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未来で捨てられた猫は、過去で活躍する  作者: 夢乃めちあ


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11/15

11話 えがおが、いいみゃあ

*** 登場人物 ***


・ハチ

未来から来た小さな猫。賢いが、小さな体が行動に追いつかない。わりとドジ。


・七彩七海(ななせななみ)→ナナ

護衛をしているピンク髪のギャル。

弓月の内縁の妻。籍は入れていない。


・ベル→ベル(本名は明かせない)

唯一の現代人。

"書き手"というレア能力から命を狙われやすい。

長い金髪。恭介の婚約者。


・来栖恭介(くるすきょうすけ)→キョウ

医者。茶髪。ベルの婚約者。

たまにぽんこつになるが冴えている。


・百目鬼弓月(どうめきゆづき)→ユヅ

リーダー兼護衛。少し長めの黒髪を結んでいる。

七海の内縁の旦那。妖艶で顔が良い。


・服部半蔵(はっとりはんぞう)→ハンゾー

過去人。護衛をしているが、畑の世話とかもするらしい。

顔が良すぎるため、両目をみたら誰もがめろめろになる。

灰色の髪で、前髪を片方伸ばして片目を隠している。


・若王子王子(わかおうじおうじ)→おうじ

七海の兄でこの中の年長者。猫耳のニット帽を常にかぶっている。

努力型の天才で、パソコンやスマホでハッキングなどできる。


・黒羽(くろば)フリル→ふりる

上品なお姉様で美人。ゴスロリの服を着ている。

紫の髪をくるくる巻いている。

元々、沖田と同じ組織に属してベル達と敵対していたらしい。


・沖田総司(おきたそうじ)→そーちゃん

過去人。とある事情で沖田蒼(おきたそう)と名乗っている。メンバーの中で一番若い。背が高く麗しい。

水色の髪をサイドテールに結んでいる。



 キョウが足を止めて、ツッコミをびしっと入れた。


「おい、簡単に言うんじゃねえ! 怪我するような無茶は勘弁だぜ!」


 怪我をしたらキョウが治療をしないといけないし、戦うのなら実力のあるキョウも参戦しないといけないから、戦闘になった時はとっても大変なの。怒るのは当たり前なんだよう。


 ユヅさんは、ため息をついて呆れた顔で問う。


「で、王子くんその適当なプラン――一応聞くよ。どうするんだ?」


 王子くんが、ふふん、とわざとらしく前髪を直した。


「ナナちゃんとユヅくんが研究所、ハンゾーくんとそーちゃんが倫理委員会潰してしてくれたらおっけー☆」


 うわ、笑顔でウィンク! メロい! 今はナナとモデルさんもしてるもんね! 顔の良い兄妹だなぁ。


 ……でもね、ウィンクしてもダメだよ、王子くん!


「駄目だな……。七海と僕はともかく、服部さんと沖田さんにそんな危ないことはさせられない。過去人だし、二人はいつか帰るかもしれないだろう。命の危険があるなら絶対に駄目だ」


「ねえ、みんな、オレ、ちゃんと考えてるってば〜! ちゃんとハッキングして、ピンポイントで拘束できるように指示するからさっ♪」


 二人が話してる間、上品な笑顔でフリルさんがコーヒーを各自の愛用のマグカップやらティーカップやらに淹れて持って来てくれた。みんな柄が違うの。服部さんは湯呑みなんだよ!


「ハチ様、牛乳はいかがですの? どうぞですのよ」


 わ、ハチには牛乳だあっ! 飲むかな……どきどき。ぺろぺろって飲むのかな? 見てみたいなっ!


 ナナが庭で匿ってた時に使ってたらしい、猫用のお水を飲む容器があったからそれを使ったみたい。ピンクの容器でかわいいの。


 ハチは「みゃ」と鳴いて、一瞬立っていただきますって両手を合わせたあと、ころんって後ろに倒れそうになった。多分そうなる、って予感してた私が背中を支える。


「み、みぃ……」って鳴いて、今度は私に、ごめんなさいっておててを合わせて、またころんって倒れちゃった。また支えてるよ! 背中がハチのぬくぬくと、ふわふわが当たってほんわかしちゃう。ふふっ!


「あはは、ハチえらい! 無理しなくていいよ?」


「ハチ様は礼儀正しいですのね。とてもえらいですの!」にこーってフリルさんが笑う。フリルさんも礼儀正しいよーっ!


