10話 まもる、みゃあ!
*** 登場人物 ***
・ハチ
未来から来た小さな猫。賢いが、小さな体が行動に追いつかない。わりとドジ。
・七彩七海→ナナ
護衛をしているピンク髪のギャル。
弓月の内縁の妻。籍は入れていない。
・ベル→ベル(本名は明かせない)
唯一の現代人。
"書き手"というレア能力から命を狙われやすい。
長い金髪。恭介の婚約者。
・来栖恭介→キョウ
医者。茶髪。ベルの婚約者。
たまにぽんこつになるが冴えている。
・百目鬼弓月→ユヅ
リーダー兼護衛。少し長めの黒髪を結んでいる。
七海の内縁の旦那。妖艶で顔が良い。
・服部半蔵→ハンゾー
過去人。護衛をしているが、畑の世話とかもするらしい。
顔が良すぎるため、両目をみたら誰もがめろめろになる。
灰色の髪で、前髪を片方伸ばして片目を隠している。
・若王子王子→おうじ
七海の兄でこの中の年長者。猫耳のニット帽を常にかぶっている。
努力型の天才で、パソコンやスマホでハッキングなどできる。
・黒羽フリル→ふりる
上品なお姉様で美人。ゴスロリの服を着ている。
紫の髪をくるくる巻いている。
元々、沖田と同じ組織に属してベル達と敵対していたらしい。
・沖田総司→そーちゃん
過去人。とある事情で沖田蒼と名乗っている。メンバーの中で一番若い。背が高く麗しい。
水色の髪をサイドテールに結んでいる。
なんか、なんか物騒な人たちだー!
私とフリルさん、王子くんだけ「近づけないで!」「ナナちゃあん持ってこないでよ!」「拘束してても嫌ですのよっ」と拒否した。
すると、後ろから「み"ぃ"〜〜ッ」と唸り声が聞こえた。
――ハチ?
ハチは、消えたと思ったら、ものすごい勢いで走っていった。途中、金属の音がしたと思ったら、服部さんのフォークが無くなってた。
姿が見えない……ハチ? どこにいるの⁈
***
べるたち、こわがってる、みゃ!
みゃあたちのこと、だれもたすけてくれなかった、みゃう……。
【倫理委員会】っていう、そしきに、ママがでんわしても、たすけてくれなかった、みゃ。
けんきゅういんのひと、たくさん、みゃあたちを、じっけんにつかった、みぃ……。
だから、みゃあは、みゃあは――みんなをまもるみゃあ!
たすける、みゃあ!
せんとうもーど、なる、みゃうっ!
みゃあは、はしった、みゃ。
ぶき、ほしい、みゃ。
みゃみゃ! ふぉーく、いいかんじ、みいっ! くわえるみゃっ!
いく、みゃああああっ!!!
***
すぐにナナの叫び声が聞こえて、ハッとしてそっちを見た。
「ハチっち! ハチっち!」
ナナがハチを受け止めていた。手にはフォークが刺さっている。
――ハチは目をぎろりと悪そうな奴らに向けていて、爪もすごく長く鋭くなっていて、毛が逆立ってて、「み"ゅ"う"う"!」とまた唸ってる。
「落ち着くっスよ! ハチっち!」
ナナが血がついていない方の手で、ハチを肩に乗せて、必死に撫でてた。――爪がナナのスーツに食い込んでる。特殊な繊維で出来てるらしいから刃物ではなかなか破れないようになってるらしいけど、多分普通の服だったら……。
『八号! どうしたの! 戦闘モードになるなんて……何があったんですか⁈』
「桜さん、問題ありません。俺……確認したいんですけどハチは――戦闘の際に大きく変化するんですね?」
桜さんは目を伏せがちにして、しっぽをだらり、と垂らして頷いた。
ハチはまだ興奮してるみたい。「み"っみ"っ!」と鳴きながらしっぽをぴーん! と伸ばしてた。
こんな時にごめんなさいなんだけど、ハチのこの姿もかわいい…。じゃないよっ! ナナとハチを助けてあげないとっ
そう思ったら、ナナは平気そうにしてて、今もハチを落ち着かせようとしてた。いつもとは違う優しい声だ。
「ハチっち? 落ち着くっス。こいつらはハンゾーっちとおきたっちが制したっス。もう安全っスよ。いいこっスから、しっぽも爪も戻すっスよ〜! いーこ、いーこ、っスよ。……キョウ兄! ハチっちを頼むっス。あ、例の件は電話で手配しといたっスから」
キョウは、ゆっくりフォークを抜いて手のひらに包帯を簡単に巻いた。すぐに血が滲む。結構深いかも……。
「悪い、ナナ。ハチ優先でいいよな?」
「当たり前っス! ウチから治療したら殴るっス!」
「おい、ハチを落ち着かせたらすぐにお前の傷を診るから座っとけ。耐えられなくなったら言えよ」
「ナナ姉さん、止められなくてすみません」
「拙者も目が追いつかなかったでござる」
二人はしゅん……と落ち込んでた。二人が追いつかないくらいハチが早かったんだ――!
