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63話


「一人なんて珍しいのね。何時もサーシャと一緒じゃない。」


「…お使いです。」


「偉いのね。お姉さんが付き合ってあげる。」


「結構です。」


「もう、そんな事言わないで。ご飯くらい奢ってあげるから、ね?」



面倒な人に絡まれました。

彼女が働いている機関で、以前姉上と共に学んだ事があるそうで顔見知りだと聞きました。


小生がゴートランドからクロッドに戻った折、王都で国王陛下に会いました。その時姉上の愚痴を聞いた国王陛下は本当に対策をして下さり、今では街や村などセレンクーリア国内の集落には必ず防御結界が張られています。

詳しくは分かりませんが、魔法陣を用いて永続的に発動させているのだそうです。定期的に魔術師が赴いて点検まで行っているのだとか。その時は王都の騎士を数名連れて行き、有事の際は戦闘になる事もあると聞きました。

定期的に王都の騎士と魔術師が訪れるとなればその周辺を任されている騎士たちも警備を強化せざるを得ず、以前よりも魔物の被害は減ったのだとか。問題は魔物の侵入は防げても人間を選別する事は出来ないので盗賊などの被害は起こる事。ただ此方も、騎士たちが居る事で抑止力になっているそうで、5年前から比べると国民の安全はかなり保障されています。


また、移動についても研究しているそうで、移動魔法の簡易的なものを鋭意作成中とのこと。移動の際に危険が多い事もあり、拠点から拠点への移動が魔法陣で行えれば危険も減るだろうという話らしいです。

色々と問題は山積みらしいのでこちらの導入はまだ未定らしいですが。



彼女の話に戻りますが、クロッドの防御結界を張りに来たのが彼女だったのです。その際に同窓である姉上と再会し、何故か小生が気に入られました。

姉上が時折王都に行っていたのはその学習機関に通っていたからなのだとその時理解しました。



「ヒロ君のお使いって何?お姉さんが手伝ってあげる。」


「だから、放っておいて下さい。姉上の友人だろうと小生には関係ありませんので。」


「そういう冷たいところもそそられるのよね。」


「……だから、腕を離して下さい。歩き難いので。」


「離したら逃げちゃいそうだから、イーヤ。」


「……はぁ。」



逃げようと思えば振り切る自信はありますが、小生の所為で姉上との仲が険悪になっても申し訳ない。友人は居ないより居た方が何かと助かるでしょうし。


彼女の事は一先ず無視してクラーラ殿の依頼であるコルの実を売っている店に向かいます。

熊のような風体の店主に恋人かと問われたので即座に否定しておきました。冗談じゃない。



「カーラ先生に遂に恋人が出来たのかと思ったのに違ったか。」


「ふふっ、私は何時でも歓迎なんだけどね。」


「店主、コルの実を売って頂きたい。クロッドの酒場の主人から頼まれたのです。」


「ちょっとヒロ君、無視が鮮やか過ぎて泣けてくるっ。」


「この麻袋一杯お願いしたいのですが。」


「ヒロ君ってばっ。」


「ははっ、カーラ先生が負けてるとこは珍しい。けどアンタ、未成年だろ。幾つだ?」



店主と彼女の話は聞こえない事にして依頼を済ませてさっさと帰ろうと思ったのですが、店主に困った顔をされました。16歳になったばかりだとお話するとガシガシと後頭部を掻いて売れないと言われました。


セレンクーリア国での成人は18歳。コルの実は酒の原材料である為に小生には売れないのだそうです。クラーラ殿に頼まれた旨をお話しましたが、委任状が無ければいけないのだそうです。クラーラ殿はそのような事言っていませんでしたが…。



「クラーラんところのハワードはどうしたんだ?毎回アイツが買いに来てたんだが。」


「体調を崩して動けないそうです。だから代わりに頼まれたのですが…。」


「あー…、あの姉さんうっかりしやがったな。」



ハワードは小生と同年代です。しかし酒場の主人であるクラーラ殿の息子であるという証明書をこの店に提出してあるので、店の仕入れという形で何時でも購入出来るのだとか。

小生のようにその日限りのお使いの場合は大人か店主であるクラーラ殿の委任状が無ければ購入出来ないとのこと。

一度出直すしかなさそうですね…。あまり移動魔法を使いたくはないのですが仕方がありません。



「…分かりました。出直します。」


「おう、悪いな。」


「売らずに取っておいて頂く事は可能ですか?」


「それは厳しいな。話を聞いた限りクラーラからの頼みってのは分かったけどよ、万が一戻って来なかった場合売れ残っちまう。そうはならねぇとは信じていてもやっぱり、な。」


「そう、ですか…。ではなるべく急いで……何ですか。」



店主と話していたところカーラに服を引かれました。無視をしていたのですがあまりにもしつこいので不服ではありますが一応聞いてみました。



「ヒロ君忘れてない?此処に、大人の女が居るんだよ?」


「は?…あぁ、姉上と同じくらいなのでしたか。」


「あぁ、それなら売ってやれるぜ。」


「私にオネガイ、してくれたら協力するよ?どう?」


「一体何の話ですか。小生は急いでいるんですが。」



意味が分からない言葉に眉間に皺が寄っていくのを感じました。しかし店主の言葉で更に眉が寄ってしまいます。

未成年である小生に売る事は出来ないそうですが、成人しているカーラに売るのは問題無いそうです。未成年に売れない商品が幾つかあるそうですが、成人した大人が購入して未成年に与えるのは問題ないとのこと。

未成年に売った事が知られると店は罰則があるそうですが、大人が買った物を誰に渡したとしてもそこまでの管理が出来ない為に罰則はないのだそうです。重大な事件にまで発展すれば騎士が動くらしいですが。


つまりカーラに頼めばコルの実を入手出来てクラーラ殿の依頼を達成出来る…とはいえ貸しを作りたくはありません。



「ヒロ君がお姉さんにお願いしてくれたら、お姉さんが一肌でも幾らでも脱いじゃうよ?」


「見たくありませんよ。……貴女に貸しを作ると面倒になりそうなので、帰ります。」


「ちょっと酷くない!?」


「では私が買わせて貰おうか。お礼はちょっと付き合ってくれれば構わないよ、ヒロト。」


「あ。…貴方また…。」


「おー、ギド。久しいじゃねぇか、最近顔見てなかったぞ。」


「すまんな、少々忙しかった。…その麻袋一杯のコルの実と後は酒を幾つか貰おうか。」


「ギドっ!今日はヒロ君にも会えたしなんて幸運なのかしらっ。」


「カーラ、相変わらず美人だな。若者を誑かすのは頂けないがね。」


「やだ、ヒロ君には本気よ?」



…ギドと呼ばれていますが、国王陛下ですよね…。口にして良いものか迷っていると購入したコルの実は国王陛下の収納魔法に因ってしまわれてしまいました。拒否権はない、そういう事でしょうか…。

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