2話 みつかっちゃった、みゃあ!
みゃあは、かなしそうに、あめをふらせてた、ななについてったみゃ。
ななは、すこしのあいだ、みゃあをまもってくれる、らしいみゃあ!
「みゃうぅ……」
「随分と小さい猫殿でござるな……何も手出ししないでござるよ。ほら、でござる」
拙者は、ゆっくり猫殿に手を差し出す。
「猫殿、拙者は服部半蔵でござる。難しいでござるから、ナナ殿のように『ハンゾー』で良いでござるよ。拙者、過去から来たゆえ、変わっているでござるが……安心して欲しいでござる」
「みゃ……」
猫殿はしっぽをぴんと立てていたのを力を抜いたでござる。ナナ殿の名前を言ってから警戒を解いた気がするでござるな。
――そういえばこの派手で洒落たリボンは、ナナ殿の物でござる!
拙者が思考を巡らせていると、猫殿は拙者の手をくんくんとして、「みゃあ」と鳴いてから拙者の手に座ったでござる。
な、なんと愛らしいでござるか!
「ナナ殿と友達になったでござるか?」
「みゃう!」
猫殿は、器用にぴっと挙手したでござる。
「そうでござるか。ならば拙者とも友達になって欲しいでござるよ。良いでござるか?」
「みゃみゃっ」
猫殿が飛んできたでござる! 拙者は慌てて抱き留めたでござる。ふう……。
「よろしく頼むでござる、猫殿」と言いながら、肩に頭を乗せて背中を包むように撫でると、猫殿はいつのまにか寝てしまったでござる。
「これは……困ったでござるよ」
察するにナナ殿は猫殿をこっそり匿っている様子でござる。前に野良猫を匿った時のように、食べすぎてはいけないでござるから、食べたものはメモを残しておくでござる。
畑の野菜を取るために持ってきた籠に拙者の風呂敷を敷いて、よく眠っている猫殿をそっと寝かせてあげるでござる。猫殿は、丸くなったでござる。起こしてしまったでござるか……?
全然起きないでござるな! 疲れていたでござるか?
「おやすみなさいでござるよ」
もう一度背中に触れると、拙者の手にくるりと巻き付いてしまったでござる!
動かぬまま、十分が経過したでござる。
ぬくぬくするでござるなぁ……。
猫殿は今度はころんとお腹を出して寝始めたでござる……。やっと、手が解放されたでござるよ。
愛らしい寝顔でござる!
猫殿は小さいゆえ、籠の余ったスペースに洗ったミニトマトときゅうりを置いておいたでござる!
「起きたら食べるといいでござるよ。大きくなるでござる」
ポケットから小さい巻物を取り出し、筆ペンで猫殿にあげた食べ物を書いておくでござる。これでナナ殿と栄養管理ができるでござるな。
巻物を籠に隠し、拙者は久しぶりに見た猫殿を遠くから写真を撮ってシェルター内に帰ったでござる。
***
み? ねてた、みゃ? くんくん……ごはんにゃあ!
いただきますみゃあ〜〜〜!
おみずが、はいってるみたいな、あかいのまるいの、おいしいみゃ。
みどりの、ながいのも、すっきりしておいしい、みゃ!
さっき、きた、ぎんいろのにんげん、はんぞーは、いいにんげん、だったみゃ。おかおが、おにんぎょう、みたいだった、み。
ななの、ともだち、だったみゃあ!
あったかい、ぬの、くれたみゃ。
みゃあのちかくに、くいくい、するみゃ。
みぃぃ……? いがいと、ながい、みゃ!
みゃっみゃっ? からまった、みゃあ〜〜〜!
「あにゃにゃあ⁈ ハチっち? どうしたっスか?」
なな、みゃ! あいたかったみゃあっ! いまいくみゃっ!
