第三部 最期の純愛 46話 【残響、そして明日へ】
崩落した拠点から這い出し、太陽の下に踏み出した二人の前に、煤まみれのアキラとカグヤがひょっこりと顔を出した。
双子は呆然とするジークとクロエを見上げ、わざとらしく大きく溜息をついてみせる。
「全く、ボスたちが派手にやりすぎるから、俺等の爆弾の出番が台無しですよ。……俺等のこと、忘れないでくださいね?」
「そうそう。こっちは完璧な援護ルートを作って頑張ったんですけどねぇ」
二人の不満げな口調に、ジークがフッと小さく鼻で笑う。続いてクロエも肩を震わせ、静かな笑い声が瓦礫の山にこだました。張り詰めていた空気が、ようやく人間らしい穏やかさに戻っていく。
背後を振り返れば、サリエールの巨大な要塞は、その地下深部の研究所ごと跡形もなく吹き飛んでいた。地殻を揺らした爆発の爪痕は、もう二度と「プロジェクト・イヴ」のような悲劇が生まれることはないという、確かな証明だった。
見上げれば、空はどこまでも青く澄み渡っている。
長きにわたった戦いの終わりを祝福するかのような、抜けるような青空だ。
「……さて」
ジークが、今なお腕の中にいるクロエの髪を優しく撫でた。
「とりあえず、移動しましょうか。ここも長居できる場所じゃない」
「ああ。帰ろう」
ジークの力強い言葉に、クロエは迷いのない瞳で頷く。
アキラとカグヤは、「へいへい、撤収っと」と背を向け、先行して足取り軽く歩き出した。
二人は残された荒野を背に、ゆっくりと歩き出す。
向かう先は、これまでの逃亡の日々とは違う、二人だけで選ぶ「自分たちの住む場所」。
背負っていた過去の呪縛も、血塗られた前世の記憶も、すべてはこの青空の下に置いてきた。
二人の影が、朝日に照らされて長く伸びる。
それは重なり合い、決して離れることのない一つの道となっていた。
これからの物語には、誰の支配も、誰の指示もない。
ただ、二人が手を取り合って歩く、あたたかく、自由な日々だけが待っている。
「ジーク」
「ん?」
「……何でもない。ただ、名前を呼びたかっただけ」
風に溶けるようなクロエの呟きに、ジークは短く答え、彼女の手を強く握りしめた。
二人の背中が、新しい朝の光の中へと溶けていった。