 ハチは恥ずかしかったみたいで、顔を隠すように丸まっちゃって、「みゃうう……」って鳴いちゃった。


 き、気にしなくていいのに⁈


 私が励まそうとして、よしよししたり、おみみつんつんしたり、「にゃあにゃあ」っ猫の鳴き真似をしたりしていると――フリルさんが王子くんのコースターの上でだけ、がしゃん、とティーカップを音を立てて置いた。美人の怒りは迫力がある……!


 ハチがビクッとして、ひゅんっとひっくり返っちゃった。口開いてる〜〜〜! 目を見開いてる〜〜〜! ってびっくりしたのにごめんね。かわいいよう。


 フリルさんが「ご、ごめんなさいですのよっ」ってハチの手を申し訳なさそうに撫でた。


 ハチは「気にしないで」の代わりに「み……」ってその指を舐めてた。フリルさんの顔がとろけてる!

 二人ともっ! か、かわいっかわいいっ!


 フリルさんはパッと顔を切り替えてキリっとして王子くんに向き合った。ハチには指を舐められっぱなしで、なんだか不思議な絵になってる。


「いいえ、王子様、あなたはちゃんと考えてませんのよ。まず整理しますと――」


 ハチは真剣に話し始めたフリルさんの指を離して、フリルさんをちらっと見てから、ちょっとだけ牛乳を舐めて、王子くんからのお菓子を食べて、って交互にしてた。


 む、無理して食べたり飲んだりしてない? さっきの、がしゃん! ってやつ、怖かったのかな?


「ねえねえ、ハチ、好きな時に食べて、好きな時に飲んでいいんだからね。多かったら残しても大丈夫なんだよ? あっ、そうだ。三人が話し合っているから、ハチと私は、このおうちのことをお話しない?」


「みゃ……?」


「だって、これからハチも住むんだもん」


「みゃあ……」


 ハチは手をぴっ! って挙げた。ピンクの肉球かわいい〜! おてて握ってもいいかな……いや、我慢しよう! でも頭を撫でさせてえ! いいこ、いいこ、よしよし!


 あ、撫でてる間大人しくしてくれた。「みぃ、みぃ」って鳴いて頭を手に押し付けてる。気を遣わせてごめんねええ〜〜〜! ありがとう!


 まだお耳は垂れてるけど、くしゅくしゅまではしてないかな。ちょっとだけど元気になってきたかな?


 桜さんと通話してたスマホは、時が止まったからユヅさんの元に回収されてる。私はハチ用のクッションごとハチを私に近づけて、近くにお話用にスマホとタッチペンを置いた。


 これでお互いに話せるぞーっ! 私の手は、キョウの言いつけ通りハチの側に置いてる。


「疲れたら寝ていいからね。いつでも話せるし」

「みっ」


 ハチは「みゃ」って手をぽん、と触ってくれた。あああありがとう!

 

 私はハチに話した。多分、気が逸れると思うし!


 私たちの家・通称"シェルター"という場所は地下二階まであって、地下一階はキョウが自由に使えるオペ室とか、そーゆー医療のお部屋になってるの。


 地下二階は本当に危険な時に、避難をする場所で、みんなが眠れるんだよ。食料とか消耗品、災害の時の大切なものを保管してるよ。まだ使ったことはないけど、パーティする時にも避難訓練を兼ねて使うの。


 普通のお部屋も、防弾ガラスになってるんだ。広いお庭も、敵が見やすいように設計してるとかなんとか。私たちのお仕事は命を狙われやすいから、その分安全な場所に住んでるんだよ。


「みゃむみゃむ」


 ハチがふむふむ頷いてくれてる。真剣に聞いてくれた!


 スマホで、ぴぴぴぴ! って打ち込む。なあに? こうして猫ちゃんと話せるの、嬉しいな。でも、なんか、ハチって……猫って感じしないや。


【とても、すごい、おうち、みゃあ!】


「でしょ? すごいよねぇ」


 話をしているうちに、六人の元怪しかった人たちは、服部さんと沖田さんによって既に縄を解かれて解放され、床に寝かされてた。ナナはおてての怪我で休憩中だよ。


 今はキョウと沖田さん、服部さんが急いでストレッチャーで地下に運んでいるところ。病院のドラマでよく見る、人を寝たまま運べるやつね。お手伝いしてあげたい……!


