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未来で捨てられた猫は、過去で活躍する  作者: 夢乃めちあ


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12/15

12話 あたりまえ、みゃあ!

*** 登場人物 ***


・ハチ

未来から来た小さな猫。賢いが、小さな体が行動に追いつかない。わりとドジ。


・七彩七海(ななせななみ)→ナナ

護衛をしているピンク髪のギャル。

弓月の内縁の妻。籍は入れていない。


・ベル→ベル(本名は明かせない)

唯一の現代人。

"書き手"というレア能力から命を狙われやすい。

長い金髪。恭介の婚約者。


・来栖恭介(くるすきょうすけ)→キョウ

医者。茶髪。ベルの婚約者。

たまにぽんこつになるが冴えている。


・百目鬼弓月(どうめきゆづき)→ユヅ

リーダー兼護衛。少し長めの黒髪を結んでいる。

七海の内縁の旦那。妖艶で顔が良い。


・服部半蔵(はっとりはんぞう)→ハンゾー

過去人。護衛をしているが、畑の世話とかもするらしい。

顔が良すぎるため、両目をみたら誰もがめろめろになる。

灰色の髪で、前髪を片方伸ばして片目を隠している。


・若王子王子(わかおうじおうじ)→おうじ

七海の兄でこの中の年長者。猫耳のニット帽を常にかぶっている。

努力型の天才で、パソコンやスマホでハッキングなどできる。


・黒羽(くろば)フリル→ふりる

上品なお姉様で美人。ゴスロリの服を着ている。

紫の髪をくるくる巻いている。

元々、沖田と同じ組織に属してベル達と敵対していたらしい。


・沖田総司(おきたそうじ)→そーちゃん

過去人。とある事情で沖田蒼(おきたそう)と名乗っている。メンバーの中で一番若い。背が高く麗しい。

水色の髪をサイドテールに結んでいる。


 いま、みゃあは、ななと、そーちゃんをあそんであげてるみゃ。


 ななのおててと、そーちゃんのおてて、あげたほうにたっちする、あそび、みゃあ!


 りょうほうあがったら、そーちゃんのおてて、ゆうせんで、たっちする、るーる、なのみゃ。


 ふりるが、ていあん、してくれた、み。


 そーちゃん、なにか、おもいだしたかのようなおかお、したみゃ? 「あっ」っていった、みゃ!


 そーちゃん? どうしたみゃ?


 そーちゃんは、にこにこるんるんの、ごきげんな、ななに、はなしかけたみゃあ。


「ナナ姉さん、そろそろハチを休ませなくていいんですか? ハチ、お前の意見も聞かせてくれ。キョウ兄さんから、お前が足を酷使したから安静にするようにと言っていた気がする。……どう思う?」


「みゃ⁈ みゃうみゃうみゃあ」


 みゃあは、そんなことない、くびをふった、みゃ。でも、ちょっと、あんよ、じんじんする、みぃ……!


 まだふたりとあそんであげないと、いけないみゃああ――! みゃうう。


 ふりる? なにわらってるみぃ?


「くすくす……。まあ、ハチ様、お耳としっぽがだらんとなさってますのよ? ご自身でもわかっているのでしょう? 必死になって否定しなくて大丈夫ですの。治りましたら、今度は私も一緒に遊んで下さいませ。今は、治すためにクッションで寛いでくださいですのよ」


 そーちゃん、ふりる、きづいてしまったみゃああっ!


 みゃあは「みゃ」って、おてて、ぴっ! あげて、ふにゃふにゃあるいて、クッションにもどろうとした、み。


 そうしたら、「失礼しますの」っていって、ふりるが、とつぜん、だっこして、ひざにのせた、みゃ。


 みゃあをあるかないように、してくれた、みゃあ! あしに、やさしいを、してくれたみぃ!


 そーちゃんがくっしょんを、しゅぴっ、もってきて、ふりるのおひざにくっしょん、おいて、みゃあをすわりやすく、させてくれた、みゃ。


「ハチ。フリル姉さんの膝は気持ちいいぞ」


「そうっス! 安心するんスよ〜」


 ふわふわくっしょん、やっぱり、ふわふわ、みゃあっ!


