォォォォォッ!!」



…―――ゴンザレスの絶叫が響いた直後、数発の銃声と、「うるせぇー!!」っと言う怒声が鳴り、1匹のゴリラが静かに地に還った……

(※…死んではいません)


そしてその後方……1人岩石のハンマーを手にしたチエコが、離れた位置で小さく呟く。



「…(もろもろ)乗り遅れた…」





◆◆◆――…





 現れたヒデを中心に集まるナツキ達。辺りを見渡すように首を傾げるゴンザレス。



「ヒデ、お前1人か?他のパーティメンバーは?」

「一気にやられたよ…コンティニュー待ちで、K9ー7番地に待機してたんだが、誰も来なくてな…ボスの強さに怖じ気づいてなきゃいいが…」



そう言ってヒデも首を傾げ、頭をポリポリ。『やられた』=『死』の現状…戻るはずもない。その事実を知るヒデ以外の全員の表情が一瞬強張る。


すると俯くナツキに並んだエリコが手をパチンっと叩き、咄嗟に作った笑顔で口を開く。



「と、とにかく、今は救援メッセージに応えなきゃ!ヒデちゃんも受け取った?メッセージ」

「あぁ」

「じゃあ一緒に行こ。ヒデちゃんがいれば百人力だからさ」

「いや、行く必要は無い」

「へ?」

「スカルライダーなら――…」



っと言葉を言いかけ、突如腰に『×』に差した刃渡り40センチ程の小刀を抜き去り、逆手に構えた。


瞬間、エリコも腰の小太刀に手をかけ身構える。そして未だゴンザレスに肩車状態のアイリも、手にしていた拳銃の弾薬を装填。そのままアイリ、エリコ、ヒデの3人が同時に紫色の空を見上げた。



「…――奴なら上にいる」



ヒデの言葉に、残るナツキ達が驚き見上げると――…




 キイィエェェェェェェェッ!!!!




ガラスを爪で引っ掻くような金切り音が周囲に響き渡り、見上げる空の半分近くを占める、黒く巨大な雲を切り裂き現れる影。


それは長さにすれば5~60メートル程の、水上ジェットスキーにも似た、ジェットエンジンを車のタイヤのように搭載した鉄製のマシンに跨がる、3~40メートルはあろう巨大な人型の影が。その人型の影は、黒の衣をまとう白骨――…言わば『死神』だ。衣から伸びた白骨の手腕に握られた、身の丈を軽く超えた大鎌。頭と首元に巻かれた布から覗くのは人の頭蓋骨では無い、爬虫類のようなもの。



「なっ、何じゃありゃァァッ!!」



マシンだけでも全長60メートル超。一隻の船にも等しい巨大さに、ヒートの腰が一気に抜ける。



「嘘やろ!?何でスカルライダーがここにおんねん!!」

「ゴリりん退避!!」

「自分で動けや!!」

「ヒートさん!!」



ナツキは腰を抜かすヒートを抱え上げ、後退に走る。チエリコ姉妹にヒデ、アイリを担いだゴンザレスも後退。


搭乗するマシンが火を噴き、そこに急降下してくるスカルライダーの振り下ろす鎌が――…




 ッ――ガゴォォオォォォォンッ!!!!




ナツキらが散った地面に落ち、爆音と衝撃を辺りに響かせた。その衝撃に地面は割れ、砕けた瓦礫や土埃が周囲を襲う。


後退で走るナツキ達だが、この衝撃は逃れられない。襲い来る爆風に吹き飛ばされる面々。



「きゃあぁぁぁッ!!」




 ドスンッ!!




「うわっ!!」「痛ってぇ!!」



っと、ヒートを抱えたナツキの上に突如アイリが落下し、2人を上から押し潰す。



「痛たたた…何で君が降ってくるんだ」

「あたたた…だって(身長)縮んだから、今のアイリちゃんは軽いのだよ~ん…」

「お…重いっつーの…」



ナツキとアイリの間に挟まれたヒートの台詞に、アイリのゲンコツも落ちた。するとその場に駆け寄るのはゴンザレス。



「すまへん嬢ちゃん、大丈夫か?」

「大丈夫じょぶじょぶ。ま、傷ものなったらコイツに責任取らすからいいのよー」

「って何で僕を指差すんだ…」

「はいはいごっつぉーさん。イチャつくな()うたやろ、お2人さん」


「何喋ってるんだ!!逃げろ!!」



ゴンザレスが表情を引きつらせた瞬間、響くヒデの声。その声に振り返る視界、モクモクと立ち込める土埃の隙間に光るモノが――…



「アカン!!」

「走れアイリ!!」



ゴンザレスは盾を、ナツキは杖を構えて魔法陣を展開。アイリが頷きヒートを抱え上げ走り出す瞬間、土埃を2つに割るスカルライダーの鎌が横殴りに放たれる。



「二段構えやナツキ!!〔大防御(だいぼうぎょ)スキル(※)〕発動やァ!!」

「《バリアサークル》!!」



(※)…身動きがとれなくなるが、攻撃力を防御力に上乗せする事が出来るスキル。


ナツキの前に立つゴンザレスが腕に装着した巨大な盾を地面に刺し、上からガッチリと押さえ込む。そのゴンザレスと自分を《バリアサークル》が包み、スカルライダーの攻撃を受け止めた。




 ドッ――ゴォオォォォォォォォッ!!




