第3章 そして世界は
「ほら、私ちゃんと貴女の願いを叶えたでしょう?」
「すごい……! 戦争もなければ、民同士の争いもない。邪神も悪魔も人間にちょっかい出してない。こんな日が、来るなんて」
「ふふっ、ほらルネおいで。もっと褒めてくれてもいいのよ?」
少女ルネは神シエルが映した今の世界を見て、それはそれは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。病に苦しむ人もいなければ、喧嘩しなく子もいない。争い、いじめ合い、傷つくものも世界からは消え去った。
名を与えられた時、少女はこの世の終わりの気持ちでいたが、シエルはうっそりと笑った後その悲しみを食べ。何も分からないままきょとんと見上げる少女を抱きしめ、着せ替え人形のように遊んでいた。消したのは、己に対する警戒心のみ。それ以外はきちんと残してあげたのだ。
「そういえば、シエル様って女性って認識であってますか?」
「どっちに見えるかしら?」
「女性……」
「ふふっ、じゃあ女性でいいわ」
適当な返事をするシエルに、少女は目を開いて悔しそうに唇を噛み締める。時に男の姿になるシエルに顔を真っ赤に染めたり。はたまた、お色気よろしく胸を大きくするシエルに、タジタジになったり。そんなくだらないやり取りを、二人は毎日続けていた。
「でも、本当に世界が平和になって良かったです。シエル様、ありがとうございます」
少女は知らなかった、あの日願った時既に同期たちは皆寿命を迎えとっくの昔に楽園に行っていたことを。自分が、神気に当てられ続け既に魂は神の眷属と化していたことを。
そして――
「だって、ルネの願いだもの。神として、当然の事をしたまでよ?」
――人類が、人の形を模した人形になったことを。