 あと、ふりる、こわい、おもってたけど、せなか、なでるおてて、ふしぎ、み。まま、おもいだすみゃあ……。おひざも、ふりるのしせいがいいから、みゃ? すわりごこちがいいみゃあ!


 【ベルうさ】と【キョウうさ】も、そーちゃん、わたしてくれたみゃ。みゃあの、おなかのせてほしい、み!


 みゃあは、ころん、して、おててのばした、みゃ!


「ははっ! かわいい手だな! さっきみたいに仰向けで抱っこしたいのか?」


 そうみゃあ。そーちゃん! はやくわたして、みゃあ!


 みゃあは、おててとあんよ、しゅぴしゅぴうごかして、おねだりしたみゃ。


「あにゃ! 必死っスね! ハチっち〜! にゃふふふっにゃふふふふふっ」


 ナナ、わらうな、みゃああっ! ほんとうは、ままみたいに、はなしたい、み。じぇすちゃーするしか、ないみゃうう!


 そーちゃん、つられて、わらってるみゃ。わらいながら、うさぎ、だっこさせてくれた、みゃあ!


 ベルとキョウのふたりのにおい、するみゃ〜……ぎゅう、して、くんくんする、み。


 あんしん、する、みゃう――。


 ――みゃむん? おうじのしせん、かんじる、みぃ! ふりるのおひざ、うらやましいみゃ? みゃふん。


 みゃっ? こころの、くろいけはい、する、みぃ……。しずかなユヅが、うでをくんで、まさに、なやんでる、かんじみゃ。どうしたみゃ?


「――なんだ? オペが進んでいないな」


 ユヅは、りびんぐのてれびにうつった、キョウとベル、みてた、みゃ。ふたり、こまったかおではなした、みぃ。


 ベルとキョウががめんにむかって、はなした、みゃ。


『あ……ユヅさん……その、盗聴器が体と合体する感じ、ってか複雑にで取り付けられてて、キョウでも外せないんです』


『なあ王子くん、盗聴器の解剖だけでもできないか? 俺がサポートするから』


 おうじは、いすからたって、くびをぶんぶんふって、おててで、ばってん、つくったみゃ! おめめもばってんになってるみゃあ! どうなってる、みぃ……?


 あにめ、みたいに、あせもでてる、みゃ!


「ええ、キョウくん! そんなあ……! オレ、血が怖いよ〜〜〜無理だよ〜〜しかもさあ、見たことない型だもん」


 みゃみゃ⁈ みゃあ、しってる、みゃ! あの、とうちょうき、みゃあとままがうめこまれて、あとでとられたやつ、みゃ!


 ままがしゅじゅつするとき、みゃあがしんぱいで、かくれてみにいったやつ、ちがいないみゃあっ!


 ふりるっ! みゃあにスマホかして、みゃあっ! つたえないと、いけない、みゃ!


 じゃんぷ、して、かして、かしてってする、みゃ!


「みゃ! みゃみゃ! みゃうみゃう」


「ど、どうしましたの⁈ 何かありましたですの?」


「落ち着けハチ! そんなにジャンプしたら足に負担がかかってしまう!」


 ふりる、そーちゃん! ちがうみゃあ! どうしようみゃううっ……。


 ハンゾーが、すっ、ときて、すまほとたっちぺん、わたしてくれたみゃ。


「ハチ殿――もしや、話したいことがあるでござるか?」


 みゃあは、おてて、ぴっ! したみゃ。

 すぐにスマホ、つかう、みぃ!


 みゃあ、たっちぺん、くわえる、みゃ。ちょっと、がぶ、するくらい、つよく、くわえて、はやく、つたえる、みゃああっ!


【あのとうちょうきは、みゃあとままが、うめこまれて、とりはずされたものとおなじ、み。みゃあ、どうやって、しゅじゅつしたか、おぼえてる、みゃ】


「なんだと⁈ そうだったのか⁈」


 ユヅ、びっくりしすぎみゃあ!


 みゃあがうちこんでるあいだ、みんな、まっててくれる、みゃ。たすかる、みゃ。ぴぴぴぴ! みゃあーっ!