でも、ぐるぐるまき、うごけないみゃ……。
「みゃうぅ……」
「にゃふふっ! この絡まってる唐草模様の風呂敷はハンゾーっちっスか。いいものもらったっスねぇ。およ、巻物もあるっス。ふむふむ。お野菜をもらったんスか!」
ななは、笑いながらほどいてくれた、みゃ。
それから、ふわふわのぬの、くれたみゃ。
「ひっかいたりかじったりしたらダメっスよ〜! 体の上にかけると風をしのげるっス」
からだのうえ、のせるみゃ? わかったみゃっ!
ふわふわで、あったかいみゃあ……。
でもいまは、ななのとこ、いきたいみゃっ!
「みゃああ〜〜〜!!!」
みゃあが、ななに、ぴょんっすると、すぐ、だっこして、せなか、なでなでしてくれたみゃ。
「ハチっちは本当にかわいいっスねぇ……ハンゾーっちはただの野良猫だと思ってるっス。しめしめっス。前にもウチと野良猫をこっそり餌付けして、ユヅパイセンに怒られてる常習犯っスから、ハチっちのことも言わないっス! このままハチっちを匿うっスよ!」
わからないみゃ。でも、なな、わらってるみゃ! いいこと、みゃ?
みゃあは、ほっぺにすりすり、するみゃ。
「ハチっち〜くすぐったいっス!」
みゃあも、ななに、【かわいい】するみゃ!
みゃあは、ふたつにむすんでる、ななのかみ、みぎにとん、ひだりにとん、したみゃ。
そうすると、ななは、「およ? ウチの華麗なツインテールで遊んでほしいっスか?」ときいた、みゃ。
ちがうみゃう。みゃあが、ななをあそんであげるのみゃう!
ななは、【ついんてーる】をみぎとひだり、こうごにうごかしたみぃっ!
「ほらほらっス! ハチっち〜〜〜ツインテールくるくる遊びっスよ!」
みゃあが、ぴょんぴょん、はんのう、すると、ななは、たのしそう、わらってたみゃ。
ほらほらなのみゃ。あそんであげてるの、みゃあなのみゃ!
***
「ん? 猫の鳴き声が聞こえるぞ?」
ナナ姉さんの新たな能力『猫化』の修行だろうか。しかし、猫の鳴き声と話し声がかすかに聞こえる。侵入者なら危ない!
自分は、行儀が悪いがくるんっとジャンプをして2階に上がり窓から外を見る。フリル姉さんの「こらっですのー!」という声が飛んだきた。
「すいません、念のための警戒です!」と答えるとフリル姉さんは「ごめんなさいですのよー!お気をつけて下さいですの」と言ってくれた。
――死角で見えないが、右の方だったな。
「おっ。沖田さん、ちょうど良いところに。勉強の時間になったんだが、どうする?」
キョウ兄さんが付箋をたくさんつけた教材を持って、自分のところに来てくれたのだ。
予めキョウ兄さんが勉強して、自分に教えてくれているのだな、と思うと申し訳ないが、とても嬉しい。
「ありがとうございます! キョウ兄さん! お願いします」
自分が頭を下げると、いつものように「大袈裟だな」と笑ってくれた。
「そういえば窓を覗いてどうしたんだ?」
「猫の鳴き声が聞こえたんです。ナナ姉さんの修行かと思ったら、話し声と猫の鳴き声の両方が聞こえたので確認をしに来ました」
「そうか……ここからでも生体反応くらいは見れるから待ってな」
自分は、キョウ兄さんから教材を受け取る。
キョウ兄さんは、生物の体――血管や臓器を見ることができる医者なのだ。
こめかみを三回叩くことで能力は発動される。
――目の色が、変わった。能力行使中の合図だ。
「生体反応は、小さいのが一つだけだな。お、なんか走ってきた。沖田さん、目視で確認してくれ」
「はい!」
自分は目を凝らすと、ナナ姉さんらしき猫が、小さなぬいぐるみを背中に乗せて走っていた。
「ナナ姉さんとぬいぐるみ……に見えます」
「俺もだ。しゃべるぬいぐるみでも買ったのかもしれないな。ったく、ナナのやつ何やってんだか」
さっきは確かに聞こえた……。いやしかし、しゃべるぬいぐるみだったのか?