「ウチが能力なしでギリ追えた速さっした。ハチっちはなかなかやるっスね!」
ナナは気にせずにこにこしてた。それどころか、ハチを褒めてる。
ハチはキョウに抱かれて、胸に耳が当たるように心音を聞かせてた。まだ耳もピンとしてるからよく聞こえるかもっ!
「ハチ、お前は勇敢だな。でも、今は落ち着けよ?
ナナは大丈夫だ。あいつ馬鹿みたいに強いから気にすんな」
桜さんが『ハチ! ああ、ごめんなさい。お怪我をさせてしまって……』と顔を覆ってた。
「ウチは大丈夫っス。でもハチっちが心配っスね。さくらっち、こーゆー時はどうしたら良いっスか?」
『……研究所では鎮静剤を打ってました』
私たちは、ひっ……と小さく声を上げて驚いた。
そんな扱いひどいよ、許せない!
「うわ、そうなんですか……。注射はかわいそうなんで、落ち着くまでこのまま俺が抱いてます。ハチ、キョウだぞー。なでなでいっぱいしてやるから覚悟しろよ?」
キョウの大きな手が、小さいハチを包む。フーッフーッとまだ息が荒い。目もギラついてて、視点が定まらない。しかも、どくどくって体が波うってるのもよく見たらわかる……。
一分くらいかな? 長く感じた。
ハチのことをみんなが黙って見守る。
すると、ハチが焦った様子で鳴いた。
「み……? みゃ、みゃう、み、み、みぃっ?」
ハチは震えてた。小さいおててをぽん、ぽん、とゆっくりキョウの胸の辺りにあてて登った。
キョウは、ハチの好きなようにさせてあげてた。
ハチは――怯えながらキョウの顔をじっと確認するように見つめてる。
「よっ。覚えてるか? ハチ、お前、皆の為に戦ってくれたんだよ。えらいぞ! さんきゅ」
キョウが恐る恐る登ってくるハチを抱き上げて頬に寄せると、「みゅ……み、みゃ、みゅん……みぃ……」と鳴きながら、ハチもそっと頬を寄せてる。
ハチ、混乱しちゃってるんだ――。この鳴き声、聞いたことないもん。
「……思い出したのか? そう落ち込むなよ、かっこよかったぞ」
「みゃう……?」
「ああ。本当だぞ」
スマホなしでも気持ちが伝わってくる。
「ハチ、おかえり。すごい足速いねぇ」
「ハチ様っあなた、とてもご立派でしたの」
私はフリルさんと顔を合わせてにこっとした。
「ほらほら、皆も褒めてるだろ? なあ、その頑張った体を診ていいか? お前が怪我してたら大変だ」
耳をくしゅくしゅさせて、しっぽをだらりとさせたハチは、「みぃ……」と鳴いて手を挙げた。
「ははっ気にしてんのか? お前何も悪いことしてないだろ? おかしなやつだな」
キョウが笑い飛ばす。私とフリルさんは駆け寄って、手を伸ばして、ハチのくしゅくしゅの耳を解くように触れた。小さくてふにゅふにゅで、どんなぬいぐるみの生地よりも柔らかいお耳。二人でそっとほぐすようにしていたら、ピクっピクっと動いて、私とフリルさんに、おどおどしながら目を合わせてくれた。
***
みゃあは、せんとうくんれんも、いっぱい、がんばった、みゃ。でも、がんばったのに、【化け猫】ってよばれてた、みぃ。
いつも、いたいおちゅうしゃ、おさえつけられて、うたれてた、みゃ。
キョウは、こわがらずに、みゃあをだっこしてくれた、みゃ。なでなで、いっぱいしてくれた、みゃ。
――あたたかい、みゃあ。
みゃあが、ぎろぎろのおめめしてても、こわくなかった、みゃ?