【みゃあを、おぺしつ、つれてってほしいみゃ! キョウのおてつだい、したいみゃあ! みゃあはねこ、み。きん、がある、みゃう……。だから、かんせんよぼうのために、おぺしつには、とうめいなかーてん、つけてほしい、みゃ。みゃあがしじ、できる、みゃ! ……でも、みゃあは、おせっかい、ごめいわく、みゃ?】


「ハチっち、マジすげーっス。迷惑なわけないっス! ありがたいっスよ!」


 ふりるも、「すごいですわ! お節介でも迷惑でもないですの。ここでは、ハチ様は自由に気持ちを伝えていいですのよ」いってくれた、み。


 なな、ふりる……そう、なのみゃ?


 うれしい、みゃああ!


 ふりるに、おててのばして、ぎゅう、しようとしたけど、だっこされてなでなでされた、みゃ。

 ちがうみゃ、みゃあが、ふりるを、だっこしたい、みゃあ〜〜!


「ベルっちーー! 感染予防のカーテンつけてっス! ハチっちがその手術の方法わかるって言ってるっス」


『うそ、助かる! キョウっキョウー!』


 ずっとなやんで、ちからつきたキョウを、ベルがゆらゆら、ゆらした、みゃ。おはなしきいた、キョウ、ぱっとあかるくなったみぃ!


『ハチ――力を貸してくれ!』


「みゃあ!」


 あたりまえ、みゃあっ!



***



 ユヅ先輩お手製のゴミ袋で作った猫用のガウンはなかなかの出来で、それを着たハチはかわいい! と評判だった。猫耳のところも作ってある。即席にしては上出来すぎた。ベルがナナに「写真とっておいてー!」とお願いしていた。


 そのガウンの上から消毒用アルコールを気をつけてフリルさんに塗ってもらった。随分とこの短時間で打ち解けたみたいで、嬉しそうに「みゃあ!」と聞こえてきていた。


 医療用のガウンを着た服部さんが、ハチを抱いて来てくれた。


 血に慣れている人間しか耐えられないからな。

 ――ハチは人間の手術を見ていられるのか……?


「みゃっ!」


 ハチは、挨拶の代わりに手を挙げてくれる。


「ハチ、助かるけれど無理はするなよ」


 ハチにはスマホじゃなくて、王子くんのパソコンを持ち込んで、そこに入力してもらっている。パソコンの方が早く文字を打てるらしい。王子くんにすぐにプログラムを作ってもらって、音声が流れるように調整してもらった。


【みゃあは、いっぱいやすんだ、みぃ! 大丈夫みゃあ】


 ハチの鳴き声の音の高さに寄せてある機械の音が流れた。まるで本当にハチが話しているみたいだ。


 確かに、元気良さそうだが――後ろ足が気になるな。


「そうか。助かる。ところでお前、遊びすぎたろ?  あのメンバーと遊ぶのは楽しいが、今度からは気をつけような」


「みぃぃ……」


「ちょっと! キョウ! ハチが大事だからって今お説教しなくてもいいでしょ⁈」


「痛くしたら困るだろ……。ああ、で、早速いいか? 盗聴器を剥き出しにするところまでは進めたんだ。だが、外すことが出来ないんだよ。この盗聴器の仕組みを教えてくれるか?」


 ハチは耳をぴーん! と立てて、「みゃうみゃ!」と 手をすいすいさせた。近づけて、と言っているみたいだ。横でまたベルが「きゃあっハチ! その動きかわいい!」ときゃっきゃしている。まるで泳いでるみたいだな。おっと、気が緩んでいけねえ。


 意図を汲んだ服部さんが、「こうでござるか?」とハチをカーテン越しに埋め込まれた盗聴器に近づける。それから「みゃみゃ!」とパソコンを指した。撮った写真を確認したいらしい。