 ユヅさんと王子くんはプランを練らなきゃいけない。フリルさんはみんなが言い合ったり議論が加速した時の緩衝材役だ。


 ストレッチャー組は、三人で頑張っていたんだけど――運び終えたみたい。手術は医療の領域だ。キョウが頑張らないといけない。元・医療のお仕事をしていた私も!


「ベルー! 搬送終わったからこっち頼む。服部さん、沖田さん、休んでくれ。これからオペで毒入り盗聴器取り除くぞー! あとリビング組の誰か、俺に無線繋いでくれ。そっちの事情を聞いておきたいからな。ハチは――様子を見ていたいが、フリルさんと沖田さんに頼んだ。とにかくハチの好きなようにさせてやってほしい」


 私はすぐにキョウのところに駆け寄ろうとして、一度止まった。 

 ハチに「ちょっと行ってくるね」と言ったら、「みゅ…」と鳴いてとてとて、と追いかけてきてくれた。あああ、どうしよう。ハチから離れられないよーっ! 私はいつのまにか抱っこしてた。ハチのかわいい引力つよ〜〜!


 そうだ! アレがあるじゃん!


 悩んだ私はキョウの服を着たうさぎのぬいぐるみをポケットから出した。


「これ、キョウの分身のうさぎさんなの。『キョウうさ』だよ。ほら、白衣を着てるでしょ?」


「みゃ!」


 あ、ちょっと元気な返事したっ!


「あのね、『ベルうさ』もあるの。キョウっ!」


 ハチは大切そうに両手で受け取って、仰向けになって抱きしめてくれた。キョウうさ、羨ましい〜〜〜!


「ベルナイス! 俺のも渡しておく」


 小走りしてキョウは『ベルうさ』を置いた。


 ハチは、またくんくんしてから、「みゃあ」といつもの感じで鳴いてくれた。


 フリルさんが「これで二人と一緒ですわね」と、くすくす笑いながら言って、ハチは、二つのうさぎを抱っこしようとして、落としちゃった。

 フリルさんがすかさず拾って、ハチのお腹にぽん、と置いてくれた。ハチは、抱っこしきれないみたいで、また落としちゃって「みゃみゃみゃみゃっ」って焦ってた。ふふっ。


「ハチ様、側に置いて横に座るのはいかがです?」

「みゃうっ!」


 沖田さんが「流石、フリル姉さんです」と言いながら、うさたちをクッションの上に並べてくれた。それを見守って私は席を外した――振り返ると、ハチが二つのうさぎを守るみたいに、寄り添って丸くなって、じぃっと見てた。かわいいいいっ!


 その様子を見て安心した私とキョウは、ハチに手を振って、地下のオペ室に向かった。ナナが無線をかけてくれたみたいで、会話ができる。みんなの様子は、設置されたタブレットでしっかり見れる。便利だなーっ!


「もしもしっス! 簡単じゃないっスか。ぶっとばすだけっスもん。てゆーかキョウ兄! なんでハチっちをウチに任せてくれないんスか!」


 キョウは黙ったまま、地下のドアを開けて、リビングへ走る。ハチに見えないように、手のひらを指差して、また戻ってきた。ナナの包帯を巻いた手を見たら、ハチが自責の念に駆られてしまうかもしれないからだ。


 ナナは意味がわかったみたいで、「ちっス」となんでもなかったように答えてしょんぼりした。


 あっナナがしょんぼりしたから、ハチがてちてち向かってる! か、かわいい! けどストップ!


 沖田さんが止めてくれた。ふう。


「ハチ、このうさぎはベル姉さんとキョウ兄さんと同じなんだ。今二人は仕事をしてるだろう? 二人にとって大事なものだから守ってくれないか?」


 ハチは「みゃむん……」と鳴きつつも、うさたちのそばに座り直した。あ、眠そうかも。ハチ、戦闘モードになったし、寝れたらいいなあ。


 そんな中、フリルさんが、あの……とおずおずとして手を挙げた。


「ワタクシ――全てを正直にお話しすれば解決すると思いますの。ハチ様を過去に連れてきて条例を破ったのは、七彩様を心配してくっついてきて下さった優しさですもの。研究所と倫理委員会の癒着の件も、そのままお話しするのはいかがでしょう? 世間に問うのですのよ」


 ユヅさんが難しそうな顔をして下を向いてたけど、顔を上げた。


「成程。悪くない案だがどこで公表するんだ?」


「七彩様、王子様、そしてシェルター全体の三つの配信チャンネルを使って生配信するですのよ!」


 フリルさんのプランはこうだ!


