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第一部:共鳴する業(ごう)と契約 4話 【不浄の地での共犯者】

隔離区域はあまりに広く、抜けるのには時間がかかった。

ジークと共に異形を倒しながら、幾度かの休憩を挟んで先へ進む。当初は早々に引き上げるつもりだったため、持参した食料は早々に底をついた。そんな時、ジークはどこからか食料を調達してきては、クロエに譲ってくれた。


何度目かの休憩中、手渡されたレーションを眺めながら、クロエはふと尋ねた。


「……ねえ。どこで手に入れてるの? こんな隔離区域にあるとはおもえないのだけど」


ジークは短く、「企業秘密だ」とだけ言い、視線を逸らしてはぐらかした。

その反応に、クロエは眉をひそめる。彼の周囲には、常に何かが潜んでいるような、言いようのない気配があったからだ。


「……それって、貴方のそばにいる『人たち』のおかげなわけ?」


クロエが追い打ちをかけるように問うと、ジークはここにきて珍しく表情を硬直させた。次の瞬間、彼は薄く、けれど確かな感心の色を滲ませて口角を上げた。


「ほう、気づいたか。……随分と目がいいらしいな」


ジークが静かに手を挙げると、空気の歪みとともに、二人の人影が「どこからともなく」姿を現した。彼らは黒いフードを深くまで被り、気配を完全に消し去ったまま、ジークの後方に侍る。


「この二人は俺の右腕だ。……お前も、必要なら使っていいぜ?」


ジークが放った、冗談とも本気とも取れる言葉。

あまりに場違いな提案に、クロエは引きつった愛想笑いを返すことしかできなかった。


(この人、何者なの……。ただの『観測者』って言ったけど、隔離区域に私兵を潜り込ませてるなんて)


クロエはフードの二人を値踏みするように見る。彼らの気配は、ギルドのランカーたちとは明らかに違う。洗練された殺意と、ジークに対する絶対的な帰属意識。

この男は、ただクロエという特異点を追いかけていただけではない。もっと大規模で、もっと危険な「何か」をこの地で動かしている。


ジークはクロエの困惑を面白がるように、再び歩き出した。


「さて、腹は膨れたか? 先に進むぞ、この先はもっと骨が折れる」


フードの二人組が、音もなく影のように続いていく。

クロエは冷えたレーションをポケットにねじ込むと、ブーツの踵を鳴らしてジークの背を追った。もはや、この男から離れるという選択肢は消えていた。

たとえ彼がどんな闇を抱えていようとも、この出口のない地獄を抜けるには、彼の隣にいるしかなかったからだ。


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