大型のトラック…いや、それ以上のもの同士が衝突したかの凄まじい轟音と衝撃波が辺りに巻き起こり、一気に周囲の土埃を吹き飛ばす。


受け止めたナツキのバリアは、バチバチ!!っと音を発て、その形状を歪ませる。


バリアと言えど100%の完全防御では無い。術者自身の防御力の約7~8倍の耐久力となるのだ。その域を超える攻撃は術者に負荷として襲いかかる。



「うぐっ…!!」



僅かではあるがナツキのLGが減少。



「マジでか!?Lv.80でも受け切れんか!?」

「エネミー側のクリティカルヒットですッ…!!受け切れ…ません!!」



瞬間、ナツキのバリアがヒビ割れ、割られた窓ガラスの破片のようにバリアが砕け散る。止めるもの無きスカルライダーの鎌手は、ゴンザレスの構えた盾に迫り――…




 …――ズバァァァァッ!!




「どわぁあぁぁぁッ!!」

「うあぁぁぁぁッ!!」



体に赤く光るラインを残し、ナツキとゴンザレスの体が宙に舞う。



「ナツキ!!…ヒート!どこでもいいから隠れてて!」

「うおっ!」



ヒートを抱え走るアイリは、抱えたヒートを放り投げ、両手に銃を構えて方向転換。



「よくもウチの室長(ボス)に…ぶっ飛ばす!!」



っと次々に弾を撃ち出すアイリ。銃撃に合わせ、スカルライダー後方から飛び上がるヒデとチエリコ姉妹。



「《炎閃乱舞(えんせんらんぶ)》!!」

「《沙雨突(さざめづき)》!!」

「…《100パウンド・クラッチ》…」



ヒデは火炎をまとう小刀の舞を、エリコは目にも留まらぬ速度で放たれる無数の突きを、チエコは黄金に輝く巨大ハンマーを振りかぶり、スカルライダーの背中めがけて撃ち放つ。


斬撃に打撃、各々のエフェクト音が鳴り響くと、スカルライダーは金切り音を再び上げてその身を捩らせる。続きアイリの放つ手榴弾が次々にスカルライダーにヒットし起爆。その度にスカルライダーの身は大きく揺れ、苦しげに顎が上がる。


この光景に、投げ出されたまま地面に座るヒートがガッツポーズ。



「うっしゃー!!効いてるぜ!このまま――…んなっ!?」



これならいける!っと、何気に見上げたスカルライダーのステータス。これを見たヒートの目が見開いた。


驚きの理由(わけ)…それはLGの本数。Lv.50のポロンのLGは数値が高くともゲージは1本で表されていた。しかしスカルライダーのLGは5本も並んでいるではないか。しかも現在のスカルライダーの残りLGは4本が満タン。ようやく1本目のLGが終わろうとしているような状況。



「これはマズいですね…」



唖然とするヒートの後ろから、戦況に戻ったナツキとゴンザレスが姿を見せる。



「室長!?だっ、大丈夫かよ!?」

「えぇ。派手に飛びましたが、ゴンザレスさんの〔大防御(だいぼうぎょ)〕スキルが盾となってくれたお陰で、ほとんどダメージはありません」

「ワイだけやないやろ。ナツキの事前バリアのお陰や……しっかし、まだ1本も削れとらんか、LG…」



舌打ちと共に首を左右にコキっと鳴らすゴンザレス。ヒートに至っては、「あのLGは何だ?」っとナツキとスカルライダーを交互に見てくる。



「スカルライダー…あのエネミーはレイドボス…レイドボスは全てあのように、数値化したLGではありません」

「数値化…?え?数では表せないって訳か?」

「その通りです」

「は?じゃあ…あのポロンと比べてどのくらい強いんだよ?あのガイコツ」

「ポロンですか…ポロンのLG約30本分が――…」

「さっ、30本もかよ!?」



っと驚くヒートの視線に、ナツキは首を横に振って返す。



「その30本分が、スカルライダーの5本あるLGの1本分です」

「――…なっ…!!」



予想を遥かに超えた答えに、ヒートは一瞬フリーズ。この数値を聞けば、さすがのゲーム素人でも異常さを感じとる。ましてやポロン戦も身をもって体験済みだからなおさらだ。


呆然とするヒートの体を、歩み寄るナツキが突然持ち上げ、己の肩にヒートのお腹を乗せるように担ぎ上げた。



「なっ、何だよ!?何すんだって室長」

「ヒートさん。これからの戦いは、僕とアイリのレベルをもっても、正直厳しい戦いです」

「だから何だって!?」

「僕が全力で守ります。だから全力で戦う僕から、ヒートさんも全力で離れないで下さい」

「は?」

「それでは――…行きます!!」

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