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83話

姉上との茶会が出来ずに落ち込むかと思っていたのですが、一応は王族としての自覚があるようです。

ディーは昨日の部屋で詳しく話を聞きたいとフレッド殿とその部下を引き連れて行きました。姉上も同席したいと仰って一緒に向かったのですが、何故小生まで連れて行かれなければならないのでしょう…。

小生は日向ぼっこでもして心地良いお昼寝を堪能したいのですが。



「フレッド、魔族は…いや、自称魔族は街を襲った理由などは口にしていなかったか?」


「はい、特には。突然現れて、いきなり破壊を始めた…といった具合でした。」


「他の街や村の目撃者も同じような事を言っていた。…略奪が狙い、なのか…?」


「ディー、…あ、っと。王子様。」


「今更だ、此処では好きに呼んでくれ。その方が私も嬉しい。」


「分かった。ディー、略奪が目的なら助かった場所の説明が付かないと思うんだ。防いだ、とは言えないんでしょ?」


「ん、む…、確かに。毎回後手に回っていて、防いだ…とは言い難い。」



小難しい話は姉上たちにお任せするとして小生は休んでいましょうか。枕代わりが欲しいものですが、この部屋にそんなものはありませんし…。

肩に乗っていたヒスイもつまらなそうにしているので撫でたのですが、丁度良い枕が居たじゃないですか。

この広い部屋ならば元の大きさに戻しても大して問題はないでしょう。ヒスイの母君程の起きさでしたら困りますが、母君に比べたらヒスイは小さいですから。


ヒスイの元の大きさを想像して魔力を与えてみたところ以前と同じ大きさにヒスイは戻りました。やれば出来るものですね。



『ヒスイ、お昼寝でもしていましょう。小生の枕になって下さい。』


『ん。…面倒臭そうな話、つまんない。』


『小生が参加する必要などなさそうですけど、姉上に言われたので此処には居ないといけません。付き合わせて申し訳ない。』


『ん。果物、いっぱいね。』


『はい、ディーに出させましょう。』



部屋の隅でヒスイが丸くなったのでその間に転がりました。ふかふかの布団のようでなかなかに寝心地が良いです。今度からヒスイと一緒に寝るようにしましょうか。癖になりそうな心地良さです。



「こらヒロト!寝ないのっ!」


「…小生には難しくて、話の内容が分かりません。姉上にお任せします。」


「そ、その魔物は大きくなるのかっ!?」


「これが元の大きさです。ディーは小難しい話でもしていて下さい。」



街に付いてから肩に乗せていたので、その大きさが通常だと思っていたようです。そんな事はどうでも良いので睡眠の邪魔をしないで頂きたい。


参加するようにと仰っていた姉上ですが、小生が考える事を放棄すると諦めてくれたようでした。頭を使うのは得意ではないのです。多少は使いますが、基本的には本能に従って生きていたいので。

ヒスイのふかふかした毛皮に包まれて心地良く寝ていたのですが、猫の時と同じく人の声は耳に入ってきます。猫の時よりもほんの僅か熟睡時間が増えたような気がしないでもないですが、基本的に眠りは浅いままですので。


点々と襲ってくる魔族について話し合っているようですが、その理由も分からず手掛かりも黒い炎に包まれて死んでしまった。城や王族を狙っているなら無闇に撃って出ない方が懸命だろうという事になりそうです。

しかし国民を守るのは王族の責務。その為にフレッド殿率いる騎士団やギド推薦の冒険者を派遣するらしいのですが、目的が不明瞭なのでどうにも対策が立て難いとのこと。



「黒い炎が捕まったりした時に発動するものなら良いけど、違うなら城の内部に入られていたって事になるよね。…ちょっと警備とか見直した方が良いかも?」


「そうだな。…だが、城に入り込めるような腕があるのに襲っては来ないとは…。」


「それだよね。んー、魔族って何で襲ってくるんだろ。そんなに人間とかが嫌いなのかな。」


「……あ。王子、ご報告がもう一件。」


「うん?何だ。」


「ゴルドに入って領主に捕まりました。その際なのですが…。」



今後の対策を取る為にも魔族の目的が知りたいと皆で唸っている中、フレッド殿が思い出したように声を上げました。

何でも、ゴルドの街の領主が怪しい水晶で魔力を集めていたのだそうです。魔物まで使役していて、厄介な人物だったとか。

その水晶をくれた者が他に居て、上手く魔力を集めたら幹部にして貰えると話していたそうです。幹部、という事はそこそこに大きな組織が動いているという事に他ならないと思います。


水晶に魔力を吸われて危機的状況に陥った際、図らずも助けてくれた男性が居たそうです。妹を探して回っているような口振りの男性は領主も魔物も容易く制してしまったとのこと。

出て行く際に迎えに来た男性は角もあり、瞳も赤く、聞いた事のない言語で話していたとか。今までの襲撃に携わっていた者全てが自称魔族なのか本物の魔族なのかは分かりませんが、フレッド殿が朝方に相対した者は自称魔族だったそうです。ですが、夜に領主の屋敷に現れたのは間違いなく魔族と確信しているとのこと。



「そ奴も自称魔族…という事はないのか?」


「断言は出来ません…が、あの魔力量は魔族なのではないかと。情けない話ですが、動けないどころか逃げ出したいとさえ感じる程でした。」


「フレッドが、か。…その魔族と朝方襲ってきた者とは関係がありそうか?」


「いえ、それは無いと思います。人間の男性は妹を探していただけのようですし、魔族は彼に協力していたような雰囲気でした。実際、彼も戦うつもりはないから動くなと言って帰りました。」


「ふむ…、…決定的な物は無いが、魔族と偽って我が国内を蹂躙(じゅうりん)している輩が居るという事か。今回の件は本物の魔族は関係ない、と思える。」


「ディーデリック様、それも布石で魔族も自称魔族も繋がっているという事も考えられるのではありませんか?」


「…無いとは言えんな。…しかしフレッドの出会った魔族は関係ないとも感じる。フレッド、その男は本当に人間だったのか?魔族と行動を共にする人間など聞いた事が無い。」


「見た目は、確かに人間でしたが…。」



リゼンたち以外にも魔族と人間が一緒に居る事もあるのですね。珍しい事だと言っていましたが、彼等のように仲良く過ごせる場合もあるのでしょう。

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