ふしぎ、みゃ。
みんな、ほめてくれる、おかしい、みゃ。
なな……ちがでてる、みぃ。
みゃあの、せいで、ごめんなさい、みゃ。
みゃあは、たいへんなこと、してしまったみゃう……。
みゃあを、ゆるさないでほしい、みゃ。
けんきゅうじょのひと、と、おなじように、ぶって、いい、みゃ。
どうして、おこらない、みゃ?
おこって、ほしい、みゃ。
ごめんなさいみゃ……。
みゃあは、でていくべき、みぃ。
おみみ、ほぐさなくていい、みゃ。
ベル、ふりる……キョウ……。
みゃあになんで、ばつ、あたえない、みゃ?
***
ハチ……気にしないで……切ないよ。
キョウはこめかみを三回トントントン――と叩いた。目の色が青に変わる。「ハチ。足動かしてみてくれないか?」と言うと、ハチは「み」と鳴いてから、ころりん、と卵が転がるように仰向けになって、ちいちゃい足をゆっくりパタパタしてくれた。ピンクの肉球がよく見える。さ、さわりたいっ! こんなかわいい診察ある⁈
ハチはスマホに手を伸ばすと、キョウは見逃さずにタッチペンを渡す。ハチは、スマホに素早く打ち込んだ。
【ごめんなさい、み……まもらないと、おもった
、みゃ……】
「おう。お前すげーよ。俺が見えないくらい早かったな! 足の筋肉が疲れてるからゆっくりしてくれ。ハチは考えて行動できるだろ? だから包帯は巻かないで、そのままにしとく。安静にしてくれよな。ベル、一旦ハチに付き添っててくれ。ハチの横に手を置くだけで良い。フリルさんも頼む。ハチは桜さんの前に座ってて良いぞー」
私は『桜さーん! ベルです!」と言いながら、ハチのおでこをちょんちょん触った。フリルさんは隠れてる。右山さんがまだ苦手、なんだよね……。右山さんは、画面にはいないけど、多分聞いてるだろうし。姉妹の溝は深いなぁ。
私は、キョウの言う通りハチの横に手を置いてたんだけど、ハチが震えてる手を重ねてきたから、「ハチ、えらかったね」と言って手を重ねた――小刻みな震えが止まらない。これは、ナナを傷つけてしまったことと勝手な行動をしてしまったって、責めてるんだ。
心の中に流れてくる。水槽の中に深い海があった。揺れて波が止まらない。
ハチ、小さな体で、そんな大きな波を受け止めようとしないで……。
「ハチ。ずっと一緒だからね。責めちゃだめだよ」
手をきゅっと握ると、ハチももう片方の手をゆっくり動かして握ってくれた。小さいおてて――。
その様子を見たキョウは、何事もなかったように「ハチー、リラックスしろよーそれが今のお前の任務だからな!」と声をかけて、ナナの手を治療し始めた。
キョウってば、本当はハチのことをすっごく心配してるのに、明るく振る舞ってる。後でたくさん褒めてあげよっと!
『八号……あなた、ピンクのお嬢さんを傷つけたのよ! 謝りなさい!』
桜さんはハチのお母さんだ。だから、自分の娘が人を傷つけたら叱るのは当然だけど――今は、今はダメ!
キョウに手の止血をしてもらってるナナが、すぐにハチを庇う。
「さくらっち! ハチっちは悪くないっス! 助けてくれようとしたんスもん! むしろ、褒めてあげて欲しいっス!」
だって、ハチが飛び出していったのは、私と王子くんとフリルさんが怯えたからだもん!