「みゃむん……みゃっ!」


悩んだかと思ったら、すぐにわかったらしい。きっとIQも半端じゃねえな。


「わかったでござるか!」

「みゃあっ!」

「ハチすごーいっ!」

「頼む、教えてくれるか?」


【これは、ままから外したときと同じにするといいと思う、みゃ】


「お、音声が滑らかだな」


 ハチはがーん! やってしまった! みたいに口をぽかーんと開けて後ろに倒れたが、服部さんが不思議な顔をして抱き直した。人間みたいなやつだな。


【漢字でいいみゃ……?】

「おう。漢字使ってたのか。どうした、急に」

「へー! 漢字も使えるんだ、ってそうだよね、ハチだもんね。すごいよー!」

「……すごいでござる」


 ハチは安心した様子で、肉球の先につけてもらったスポンジで器用にキーボードを叩く。


【わかったみゃ。事は急ぎ、みぃ。まず、盗聴器は三層構造になってるみゃ】


 ハチはキーボードで早く打ち込んでいた。とはいえ人間のようにとはいかない。俺とベルは話終わるまでじっと待っていた。


【一つ目の蓋は、上みゃ。頑丈で外しにくい、みぃ。でも大丈夫みゃ! そのまま取っても神経のお邪魔してないみゃ】


「研究員の人はどうしていたんだ?」


【強そうなメスでガリっと取ってたみゃ。けれど、固定しないと、いっぱい血が出る、み……】


「うわ、雑な手術だったんだな」


【これはみゃあの考えみゃ。時間をかけてでも、固定したほうがいいと思うみゃう。揺れるとその分出血多くなるみぃ】


「だな。って……固定も何もしなかったのか⁈」


 お前だって受けた手術だろ、と衝撃を受けた。


【キョウ、みゃあの手術の跡は見える、みゃ? お医者さんの中でも資格試験が必要な能力みゃうう……】


「任せろ、三段階全部取得済みだ! 服部さん、ハチをカーテンに近づけてくれ!」


【ハンゾー、みゃあの両手、みょーんって持って欲しい、みぃっ! みゃあはお腹の右斜くらいに傷口があるはずみゃあ】


 服部さんは、「そのような抱っこはできないでござる。丁寧にしたいでござるよ。では、この台の上で仰向けになってほしいでござる」とハチを台に乗せてくれた。見えやすいな。優しい服部さんが、猫を尊重をしない扱いはしたくないだろ。


 ハチは、「みゃみゃむ、みぃ!」って一回服部さん手でぽすっと叩いて抗議したが、服部さんは首を振った。「みゃあう……」と観念して台の上で仰向けにころりんとボールのように転がって見せてくれた。


「きゃあっハチかわいい! ……じゃなくて、見える? キョウ?」


 ハチは仰向けのまま、「みゃあっ」と鳴いて、ぴっ! と手を上に向けてぷらぷらさせてベルに挨拶した。隣で「きゃーっハチーっ!」とベルがかわいく手を振ってる。……ベルが猫を目の前にするとこうなるのか。テレビで見た、推しのアイドルを見ているファンみたいだな。


「ハチー、見えたぞ。深いな……ってお前固定されずに除去されたのか⁈ あ? 熱もあるじゃねーかよ!」


 ――しまった。考えさせすぎた。ハチに休憩もさせてない。さっきも遊んでいたな。昼寝はさせたが……コイツには短すぎたか? 意識したくねぇが普通の猫じゃないんだ。気を配れ! 悪化して苦しい思いはさせたくねぇんだ!


 ハチの顔には、思いっきり「おねつバレたみゃ!」と書いていて、「みゃ……みみみぃ……」と鳴いて隠れるように服部さんの背中に回った。いや、お前……隠れても無駄だぞ? まあ、子猫だしな。


 困って後ろのハチを支えようとしている服部さんの背中からしっぽが見える。


「みゃっ……みゃむみゃみゃみゃあ!」


 多分コイツのことだから、大丈夫だとか言ってるんだろ。ったく……甘えろよ。


 もうお前は――頼っていいんだ。


 ベルに耳打ちすると、「わかってるよ」と返ってきた。流石だな。ハチのことを理解している。


「ハチ、あのね、私たちのために頑張ってくれてありがとう。あとで具合悪くなったら、私もみんなも悲しくなっちゃうの。だからね、ハチに休んでほしいな……いいかなぁ?」


 ベルは優しい言い方をする。俺ならキツく言ってしまうところだったな。さっき会ったばかりだが、コイツが愛おしくて仕方がない。猫だし過剰に心配しちまう。


「みゃ! みゃみゃっ」


 ハチは服部さんから降りて、パソコンの台の方に向かって鳴く。「使うでござるな?」と服部さんがハチを抱き上げて、キーボードのところに連れて行った。


「みゃあは、ちゃんと休む、みゃう。ごめんなさいみゃ……。でも、手術のこと、伝えられる手段があるみゃあ! みゃあは、"鍵穴"あるみゃ。"読み手"の二人なら、みゃあの記憶から手術のこと、わかるみぃ!」


「そうか! でも、お前の記憶を覗いていいのか?」


「いいみゃ。そのほうが、きっと、わかりやすい、みゃ。みゃあはよく思い出してから、ねんねする、み。そうしたら、夢の中でよく見える、みゃあ?」


 夢を見るのならハチは寝て休めるし、俺は記憶の中で生の手術を見ることができる!