ナナ姉さんならしゃべるぬいぐるみを買っても不思議ではない、な。
「すみません! 判断を誤りました!」
「シェルターではこれくらい警戒した方がいい。誰が命を奪いにくるかわからないからな……。沖田さん、さんきゅな。一応ユヅ先輩にも共有する」
「はいっ!」
些細なことでも自分が力になれたらいい――自分は、本来ならここにいないし、元々敵だったから……こんなに手厚くしてもらうなんて、頭が上がらない。
「編入試験は近づいてきてるけど、あんま力入れるなよ? 今も十分、八割は点数取れると思うぜ」
キョウ兄さんがそう言うなら、安心だ。でも――
「でも、自分はもっと頑張りたいんです! あの学校のセーラー服は、新撰組と同じ青色ですから」
キョウ兄さんが悩んだ後、優しく微笑んでくれた。
「そうか……じゃ、頑張るか! あとでベルから差し入れがあるから楽しみにしとこうな」
「ベル姉さんが⁈ はいっ!」
ナナとハチは、バレそうになっているのを知らずに呑気に遊んでいたのであった。
***
それから、みゃあは、ななに【かわいい】をいっぱいしてもらって、はんぞーと、とんで、あそんだりしたみゃ。
ごはんも、【ふれっしゅ】なもの、たべてまんぞくみゃあ!
ふれっしゅな、やさいは、からすが、ねらってくるみゃ。
みゃあは、はんぞーが、おいはらってたみたいに、やさい、まもるみぃ!
「みゃううう〜〜〜! みゃあっ! み!」
みゃあが、ぴょんっして、ひっかく、すると、からす、こなくなってきたみゃ。
「猫殿、前より高く飛べるようになったでござるな。野菜を助けてくれてありがとうでござる」
「みゃっ!」
みゃあは、はんぞーといっしょにとんで、あそんだみゃ。けいけん、みゃあをつよくした、みぃ!
ななは、たまにきて、やっぱり【かわいい】をしていくみゃ。ごはんも、おいしいの、もってきてくれたみゃ。まぐろ、おきにいりみゃ!
みゃあが、ごはん、たべてるだけで、「かわいいっスね〜」いうみゃ。ふしぎみゃあ。
「今日はハチっちの好きなマグロっス。焼いてきたっスよ。お水も飲むっス」
いただきますみゃあ〜〜〜!
みゃあのこと、いっしょうけんめい、すまほで、しゃしんとってた、みゃ。
みゃあは、さいきん、【ぬいぐるみ】になれるの、しったみぃ!
だから、ぬいぐるみにも、なってあげるみゃ。
「はにゃにゃ! ぬいぐるみのハチっち、ふわふわっス〜〜〜!」
みゃあはさわらせてあげたみゃ。さーびす、おわって、もとにもどったみゃ。
ななも、ねこになって、みゃあのよこに、すわったみゃ。ななは、ふしぎにんげんみゃ。
みゃみゃっ! あったかいみゃあ!
みゃあが、ごちそうさま、すると、いっしょに、はしったりした、みゃ。ねこどうし、おさんぽたのしいみゃう!
でも、みゃあはしってるみゃ。へいわは、つづかない、みぃ……。
みゃあは、ままとおわかれしたひ、おもいだしたみゃ……。けんきゅうじょ、から、すてられた、みぃ……。
まま、いきてる、みゃ?
あいたい、みゃう……!
みゃ? はしるするみゃ……? はんぞーのおと、みゃ。
「誰かが近づいてくるっス。ハチっち、ぬいぐるみになるっス!」
なな、しんけんにいったみゃ。みゃあは、ぬいぐるみ、なる、みゃ!
ここにいたでござるか、とハンゾーはいったみゃ。さがしてた、み?
「ナナ殿、猫殿――緊急事態でござる」
みゃあのそんざい、ばれた、みゃっ⁈
なにが、あったみゃーっ?
シェルターというナナ達が住んでいるところには、大きな畑があります。色々栽培しているので、追い払うお手伝いをしてくれたハチにはとっても感謝している服部さんでした。
ハチは小さい猫ですが、身体能力も優れていますよ。