「ハチは怯えた私たちを守ろうとしてくれたんです。ハチ、ありがとうね」
「みゃう、みゃ……みぃ、みぃぃ……」
まだ耳がくしゅくしゅで、震えてるハチは、スマホに【こめんなさ、みゃ。なな、だいじょぶみぃ?】ってスマホに打ち込んでくれた。誤字が多いのは動揺してるからだね……。
「ハチっち、ウチは心強いっス! でも、ウチも、ハンゾーっちも、おきたっちも、ユヅパイセンも、意外とキョウ兄も訓練して強いんスよ? 戦闘はまずウチらに任せてほしいっス。これからハチっちに頼る時はよろしくっス!」
ユヅさんはハチのところに歩いていって、頭を大きな手で包んだ。手が大きすぎて、ハチを包むようになってる!
これ、ナナを褒める時と一緒のやつだ――!
「ああ。あの速さはこのメンバーでは七海しか出せない。ハチの速さは僕達の新しい武器だよ。君の実力を見れて良かった」
『皆さん……ありがとうございます……』
桜さんは声にならないみたいで、俯いてしまった。
捕らえた六人のうち一人がもごもご話そうとしてる。タオルでガッチリ口を封じているの。縄はかわいそうだからなんだって。
「ねえねえ! なんかコイツ話したそうだよん!」
「黙れっス」
「いや、ナナちゃん! 情報引きずり出さないと駄目だから!」
「ナナ姉さん、余計なことを話すならば半蔵兄さんと自分がすぐさま首を跳ねます。さあ、どうぞ」
沖田さんかっこいいー! じゃなくて物騒!
一人だけ口を開放すると、「そのスマホに写ってるのはゼロ号か⁈」と言った。
「何スか、ぶっとばすっスよ?」
ちょ、ナナ! 何も言えないじゃん!
「ゼロ号! 研究所のデータを暗記していないか? それさえあれば、倫理委員会との癒着を壊して研究所を潰すことができる!」
桜さんは答えていいものか迷いつつ、私たちにしか見えないように小さく頷いた。データ、暗記してるんですね!
男は必死に喋り続けようとしたところで、ユヅさんが首元を乱雑に引っ張って詰め寄る。うわああめっちゃ怖い。
「倫理委員会との癒着ってなんだ? 詳しく聞こうじゃないか」
「け、研究所はっ……金で倫理委員会の幹部を買っているんだよ! だからゼロ号と八号が酷い扱いを受けて研究員が通報しても誰も助けに来なかった。巨額の金を要求したのも倫理委員会の幹部が要求してきたからだ! 俺達のような傭兵を雇ったのもそうだ。邪魔者を排除するために奴らはとにかく金を使ってる!」
「詳しいな。おい、この中の頭は誰だ」
「今話してる俺だ! 首の裏に毒入りの盗聴器が埋め込まれてる。未来とこっちで時間差があるからすぐに音声は届かねえが――早く話しちまわないと毒が回るんだよ! おい、医者っ確認してくれ」
キョウが走っていって確認すると、目を見開いた。
「嘘じゃないな……いいのか? お前らが研究所にとって都合の悪いことを言ったら殺されてしまうだろ……」
「だから急いで話す! その後は死んでも良い!」
「許可する。話せ。恭介、王子くん、盗聴器を取り除けないか、手段を考えててくれ」
三人が神妙に頷くと、その男は話し始めた。
「酷い実験が行われてるってある筋から聞いて猫達を助けたいと思ったんだ。俺達は、動物の保護団体で働いている。だから、研究所に雇ってもらって潜入し――どうにかできないか考えたんだ。だが、毒入りの盗聴器を埋め込まれちまった。でも、いざとなったら死ぬのが怖くなって……情けねえが戦わざるを得なかったんだよ……。だが! 今、改めて猫達を実際に見たら、俺達は自分のことなんかより猫達の方を優先したくなったんだ。なあ! お前ら! あの小さい猫の姿見たらよお、助けたくなるだろうが!」
五人はうんうん頷いてる。一人なんて泣いてる……。
「さっきはすまなかった。イケメンのにーちゃんと綺麗な嬢ちゃん。あと小さい嬢ちゃん」
キョウは「外しても毒が流れちまう……」と腕を組んで悩んでた。
対して王子くんは「まだ知ってること全部話して! その後はベルちゃんに時を止めてもらって、君たちの治療を考える!」って言ってる。
「わかった。話す! お前達の敵は研究所だけじゃない。そいつらを裁く倫理委員会も――」
「ベル! 時間を!」
キョウが血相を変えて私を呼んだ。
万年筆を手にする。ステッキになって光が私を包み込んだ。
「この人たちの時間を止めてっ! お願い!」
話さなくなったってことは、無事時間をに止められたみたい。ふぅ。
「毒が流れたのを見たんだ。毒を全部外に出さないとこいつらは全員死ぬ……。ユヅ先輩! 俺はこっちやって良いですか?」
「勿論だ。命を優先するのが僕達のポリシーだ。頼んだぞ」
「わっ私も手伝う!」
私がキョウにメッセを送った。
【ハチが戻って良かったね。キョウ、頑張ったね】
【まあな】ってカッコつけた返事がきたけど、顔が真っ赤になった。ふふ、照れてるー!