「ああ、そうしよう。ベル、一旦オペ室から出よう。開いた傷は、ゲル状の絆創膏で蓋すればまた手術を引き続きできるし清潔のまま保てる。盗聴器から出る毒は、解毒薬を打って二時間は凌げるだろう」


「じゃあ、ハチの"夢"を見るタイムリミットはオペの時間を入れても一時間くらい?」


「早いに越したことはないが、記憶域の中から入って出るのは容易じゃないのは知ってるだろ? だから最速で二時間にする。ユヅ先輩に起こしてもらおう」


 ハチの"夢"を見るなら、ベルは能力を解除しなくてはいけない。つまり、今止めている時間が動き出し、毒が止められなくなるということだ。


 原則として、"夢"の中に入り記憶を見るのは二人一組と決まっている。この"読み手"の能力があるのは、あのメンバー含めて俺とベルだけだから、ベルはどうしても能力を止めざるをえない。


「そういえば、どこに鍵穴があるの?」


 ベルはむむ? として色々な角度からハチの頭を見ている。本来、鍵穴をつくるのは頭のどこかで、作ってしまった箇所からは毛が生えなくなり鍵穴が浮かび上がるようになる。


「すげぇ小さいやつ。多分見つけられねえよ。な? ハチ」


「みゃっ!」


 服部さんの手の上で、ぴっ! と手を挙げた。こら、立つな! 足に負担がかかる! ……はあ。言わないでおくか。寝てる間にアイシングしてやろう。


「じゃあハチ、お前の記憶を見せてもらう。すまない」


「みゃうみゃう」


 ハチは首を振ってから、服部さんの手から俺の肩に乗ってきた。しっぽをふりふりしている。体を支えるように手を添えると、「みゃあ!」とこんぺいとうを鈴で作ったような拙い声で鳴いた。ったく。こいつめ。俺の手は勝手に動いてわしゃわしゃと撫でていた。ふわふわした感触がたまらないな、と思ってハッとした。


 ベルと服部さんがにやにやとして俺を見ている。「うるせえなっ」と言うとハチがびくっとした。ハチ、すまんすまん。



***



 オペ室のドアはスライド式になっているの。


「なんか重てえ……うぐ、ぐっ!」


 ガラ、リとリズム悪くキョウがドアを開けると――


 ごろんごろんと転がって、ピンクのツインテールを綺麗に弧を描くようにびゅんびゅん回しながら壁にぶつかって、ナナがものすごい入場をしてきた! 仰向けになって、足をバタバタして、「いたたっスぅぅ」って頭を抑えてる。めっちゃ痛そう!


 私は、痛いの痛いの飛んでいけー! と言ってナナの頭を撫でると、「治ったっス〜〜」って言って頭をぽふぽふ触ってた。ほ、本当かな? 派手にぶつけてたよ?


「ふにゃ? ベルっち。ハチっち、ハチっちはどこっスか〜〜?」


 まだ目が半目で寝ぼけた顔してる。ナナったら、ドアの前でハチを待っていて寝ちゃったのかなあ? 心配してたんだねっ! ふふっ。


 ハチがキョウのパーカーのフードの中からひょっこり顔を出して、様子を見てる。「みゃう?」って、どうしたの? って感じで首をかしげて、耳をぴこぴこ動かしてナナを見つけると、ありゃりゃ、というしょぼしょぼの顔をして、今度は小さなおててで頭を抱えてた。仕草が人間みたいだね⁈


 ハチ、ナナへの理解が深くて早い!


「ハチっちの声っス! ハチっち! ハチっちを返してっス!」


 超必死だ! キョウの周りにまとわりついてる! キョウはハチを守ろうとして、わちゃわちゃかわしてるけど、ナナの速さにはついていけない。


 だって、ナナは強いんだもん!