 ユヅさんがシェルターのチャンネルで真実を話す。この時、できるだけハチも一緒にうつってもらうんだって。


 王子くんは動画がハッキングかどこかの圧力で消された時用に待機して、配信が止まる度に他チャンネルで配信継続! テレビ局やラジオ局で話せないか交渉も並行して、公共の電波を使えるようになったらそっちに移動!


 ナナは自分のチャンネルで『脅されたので十億持ってきました』と自撮りしながら未来で配信。服部さんが念の為護衛につく。額が額だし……。さっきの電話は銀行に電話してお金を用意してたみたい。なんと、ナナの自分の口座から一旦下ろしたんだとか。忙しいからキャリーケースとかも買ってもらうように頼んでたんだって。びっくりして何も言えないよ!


 確かにこれならSNSで倫理委員会と研究所は叩かれるし、警察とも癒着がないとは言い切れない。

 ナナが破っちゃった未来条例もしょうがないって情状酌量の余地がありそうだし、良いプランだと思う。


 ……戦わなくていいんだ!


 みんなのほっとした空気を感じたのか、ハチは、「みゃあっ」と鳴いた。ぴゅっと走って、ナナのところに到着する前に、沖田さんが焦って通せんぼしてから、両手に乗せた。あのハチが「みっ! みゃあっ!」って必死に降りようとしている。


「どうした、ハチ。自分たちに教えてくれないか?」とスマホとタッチペンを差し出した。ナナが沖田さんの後ろでそわそわ心配してる。


 あっ沖田さんにナナが登った!

 沖田さん、やれやれってして、ナナをおんぶしてるんじゃん!


【なな、ごめんなさいみゃ。きちんと、あやまってなかった、み】


 ナナは沖田さんのことをぎゅーっとして、「はにゃ〜ハチっち!」と顔をふにゃふにゃ〜と溶かしてた。ど、どうなってるの⁈ 沖田さんは、気にせずに「ナナ姉さん、ほらっ」と言って降ろしてあげてた。


「ハチっちはおばかさんっスね。ウチ、なんのことかわかんないっス!」


 ナナは、ハチのところにぴょんっと飛ぶように移動すると――満面の笑みで愛おしそうにハチを両手で抱き上げた。



***


 なな、うれしそうみゃ。


 きずつけたのに、どうして、みぃ?


 みゃあは、おばかさんみゃ。ななも、わからないっていっておばかさんになってるみゃう。


 ななは、ふしぎにんげん、み。


 みゃみゃっ! なな、みゃあに、ちゅーしてきたみゃあ!


 すぐする、みゃあ。おにわにいたときも、よくされたみゃ……。


 じゃあ、みゃあは、すりすりする、みゃ。


 ななのほっぺ、おもちみたいに、もちもち、みゃあっ!


 おにわにいたとき、すりすりいっぱいされたの、おもいだす、みゃあ!


「ハチっち、ハチっち〜〜〜! ウチの大好きなハチっち!」


 なな、ずっとにこにこしてる、みゃ。よかった、みゃ……。


 みゃあ、こんどから、きをつけて、ななのえがお、まもる、み。



***



 オペ室でキョウは珍しく悩んでいた。


 体内に仕込まれた毒入り盗聴器を、どうやって取り除くか、である。


 微量でも注入された分の毒は吸引済みで、体の"時間"を止めてるから悪化するは心配ないんだけど――私が能力を解いた瞬間、この人たちは死んでしまう。


「ひでぇ埋め込み方してやがる」


「うん……オペですら取り除きにくくしてるね」


「くそ、しかも目視で確認できないが――機械の蓋が下にあって、神経を囲うようにしてるんだよ。力づくで取ったら――例えば腕とかが動かなくなっちまう構造になってる」


 しかも、六人全員埋め込まれてる位置は違うところだったし、盗聴器の形状も異なってた。一箇所の術式・機械の外し方を解決したとしても、また考えなければいけない。


 手術はできる。でも機械と合わせてくるなんて……。


 私たちは、人の命を奪わない。人の体と心も傷つけないこと、守ることに徹してる。


 この手術――どうしたらいいんだろう。

ハチがずっと可愛くて困っています。ハチは自分がかわいいとわかっています。

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