「力仕事だから服部さんと沖田さんに手伝いを頼みたい。縄を解いたら、床にぽこっと飛び出たところが当たらないように寝かせてくれ。そこが毒が仕込まれた盗聴器の部分だからな。壊れたらしちまったら困る。俺はストレッチャー持ってくるから、ベルはまだハチのとこ、いてな」
やば、ウィンクされた。きゃっ。不意打ち! ハチは、そんな私を首を傾げて見つめてた。「えへへ、嬉しいことがあったの」って言って、ピアノを弾くように指を動かすと、「み、み」と追って、ぽふっと手を置いてくれた。肉球ぷにぷにしてる〜〜! にぎにぎしちゃだめかな……。
王子くんは腕を組んで、そんなに困った様子じゃない素振りで桜さんに訊いた。
「やっぱり倫理委員会も絡んでたかあ。サクちゃん知ってた?」
まだしょんぼりしてるハチに、王子くんは、猫用のお菓子を持ってきて渡した。
「ハチちゃん食べるー? ミルク味☆」って平静を装って渡してる、けど心配してるのバレバレだよ⁈
ハチが、ゆっくり手を挙げて、「みゃ……」って鳴いて、また私を見た。「ねえ、美味しそうだよ? 味見で舐めてみたら?」って勧めると、ペロペロ舐めてから、一瞬固まって、ちびちび齧ってた。美味しかったのかも! ゆっくり食べてるけど、良かったっ……。
『それは――私も知らない情報でした。研究所が上手く隠しているのだと思っていて助けに来ないのかと思っていたのです』
王子くんは「ベルちゃん」とだけ呼んだ。
ふざけてない、真剣な王子くんだ!
派手な指輪だらけの手のひらを見せると、指を折っていく。時を止めるタイミングのカウントダウンだ! 五……四……
『そっかそっか☆ オッケー! わかったよん♪ サクちゃん、右山ちゃん、悪いけど時間を止めさせてもらうよん!』
ゼロ!
「時間よ止まって! 除外対象は――私、キョウ、ユヅさん、ナナ、服部さん、王子くん、フリルさん、沖田さん、ハチ!」
「これでわかったねん♪ 倫理委員会の幹部と研究所を潰しちゃえばいいんだよ!」
「そっスか! 簡単じゃないっスか!」
えっ! 二人とも軽く言わないでよっ!
とんでもないことになっちゃったーっ!
私がびっくりしてると、ストレッチャーを運んでるキョウががくって転びそうになってた。
ハチは、ぴゅっと早く走ったので、足に負担がかかってちょっと腫れ気味でした。しかし、包帯……となると足を締め付けてしまいます。恭介はハチの手術跡を見て、今までたくさん苦しい思いをしてきただろう、と思ったのです。
なので、締め付けることや動きにくくなることは避けよう、ということでやめました。
ハチは賢くてしっかり守ってくれるだろうと信じて、指示だけ出してやめたのでした。もちろん、仲間が見守ってくれていることも信じています。
でも、これ以上足が腫れたりするようでしたら、体を守るために包帯を巻いたりすると思います。