「あのなぁ……『返して』じゃねぇだろ。ハチにもナナにもやることがある――って聞いてねえか。ユヅ先輩!」


「ああ。ハチを待っていてすぐに寝てしまったからな。七海、寝室に言って恭介とベルが、ハチの『夢を見る』準備をしてくれ」


「嫌っス。ウチはハチっちと遊ぶっス」


 ちょ、ナナ⁈ 服部さんも加わって、ハチを守ろうとキョウの背後に立ったけど、ナナは軽く壁を蹴って飛んだ――ハチを抱っこしてリビングに光の速さで二人が離れていく。「みゃあーーーー!」っていう鳴き声が聞こえる。


 ハ、ハチーーーーー!


「こら! ナナ!」


 キョウがナナを睨んで怒るけれど、ユヅさんがため息をついて話した。


「恭介、頼む。少しでいいから時間をくれ。七海は本当にハチを心配していたんだ……」


「そうですの。近くに行きたいけれど行けないと仰って、ドアの前に座ってましたのよ」


 うう、ユヅさん、フリルさん、そうだよね。ナナったらドアの前で待ってたんだもんね……ハチの様子を見つつ嫌がったりしたら守りに行こう、とキョウと服部さん、私がアイコンタクトする。ナナは悪い子じゃないの。良い大人だし。そもそも、ナナにハチがついてきたんだし!


 ナナはソファに腰を下ろすと、ハチを抱っこして顔を覗き込んだ。ちっか! 逆に見えないんじゃない?


「ハチっち! 大丈夫っスか? 怖くなかったっスか?」


 ハチが、「みゃ」って鳴いた。これは、おててぴっ! ってする時の鳴き方だ。でも、包み込むように抱っこしてるからできないみたいで困ってる……。見かねたキョウが代弁してくれた。


「ハチはよく頑張ってたぞ。熱もあるし今はへとへとだ」


 ナナはびっくりして、わたわたして、手を離してしまった。ハチを落としそうになったけど、ハチはしゅたっとナナの頭に乗っかった。ふ、ふう……。


「あにゃあ⁈ 大変っス! 確かにウチの頭がほかほかあったかすぎるっすね? よーしよし、いい子いい子っスよ、ハチっち」


 ナナが頭にいるハチをそっと膝に乗せると、ハチも力が抜けたのか安心したみたい。


 ハチはナナに向かって「みゃあ」って甘えるように鳴いて、手足を伸ばしてナナの膝の上でのびーっとした。ぺちゃんこになってる!

 ナナをちらりと見て、また「みゃ」と鳴く。なでていいよ、って言ってるみたい!


「お? 甘えてるっスね? うちが疲れが取れる魔法のなでなでしてあげるっスよ〜」


 ふふっお姉ちゃんと妹みたい。


 お姉ちゃんは、撫でさせてくれているハチかな?

オペ室にて。


 ハチはキョウの肩にいたけど、歩くたびに揺れるからキョウが支えてた。


 その時、私はピン、と思いついたのである。


 キョウのパーカーのフード!


 ここならハチも十分入れるスペースがあるし、キョウの背中の温度を感じられて安心できそうじゃない?


「ね、ハチ。一旦私に抱っこさせて?」

「みゃ」


 私は、キョウのパーカーのフードにハチを向けた。


「ここ、入れそうかな? 試しに入ってみて? キョウーストップ! 動かないでっ」


「何してんだ……あ? あったけえ。ってハチがいるのか?」


「みゃあ!」


 キョウのパーカーのフードの中からハチは顔を出した後、くるりんと丸まってリラックスし始めた。


「良い場所を見つけたでござるな」


「動くとくすぐってぇ……」


「みゃっみゃみゃ!」


 ハチはキョウで遊ぶようにくるくるしたり、ぺちぺちとおててで、たたいてみたり、フードの中でごろんごろんとして楽しんでた。


 かわい〜〜〜〜〜!!!!!


 私は、キョウの背後にくっついて、フードを軽く広げてずっと動画を撮ってた。服部さんに「拙者もその動画が欲しいでござる」とねだられたから、後で送って一緒に見た。


「かわいいでござる」

「かわいいね〜! また入ってもらおう」

「そうでござるな!」

「おいおい、俺のパーカーで遊ぶなよ」


 ハチも気に入ったみたいで、またキョウのパーカーのフードめがけてぴょんっと飛んでしゅっぽり入っていった。

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